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最強要塞決定戦!

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最強要塞決定戦!

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    ★    ★    ★
 
「ル・リエーに傷を……。こちらも艦載機で応戦なのだ。さあ、行け。行って、みごとに散ってくるのだ!」
 頭から湯気を上らせて、マネキ・ングが叫んだ。
 生体要塞ル・リエーの外骨格の一部が開き、そこからメビウス・クグサクスクルス(めびうす・くぐさくすくるす)の乗った招き猫型の大型飛空艇ゴールデン・キャッツが発進した。他の発進口からも、次々と要塞に搭載されていたイコンや巨大生物が吐き出されていく。
「なんだこれは、搭載しているイコンとか、全部出せばいいって言うわけじゃないだろう。また、気分だけで命令出してないか?」
 流星のカスタム機である女帝キシオムバーグに乗ったセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が、飛び出したイコン部隊を見回して呆れたように言った。
 ビームシールド発生装置を内蔵した巨大な一対のバインダーを備え、剣状の四枚のスラスターシェルをマントのように展開したキシオムバーグは、まさに剣の女王の名にふさわしく、三対の六腕にそれぞれ得物を持っている。美しくも攻撃的なシルエットではあるが、まだ完成したばかりで調整が完璧ではない。そのため、ゴールデン・キャッツの直掩として後衛に位置していた。
 それゆえに、敵艦に殺到していく僚機の統制のなさが、まともに目に入ってくるのだ。
 先頭を行くのは、マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)の乗るカイザー・ガン・ブツだ。量産型饕餮をカスタマイズした巨大イコンではあるが、その見た目は大仏そのものである。キシオムバーグ同様、完成したばかりなのでまだまともな武装がついていない。ほとんどハリボテ状態だ。
 無謀に突っ込んでいくカイザー・ガン・ブツに続くようにして、スカル・
ドラゴン
カオス・マンティアスの巨大生物の他、イフリートの九尾化身―炎羅狐―、イコンとしては、ノーマルのクェイル、雷火をベースとした無銘が突進していった。無銘などは、キシオムバーグの先行機としてパーツ取りをされ、隻腕の半壊状態という有様だ。
「俺たちは、捨て駒か!?」
『何を言っているんですか。勝利の鍵は、マイキーさんですよ!』
 唖然とするセリス・ファーランドに、メビウス・クグサクスクルスが答えた。
「今日は、ボクのトモダチを連れて来たよ〜。さあ、ボクの愛を受けとめて。ビーーーーム・愛!!」
 切込隊長であるマイキー・ウォーリーが、そう叫びながらカイザー・ガン・ブツの手を突き出した。無尽パンチとして、張り手のようにカイザー・ガン・ブツの手がのびていく。だが、見た目のインパクトほどの威力はなく、彗星が持ち前の高機動力を駆使して難なくそれを避けた。そのまま、すれ違い様に、カイザー・ガン・ブツをブレードで水平切りする。
「オー、なんという愛。でも、まだまだー。本当のビーム愛はこんな物ではないよー」
 マイキー・ウォーリーがなおも前進しようとするが、それに応えたのはカイザー・ガン・ブツの上半身だけであった。切断された下半身は、ヒュルヒュルと雲海の中へと墜落していく。それすら構わずに、マイキー・ウォーリーが、強化されたビームアイの発射スイッチを叩くように押そうとして、隣の自爆スイッチを押した。
「ちょ、おまっ!?」
 突然派手に爆発したカイザー・ガン・ブツを見て、セリス・ファーランドが呆然とする。
「よくやったよね! えいっ!」
 想定内とばかりに、メビウス・クグサクスクルスが、カイザー・ガン・ブツを斬り裂いたばかりの彗星にむかって、超電磁ネットを発射して動きを止めた。そこへ、一気に多弾頭ミサイルを発射して撃墜する。
 完全に、マイキー・ウォーリーは囮だ。とはいえ、敵イコン一機を撃墜するための役にたったのだから、本望だと言えるだろう。
「このまま、要塞本陣を落として……」
 勢いに乗って攻撃を続けようとするメビウス・クグサクスクルスだったが、その前に雷光が迫った。第三世代機の性能を最大限発揮して、スカル・ドラゴン、カオス・マンティス、九尾化身―炎羅狐―ら巨大節物をあっけなく倒してきたのだ。
「ちょっと、聞いてないよー」
 第三世代機の相手なんか冗談じゃないと、さっさとメビウス・クグサクスクルスが逃げに入った。その背後に迫る雷光を、セリス・ファーランドがレーザーマシンガンで狙ってゴールデン・キャッツを援護する。
 単純なAIでゴールデン・キャッツに狙いを定めていた雷光が、女帝キシオムバーグの攻撃を避けられずに被弾する。だが、損傷しても怯むことなく、ゴールデン・キャッツに迫っていった。なおもセリス・ファーランドが攻撃を続行して蜂の巣にするが、ライフルの機晶ブレードを展開してそのままゴールデン・キャッツに突っ込んだ。主機関を貫かれて、ゴールデン・キャッツが雷光と共に炎につつまれる。
「ああ〜。脱出ですよー」
 ゴールデン・キャッツに搭載された、アワビ保存用超強化コンテナに避難したメビウス・クグサクスクルスが、コンテナを切り離して脱出していく。
「こ、こら、こっち、くんな!」
 突っ込んでくるゴールデン・キャッツの残骸をビームシールドでかろうじて弾くと、セリス・ファーランドが女帝キシオムバーグを撤退させた。
 
    ★    ★    ★
 
「双方のイコン部隊、壊滅です」
 レーダーを見ていた天城千歳が報告する。
「構うな。敵は、先の攻撃で損傷しているはず。止めを刺すぞ。シールド解除。一番砲塔重力子弾装填。二番、三番と連動させろ。斉射準備……てーっ!!」
 ここは押すべきだと、大田川龍一が勝負に出た。アンチビームファンをたたんで、全砲門による一斉射を生体要塞ル・リエーに浴びせかける。
 
    ★    ★    ★
 
役立たず共が、盾もできないとは……
 ふがいないイコン部隊の戦果に、マネキ・ングが生体要塞ル・リエーを取り巻く障気バリアの濃度を上げた。
 間髪入れず飛来した加賀の砲弾が、障気に絡みつかれて弾道を逸らされ、生体要塞ル・リエーの背後で爆発した。
「反撃なのだよ。必殺のオリュンポスキャノンを喰らうがいいのだ」
 生体要塞ル・リエーが、その口のような部分をくわーっと開く。
「発射!」
 マネキ・ングが、新造の必殺兵器の発射スイッチを押した。
 生体要塞ル・リエーの口から発射されたエネルギー弾が、周囲の空間を巻き込んで崩壊させながら飛んでいく。なおも飛来する加賀の砲弾をも巻き込んで消滅させながら、それは加賀の艦首に命中した。
「やれやれ、ここまでみたいだな」
 圧壊していく艦首を見つめながら、大田川龍一がつぶやいた。
「だから、人手不足だって言ったのですわ」
 すべてのインジケーターが真っ赤になったコンソールを叩いて、天城千歳が叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「はははは、我は最強なり……あれっ!?」
 消滅していく加賀を見送って勝ち誇ったマネキ・ングであったが、突然ブリッジに警報が鳴り響いて焦った。
 モニタに、何やら不吉なカウントダウンが表示されている。
「オリュンポスキャノンの自壊まで後60秒だとお!?」
 未完成品を使うからである。
「だ、脱出なのだ!」
 あわてて脱出カプセルにむかったが、ドアを開けてマネキ・ングは呆然とした。脱出カプセルが存在しない。本来脱出カプセルがあるエリアは、すべてアワビの養殖場になっていたのだ。
「こ、これしかない!?」
 とっさに、マネキ・ングが養殖中の巨大アワビの上に飛び乗った。リモコンで、出荷用のハッチを開く。
「あーれー」
 廃棄されるように、生体要塞ル・リエーの一画から水が噴き出し、その流れに乗ってマネキ・ングの乗った巨大アワビが雲海の中へと落下していった。その直後、生体要塞ル・リエーがオリュンポスキャノンの爆発で跡形もなく消え去った。
 
    ★    ★    ★
 
「第1試合が終了となりました。結果は両者相討ちです。これは、初戦から波瀾万丈の幕開けとなりました」