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【4周年SP】初夏の一日

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【4周年SP】初夏の一日

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47.夏祭り

 この6月に結婚し、新婚ホヤホヤの二人は、盛夏に先駆けて夏祭りがあると聞き、遊びに行くことにした。
 黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)は、折角の機会だから、と、奮い立って浴衣を着て行く。
 ユリナの浴衣姿を見て、黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)は、
「ユリナは浴衣も似合うな!」
と笑った。
「あ、ありがとうございます」
 その笑顔を見て、少し恥ずかしかったけど、やっぱり着て良かった、とユリナは思う。
「竜斗さんの甚兵衛姿も、かっこいいですっ」
「そうか?
 まあ、折角だしと思ってな。浴衣とどっちにしようか迷ったけどな」
「浴衣姿もかっこいいでしょうね……」

「さてと、それじゃまずはカキ氷! それから金魚すくい! ヨーヨー釣り!
 ユリナ、りんご飴食べるか?」
 そう言って、竜斗はユリナを誘いながら、基本は網羅とばかりに、次々と屋台に立ち寄る。
(竜斗さんったら、子供みたいにはしゃいじゃって、可愛いです)
 ふふっと笑って、ふと、射的の屋台が目にとまり、ユリナは途端に目の色を変えた。
「あっ! 竜斗さん! 射的してもいいですか!?」
「ん? ああ」
 竜斗も屋台を見て、くすりと笑う。射的をしたがるとは、ユリナらしい。
「あの大きな猫さんのぬいぐるみ、欲しいです。
 絶対に取りますよぉ――!」
「ちょっと待て、あれ、コルク銃で倒すのって無理じゃないか?」
 射的に使うおもちゃの空気ライフル銃を見て、インチキではないかと射的屋の店主を見ると、店主の男は笑った。
「兄さん鋭いが、これは景品の宣伝用看板みたいなもんさ。
 実際に狙うのはこっちのマッチ箱だよ」
 色々な景品が、射的の的のように雛壇に並べられているのは看板で、その横に、マッチ箱が幾つも並んでいる。
 マッチ箱には数字が書いてあって、倒せば、同じ数字が振ってある景品的が貰える、という寸法だ。
 軽いが的が小さい分、難易度も高いわけである。
 だが、ユリナは張り切った。
「解りました。7番狙いで行きます」
 ぽん、と軽い音がして、コルクがマッチ箱に飛ぶ。
「あれっ」
 コルクは弧を描き、マッチ箱を外して落ちた。
「あら、おかしいですね」
 もう一発。
 コルクは狙いとは別のマッチ箱を倒す。
「12番! はい、ろくりんくんストラップ!」
「んー、今度こそ」
「10番! はい、ろくりんくんストラップ!」
 1回10発中、既に5つもろくりんくんストラップを当ててしまったユリナは一瞬、サイコキネシスを使ってしまおうか、とちらりと思ってしまうが、ブルブルと首を横に振る。
 そんなインチキをするわけにはいかない。
(何だかんだで楽しそうだなぁ)
 竜斗は、そんなユリナの横顔を微笑ましく眺めている。
(ここは、俺が取ってプレゼントしてあげればかっこいいのかもしれないけど)
 けれど、ユリナの邪魔をするのは野暮、という気もした。
 最後の一発。
 外れたらまた、もう10発分買えばいい、という頭は無い。
 最後のチャンスを真剣に狙う。
 ぽん。
 ぱたり、と7番のマッチ箱が倒れた。
「きゃー! やりました!」
「7番! やったな、姉ちゃん、ほらよ、ぬいぐるみ!」
「ありがとうございますっ」
 猫のぬいぐるみを抱きしめて、ユリナは喜ぶ。
「よかったな、ユリナ」


「あの、竜斗さん、……誘ってくださって、ありがとうございました」
 お祭りの帰り道。
 手を繋いで歩きながら、ユリナがはにかみながら、礼を言った。
「楽しかった、です」
「うん。俺も楽しかったし、ユリナが楽しそうで、嬉しかった」
 竜斗は笑う。
「だから俺も、一緒に行ってくれて、ありがとうな」
 きゅ、とどちらからともなく繋ぐ手に力を込めて、二人は心温かく、帰途につく。