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歴代グランドアイドル決定戦

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リアクション


二幕

「さあ! 次はソロでの参加です。皆さん全力で盛り上げちゃってくださいね!」
 泪が前口上を述べると、観客は声を出しステージにノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が姿を現す。
「えーっと……今から歌う歌は、ワタシにとってお兄ちゃんみたいな人をイメージして作った曲です。……聞いてください」
 短くそれだけ言うと曲が始まる。
 人魚の唄と共に流れてくるのはリズミカルなラブソング。愛する人と恋をしたことを歌い上げる。
次に大切な人との別れを表現する悲しみの歌。悲劇的な別れを連想させる音曲が観客たちの口を一文字に結ばせる。
そうかと思えば、曲は転調を始めて徐々に明るい調子を取り戻し、歌詞はいつしか愛する人との再会を歌い上げる驚きの歌の歌となっていた。
すでに観客はこの物語のように紡がれる曲の虜になっていた。
そして、曲は終盤に入り、ノーンはワールドぱにっくの小人たちを放つとマジカルステージ♪ により、小人たちと共に踊り、幸せの歌で一人の人間の人生が幸せを迎えたことを歌い上げる。
腹の底からやる気がこみ上げてくるような底抜けに明るい曲に合わせて小人たちは盛大に踊り、観客もつられて踊り出す。
その中で一人、ステージに立つノーンを静観する者がいた。
歌に登場する男、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)だ。
自分の事と思えば、気恥ずかしさもあるが、それよりも心の中を形容できない温かなものが入り込んでいくのが分かり、胸が苦しくなって鼻から息を吐き出す。
(後でお礼のメールをしておかないと)
 そう心に決めながら、陽太は拍手喝采で締めくくられたステージに背を向けて、歌に出た女性の元へと帰っていった。


「さて、次は少し趣旨を変えて、美女三人による華麗な航空ショーですよ! まばたき厳禁でご覧ください!」
 ステージの声を聞いて、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)ネフィリム三姉妹を身につけるエクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)ベルネッサ・ローザフレック(べるねっさ・ろーざふれっく)に声をかけた。
「それじゃあ、準備はいいかな? ベルネッサも大丈夫ですか?」
「うん。代役はしっかりと果たすから安心して」
 ベルネッサが笑顔を向けると、凶司は顔を真っ赤にして視線を逸らしてしまう。
 ベルネッサを異性として意識している凶司にとっては、パワードスーツ姿は新鮮なものであり気恥ずかしさで直視することが出来なかった。
「じゃ、じゃあ……恥ずかしながら、よろしくお願いします」
「ベルなら大丈夫だって!センスいいし……それに演技はボクらもフォローするからさ」
 エクスは明るい調子で言ってくる。
 凶司も色々と踏ん切りをつけて、ベルネッサを見やる。
「今回はベルネッサ中心で組んでます。難しいものはいれてないですし、エクスも言ったようにフォローしてくれますから、心配せず……」
「うん。それじゃあ、行ってくる」
「凶司はバックアップをお願い」
 ディミーアに言われて凶司は飛空挺に乗り、ステージのライトアップを始めた。
 それに合わせてディミーアたちはカタパルトで射出され、ライトの当たる場所に姿を見せると、待ってましたと言わんばかりに観客が歓声を上げる。
 それに応えるように三人は優雅に空を舞い、スモークキットを使いスモークアートを展開させる。
 色鮮やかなスモークが空にかかり、ベルネッサが真っ直ぐ飛ぶと、エクスとディミーアがベルネッサを中心として螺旋を描くように飛んでみせる。
 それを確認すると凶司は飛空挺からジェットバルーンを大量に投下する。
 ふわふわと宙を浮くバルーンは三人の近くを遊泳した。
 ディミーアは槍を携えると、バルーンの中心へと侵入し、
「はっ!」
 まるで手足の延長であるかのように槍を振るうと、バルーンは五つほど同時に破裂して、中から紙吹雪が舞い落ちる。
 ディミーアの絶技に地上から拍手が響き渡る。
 続いてベルネッサがエクスに銃を向ける。
「それじゃあ、準備はいいわね?」
「うん! 思いっきりやっちゃって!」
 言われてベルネッサはエクスに向かって銃を発砲した。
 放たれた弾丸はエクスへと伸びていき、
「やあ!」
 エクスは剣で弾丸を弾くと、軌道を変えて残りのバルーンに被弾し再び紙吹雪が舞う。
 手品のような芸当に会場はさらに盛り上がり、割れんばかりの拍手が上空にいる三人を包んだ。
 興奮気味に泪も司会を続ける。
「ネフィリム三姉妹、最高の航空ショーありがとうございました! 皆さん、神業を披露してくれた三人にもう一度盛大な拍手を!」
 泪の呼びかけで、肌に刺さりそうな拍手の音が三人に向けられる。
 三人はそれに応えるように手を振って、上空を飛び回ると凶司も嬉しそうに拍手を送った。


「陽菜都さん。本日はご依頼受けていただき誠にありがとうございます」
 裏で出番を待っている遠山 陽菜都(とおやま・ひなつ)に対して、赤城 リュート(あかぎ・りゅーと)は深々と頭を下げた。
「そ、そんなお礼なんて……。私もこういう機会をもらえて嬉しかったし」
 男が苦手な陽菜都はしどろもどろになりながら手を前に出して振ってみせる。
「僕たちから提供できるのは、楽曲と私設楽団になります。陽菜都さんのマネジメントは、
女性と考えていますので……恐縮ですが……女性の視点から、同性の方向けの提案を頂ければ……ありがたいです」
「え、ええっと私は別に楽しく歌えればそれで……」
 困っている陽菜都に対して赤城 花音(あかぎ・かのん)が助け船を出す。
「ほら、リュート。陽菜都ちゃんを困らせないの。楽団の準備は出来てるの?」
「ステージで準備中です」
「そっか、それじゃあトークで繋ごうかな。陽菜都ちゃん行こうか。大丈夫、いつもみたいに楽しく歌ってくれればそれでいいから」
 そう言いながら花音は陽菜都の手を握って、
「頑張ろう?」
 笑顔を見せた。
 それに対して、陽菜都も笑顔を見せると、二人はステージに上がった。
「こんにちはー! Sun Flowerです! 今日はよろしくねー!」
「わああああああああああああああああああああああああああああ!」
「陽菜都ちゃんは、去年のアイドルコンテストで準グランプリだったのは! みんな、覚えているかな? ボクの事は……覚えてくれていたら嬉しいな☆♪ 忘れた人は思い出してもらうよ」
 花音が冗談交じりに言って拳を見せると、観客から笑いの声が漏れる。
 後ろで準備していた楽団は準備完了の合図を告げると、花音は頷いてから再び観客を見つめた。
「今回のステージのコンセプトは! 一曲入魂! 愉快な事しよう☆♪」
「わああああああああああああああああああ!」
「それじゃ!新曲『向日葵』『Sun Flower』&『楽団アルテミス』で!
リスナーさんへ……お届けするよ☆♪」
 その声と共に歌と演奏が始まる。
 陽菜都と花音の歌声は綺麗に合わさり、楽団の調べがそれに乗りしばらく人の心を奪って離さなかった。

モノクロの海を行く太陽の船に乗ろう 誰も知らない地図の先
羅針盤に魔法を掛けて 不思議な冒険が始まるよ
繋いだ手と手が輪になって 素敵なパーティーをしよう
水平線に朝が来て パステルカラーのグラデーション

幾重に重ねた出逢いと別れ 進化する心
永遠(とわ)に忘れない想い出 君にありがとう

向日葵の笑顔を咲かせよう 巡り来る世界の果てまで
煌めくステージで元気一杯!歌おう
贈るんだ魂の源へ 柔らかな潮風に乗せて運ぶ希望
眠る一粒の種は小さくて 芽生えて未来へ導く愛