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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)はバレンタインデーの日を静かに過ごそうと、桜井 静香(さくらい・しずか)と共に花が咲き誇る温室に行った。
「とっても綺麗だね」
 花の前でうれしそうに微笑む静香を見ながら、静香の方がきれいだと思いつつ、ロザリンドは一緒に歩いた。
「ハーブの香りが良いですね」
 ロザリンドがハーブの一つに触れると、静香が小さく頷いた。
「そうだね。とっても自然。そうだ、後でハーブティでも飲もうね」
「お心遣いありがとうございます」
 静香の言葉にロザリンドは礼を言い、一緒に歩く。
 季節はずれの花や、珍しい花の話をしながら、それでもロザリンドはそれらの花に目を奪われるのではなく、静香に目を奪われていた。
 歩くと静香の腕が少し動き、手を繋ぎたいなと思ったロザリンドだったが、その望みも言えぬまま、二人は温室を出た。

「校長」
 ロザリンドは静香に声をかけ、ハッとした、
 チョコレートを持っていたロザリンドだったが、温室で溶けていないか、心配になったのだ。
 そっと触ってみたが、柔らかくなっている感触はない。
「どうしたの?」
「え、いえ……これを……」
 絵が崩れていないといいなと思いながら、ロザリンドはチョコを渡した。
 長方形のその箱を受け取り、静香は笑顔を見せた。
「ありがとう、開けてもいい?」
「はい」
 もっと気が利いたことを言えたらと思いながら、ロザリンドはただ頷く。
 中に入っていたのは、大きく平らな板チョコだったが、その上にロザリンドはチョコペンで絵を書いていた。
 百合の校章をバックにロザリンドと静香が手を繋ぎ、ロザリンドの手には赤や紫のチューリップの花を描かれていた。
 それはロザリンドの望みを表したものだった。
 チョコを見つめる静香をじっと見つめ、ロザリンドは想いを告白した。
「私は校長のことが好きです。実力も実績も何もない私です。私よりも素晴らしい方達が校長を慕っているのも知っています。ですがそれでも。校長のことを愛しています。傍にいる事が迷惑にならないよう、校長の隣に立つのに相応しい女性になるよう頑張ります。ですから、それまでしばらくの間見ていてください」
 告白と言うよりも騎士の誓いのような言葉で……でも、これすらもロザリンドは言うまでにたくさん逡巡した。
 それでも、仲間である亜璃珠たちや、前のお礼にとチョコを渡しに行った香鈴たちに励まされ、ロザリンドはちゃんと思いを告げようと思ったのだ。
 静香はロザリンドが見事に描いてくれたチョコを、絵が崩れないように大事そうにしまい、そっとロザリンドの手を取った。
「えっ……」
 驚くロザリンドの手を自分の手で包むようにして、静香はお礼を言った。
「チョコレートどうもありがとう。大事に飾るね」