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葦原の神子 第2回/全3回

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葦原の神子 第2回/全3回

リアクション

 騎沙良 詩穂も一人だ。空京大学に通うエリートで、それを鼻にかけない天真爛漫な気質だが、戦闘になると性格が変わる
 詩穂も殺気看破を使用して歩いている。
「おかしいな、みな、殺気看破で道を選んでるのに、どうして一人?」
 詩穂も最初に一緒にいた皆が別の道を選んだことを訝しがっている。
「この道だよね」
 時折何かを察知して、バーストダッシュと蹴りを繰り出すが、まだ幽巫には出会っていない。


 ヴァーナー・ヴォネガットは、弐識 太郎と共にいる。
「葦原明倫館のけんがくにきてたらたいへんなことになってるです!」
 ヴァーナーが祠に入ったのは、もしや房姫が怪我をしているのではと感じたからだ。ヴァーナー破壊復啓のスキルと共に、やはり、殺気看破を使用している。
 太郎も同じだ。
「殺気看破は、近づいてくる気配、特に害意を感じ取ることが出来るはずだ。皆が違う気配を感じているのか、幽巫が複数いるのか、それとも…」
 太郎左衛門の言葉を思い出す。
「味方に敵がいるのか」
 ヴァーナーは、恐怖に打つ勝つためにも、太郎に話かけている。
「八鬼衆って、いろんなじごくのくるしみがずっとつづいているみたいっておしえてもらいました。ずっとくるしいなんてかなしいです。たすけてあげるのはどうしたらいいのかな?くるしいのがつづくより、しんじゃうのがいいって…どんなきもちなのかな」
「さあな」
 太郎は言葉を切る。
「幽巫…おれたちが戦い相手も死を望んでいるのだろうか」


 アシャンテ・グルームエッジと御陰繭螺も、殺気看破を使って道を選んでいる。幽巫と出会ったら、繭螺はアシャンテの援護をする予定だ。
 二人は幾つかの作戦を練っていた。
「しかし、こう皆が分かれてしまうとは」
「同じ道を歩いたほうが良かったのかな」
 繭螺は背後を見る。何かうごめく気配がしたからだ。
 アシャンテは、繭螺の察知を敏感に受け止め、その壁辺りに向けて袋を投げつけ、スィメアにて宙で打ち抜き、中身を飛散させる。
 中に入っているのは、とある虫が好む匂いを放つ薬品だ。
 しかし、殺気は消えている。
「おかしいよ、壁から殺気が出て、だけど消えた」
「とにかく、前に進もう。時間がない、そんな気がするんだ」


 エヴァルト・マルトリッツは、祠に先行して入ろうとして太郎左衛門に止められている。
「房姫の安否が気になるのなら、一刻も早くだろ?」
 機関銃は邪魔になるから置いて、鉄甲で武装したエヴァルトは不思議でならない。
 ロートラウト・エッカートも殺気看破を使用している。
 デーゲンハルト・スペイデルが、光術で照らした道を歩く。
「ああ、しかし、連れ去られた姫君を救出というのは、ロマンがあるな」
「葦原大将、何か知ってるのかも」
「急がなくても殺されないってか?」
 光で照らされた壁、なにやら気配がある。構えるエヴァルト、しかし察知した殺気は消えた。


 天城 一輝は、祠に入るまえに八鬼衆と話し合いたかった。しかし、既に綿毛は死に、大太も海へと沈んでいる。
「今までの言動を見る限り、八鬼衆は極悪人とは思えない。オレは、人を人とも思わぬ日本のマスコミからパラミタに逃げた。ここに縋ったんだ。もし、八鬼衆がナラカに縋ったんだとしたら、分かる。オレも、日本に帰ったらパラミタ道人と呼ばれるかもな.…」
「何を言ってるのです、多くの人が無残な死を遂げているのですよ」
 ローザ・セントレスは、八鬼衆に会わなくて良かったと思っている。
 一輝は八鬼衆に同情的だが、相手はどう思っているのかという事がある。それにこれまでの八鬼衆は問答無用で襲い掛かり話など出来る状態ではなかった。
 紅茶セットを入れる為の愛用のリュックがトレードマークのコレット・パームラズは、少し無念と感じている。
「飢餓にさいなまれていた綿毛にチョコレートをたらふく食べさせたかった」
「一輝、ここは敵地だぞ」
 ローマ第三大隊の百人隊長だった英霊、ユリウス プッロは、多くの血が流れた戦地で鷹揚に敵との遭遇を求める一輝の大胆不敵な行動が読めない。
 一輝は八鬼衆と戦う気がないのだから、祠の内部を恐れていないようだ。スタスタ進んでる。
「全く、馬鹿な子ほど可愛いわ」
 ローザが呟きユリウスが苦笑する。
 この二人のみ、何時襲われても対応できるよう、周囲を見ている。


 風間 光太郎(かざま・こうたろう)は、元々忍者の家系だが、先祖が魔法を忍術として取り入れたため魔法使いの色彩の強い家系となった。ローグだが忍術にも明るい。
 光学迷彩とブラックコートで姿と気配を消している。彼も殺気看破を用いている。
 光太郎はトラッパーで罠を警戒しながら歩いていて、あることに気が付いた。壁は無数の穴が開いているのだ。光太郎が歩く道側から小さな虫や獣が空けたものだ。
 それに壁は人の手で塗り込められている。
 土を掘り道を作ったのではなく、掘った空洞を埋め、道を作ったのだ。
 時折殺気が壁から生じ、消える。
「まさか、この壁の裏側にナラカ道人がいるのでござるか」
 しかし…。
 道は迷路となり、枝分かれし曲がりくねっている。ナラカ道人が先ほどの大太のような巨体であったら、このような壁に塗りこめることは不可能だ。
「何がいるのでござるか」
 救出の後、この壁が障害となるやもしれぬ。光太郎は気配を消したまま、房姫を目指す。


 斎藤 邦彦は別のことを考えていた。
「ナラカ道人を復活させよう」
 というのだ。
「中東のテロリストも狙っていると聞く。今復活を阻止するより、不完全な形で復活させ、その復活のプロセスで叩き潰そうとする計画だ。
 ゆえに、共に祠に入ったものの、最初の枝分かれで、一人別の道を選んだ。
 ヴァルキリーのネル・マイヤーズローグは、斉藤の護衛をかねて共にいる。
「ローグだから斉藤1人のほうが良いかもしれないけど」
 斎藤は隠れ身を使って、姿を消しながら歩く。
「で、救出隊が復活まえに房姫を発見したらどうするの?」
「邪魔する。神をも超える存在、不確定要素以外の何者でもない。復活のタイミングを図れる今討つべきだ。復活の儀式が済み、ナラカ道人が復活するときに房姫を救出する」
 斎藤の考えは正しい。
 これまでの八鬼衆のような、半ば奇形のものであれば、産まれ出る瞬間も奇異であるに違いない。
 しかし、ナラカ道人は、斉藤の想像を超えている。
 房姫救出には、別働隊もいる。

 その頃、不畏卑忌 蛟丞(やしき・こうすけ)は、既に房姫の場所まで到達していた。パートナーのエメス・サンダーボルト(えめす・さんだーぼると)アネッサリーゼ・不畏卑忌・バニングス(あねっさりーぜ・やしきばにんぐす)は、ハイナ軍に留め置いている。
 蛟丞は房姫が消えてすぐ赴き、祠からではなく微かな空気の流れを読んで、下を通る道を探した。蛟丞の目的は房姫のみであるから、幽巫に見つからぬよう潜入した。房姫の居場所がわかったのは、外で待つ橘柚子の存在が大きい。
「式神のおおよその場所はわかります」
 共にと望む柚子を蛟丞は留めた。
「オレが倒れたら、姫さんを救出してくれ。もし入れ替わった後だったら姫さんはこの姿だからな」