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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

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聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)
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リアクション


(・チャーリー)


【チャーリー小隊】
【チャーリー1】【E搭乗】大羽 薫(おおば・かおる)リディア・カンター(りでぃあ・かんたー)/TACネーム【ブレイク】
【チャーリー2】【C搭乗】葉月 エリィ(はづき・えりぃ)エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)/TACネーム【クリムゾン】
【チャーリー3】【E搭乗】祠堂 朱音(しどう・あかね)シルフィーナ・ルクサーヌ(しぃるふぃーな・るくさーぬ)/TACネーム【フォーチュン】
【チャーリー4】【E搭乗】水鏡 和葉(みかがみ・かずは)ルアーク・ライアー(るあーく・らいあー)/TACネーム【ミッシング】

* * *


 アルファ小隊、ブラボー小隊がマリーエンケーファーに向かっている中、チャーリー小隊とデルタ小隊は、海京を取り囲む敵のイコン部隊へと戦いを挑む。
 チャーリー2、【クリムゾン】が大型ビームキャノンを放った。
 最初はあくまで牽制だ。
(このまま真下へ移動して……)
 エリィがトリガーを握り、エレナが機体の移動を行う。コームラントの最高速度を維持したままだ。
 エネルギーは七割程度まで落とし、ここぞというときに備える。
『チャーリー4、援護するよ!』
 チャーリー4、【ミッシング】はスナイパーライフルを構えていた。距離を保ち、シャープシューターで狙いを定める。
(狙うのは装甲の隙間、もしくは)
 銃口。
 照準を合わせ、精密射撃を行う。
 銃弾は敵機に吸い込まれるようにして、食い込んでいく。これも訓練の賜物だ。敵の動きの先を読むように、【ミッシング】の機体は位置を変える。
「さっすが、緋翠。嫌味だけが能じゃなかったねー」
 ルアークが呟いた。念入りに整備されていたおかげで、操縦がしやすくなっていたようだ。
「剣を使ってるのはまだいないみたい。だけど、絶対に来てるはず」
 エヴァン・ロッテンマイヤーの機体を探すが、まだ発見は出来ない。しかし、そればかりに気を取られているわけにもいかない。
 エースでなくとも、シュバルツ・フリーゲを駆る小隊長クラスは手強い。力をつけた今でさえ、一対一では厳しい相手だ。
「隙は、必ずあるはず……!」
 後衛が援護を行う中、二機のイーグリットが前衛として敵機へと飛び込んでいく。
 チャーリー1、【ブレイク】とチャーリー3、【フォーチュン】だ。連なって飛ぶのではなく、二機は高低差をつけ、敵小隊を挟み込む形となる。
 シュメッターリングの機関銃から銃弾が放たれた。
「遅いぜ!」
 【ブレイク】が加速し、銃弾をかわしていく。間合いを詰めると、今度は実体剣を抜いてきた。
 エヴァンか、と思われたが違う。機体の動きが単調だ。
 ビームサーベルで一気に斬りかかる。そして離脱し、ビームライフルで別の機体へと牽制射撃を行う。
(確実にボクは、ボク達は強くなってる)
 戦いの中で、朱音はそれを実感していた。
 連携も良くなっている。これなら……

 ――さて、一ヶ月振りだな。少しは楽しませてくれよ?
 
 ぞく、とチャーリー小隊のパイロット達は殺気を感じた。声が聞こえたわけではない。
『来るよ!』
 剣を携え、海面すれすれから上昇してきた機体がある。
 【クリムゾン】がちょうどその真上、斜めの射線上にその姿を捉えた。
 チャージが完了したビームキャノンを、フル出力で放つ。
「避けない……?」
 敵の機体は、そのままビームに向かって突っ込んできた。抜刀術のような動きで、高出力のビームを斬り裂く。
(行くよ、エレナ)
 【クリムゾン】の中で、エリィとエレナが黒檀の砂時計を起動する。
 ビームキャノンから実体剣へと装備を切り換え、敵機に立ち向かおうとする。
 否、そうではない。剣を抜いた直後に、肩部のミサイルポッドを全弾発射する。
「これで、どう!」
 発射したミサイルの頭部バルカンを撃ち込み、誘爆させ、煙幕代わりにした。
「おおおおお!!」
 その隙に、【ブレイク】が一気にシュメッターリングに迫る。
『なんだ、その程度か?』
 ビームサーベルの斬撃はかわされ、逆に相手の攻撃が機体をかすめる。
「そこだよ!」
 【フォーチュン】がビームライフルを放つ。
 剣を振り下ろした直後、背中はがら空きになっていたからだ。
『単純過ぎるな』
 機体を前に倒し、その攻撃を敵は避けた。
 煙幕が晴れる前に、今度は【クリムゾン】がワイヤーを射出した。敵の武器を持つ腕を封じるためだ。
 だが、それさえも一太刀で防がれる。ワイヤーは切断され、逆に敵は空いているもう一方の腕でそれを掴み、コームラントを引っ張ろうとした。
「ルアーク!」
 【ミッシング】が武器をスナイパーライフルから通常武装のビームライフルに変更した。二挺拳銃で敵に銃撃を行う。
「いくらエースだからって、どこかに弱点はあるはず……絶対に当てて見せるよっ!」
 別々のタイミングで左右のライフルのトリガーを引く。
『分かりやすい攻撃だ』
 左からの銃撃は囮のつもりだった。敵はそれを避けると思ったが、回避すると見せかけて右からの銃撃を誘ってきたのだ。
 フェイントにかかり、【ミッシング】は引鉄を引いてしまった。
 剣の刀身部分でビームを弾き、時間差で撃ったビームを相殺してきた。
「そんな馬鹿な……!」
 真似しようと思って出来る芸当ではない。
 敵の空間把握能力の高さが窺い知れる。四方からの攻撃全てをあしらわれたのだ。
 すぐにその機体への反撃を試みようとするが、敵は一機だけではない。

* * *


「少しは強くなったみてーだが、この程度か」
 エヴァンは思う。
 確かに、一ヶ月前に比べれば、相手の実力は上がっている。だが、攻撃パターンはこちらの予測の範疇を出ていない。
「不満そうだねー、ロッちゃん」
「……見せてみろよ、お前達の覚悟ってヤツをよ」
 ただ天御柱学院のイコン部隊を見据え、エヴァンは呟いた。