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リアクション
第4章 支配者の憂鬱【3】
折れた柱の影からユイ・マルグリット(ゆい・まるぐりっと)は見ていた。
ガルーダの動向を気にして状況を窺っているうちに事態は収束、彼と結ばれた協力関係をとりあえず喜んだ。
「もっと恐ろしい人かと思ってましたけど、別に現世の人を毛嫌いしてるわけじゃないんですね……」
「そう思わせてるだけかもしれないぞ。ガルーダも奈落人、油断はできない」
「び、びっくりした……。驚かさないでください」
突然、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)に声をかけられて、心臓が飛び出すかと思った。
ユイと同様、彼も様子見に徹しているらしく、デジタルビデオカメラを片手に一部始終を撮影している。
「それ、撮影してどうするんですか?」
「まだ決めていない。けれど、カードはなるべく多く持っていたほうがいいだろう?」
「ははぁ、なるほどぉ……」
『世の中、情報を持ってる人間が勝つものよ』
「え?」
どこからか聞こえた声にユイは戸惑う。
「ああ、ここだ」
そう言って、真司は装備した魔鎧のリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)を指した。
液体金属で造られた無形の魔鎧で、衣服の下に纏っているため、見た目からは分かりづらいのである。
『ところで、そっちは何か気になることはあった?』
「うーん……、とても興味深いお話でしたけど、時々ガルーダの様子が気になりました」
『様子?』
「あ、ちょっとカメラ貸してもらっていいですか?」
「別に構わないが、何を撮る気だ?」
「ガルーダがちょこちょこ壁の肖像画を見てたので、ズームして絵を確認したいんです」
「肖像画……?」
たしかに壁には幾つか絵が飾ってある。
言われたようにその内のひとつに寄ってみると、それは守護天使の男性の肖像画のように見えた。
ように、と言ったのはかすれているためである。顔の判別は出来ないが、燃えるように赤い翼を持った人物だ。
赤い翼。
この単語からイメージする人物はひとりしかいない。
「この肖像画、ガルーダの本体を描いたものかもしれないな……」
ここが彼の領地だったことも考えれば、可能性は高い、と言うか間違いないだろう。
「……なんでこれを見てたんだ?」
「あ、違います」
「?」
「その絵じゃなくて、ガルーダは隣りの絵を見てました」
カメラは動かすと今度は守護天使の女性の肖像画が映った。
黄金の巻き毛を持った美しい女性だった。歳の頃は20代前半、純白の奇麗な翼を持っている。
「……あれ?」
「……ああ、おまえも思ったか?」
ユイと真司は顔を見合わせた。
なぜなら、女性の面影がどことなくルミーナ・レバレッジに似ていたからである。
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