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リアクション
 第七章 「激突」
 メインストリートの余剰兵力を止めるための戦い。
 アルブムは迷っているせいか、明らかに精彩を欠いていた。
 今、彼女が戦っているのは夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)。
「そこをどけええええええええええええ!」
 二刀の構えから繰り出される二つの刃は徐々にアルブムを追い詰める。
 わざと誘い、
 受け流し、
 切り込み、
 突き崩す。
 全ての流れに淀みがなく、その太刀さばきは嵐のような激しささえ感じさせた。
「くぅ……!」
 迷いで目の曇ったアルブムに今の甚五郎から機先を制することは出来なかった。
 鋼糸で操っているストゥルトゥスがなんとか前に出て防戦をしているが、甚五郎の勢いは増すばかりで、じり貧と言う言葉がまさにアルブムの戦況を現してた。
 と、
「あまり、調子に乗らないことだネ」
「……ぬぅ!?」
 突然、横から飛び込んできた白い刃に甚五郎は思わず攻めるのを止めて数歩後ろに飛んだ。
 ストゥルトゥストと並んで立ったのはルビー・フェルニアス(るびー・ふぇるにあす)と第六式・シュネーシュツルム(まーくぜくす・しゅねーしゅつるむ)だった。
 ルビーはアルブムを見て、にっこりと微笑んだ。
「ラルウァ家の方ですね? 故あって、助太刀させていただきます」
「カカカッカカッカ! 伝説の先輩として助けてやるネ」
 数的に不利となった甚五郎が刀の柄を握り直すと、後ろに控えていたホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)とブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が前に出た。
「これで、人数は互角です」
 ブリジットが言うと、シュネーシュツルムはカカカ、と乾いた笑い声を上げた。
「人数が互角? 戦力差は開いたままネ」
「そう思うなら、試してみます?」
「無論……そのつもりネ!」
 ホリイの挑発に乗る形でシュネーシュツルムは二人と切り結び、ルビーも後に続いた。
「お嬢さんのお相手は我が務めましょう」
 ルビーは微笑みながら、ホリイに向かって魔闘撃を放った。
 繰り出される攻撃の一つ一つに一撃必殺の重みが加わり、ホリイはフォーティテュードでルビーの攻撃を受け止める。
「そんな守りがいつまで続くかしら?」
「あなたの攻撃なんていつまででも防げます」
「そう……なら、試してみようかしら!」
 ルビーは再び攻撃を加え、ホリイはそれを受け止める。
「なら、オレはこっちを貰うネ!」
 シュネーシュツルムはカラカラと笑い声を上げながら、ブリジットにダンシングエッジを振るった。
「敵確認、排除します」
 ブリジットはマスケット・オブ・テンペストを構えるとシュネーシュツルムに向かって発砲した。
「ぐあぁ!?」
 鉛玉が額に被弾すると、シュネーシュツルムは声を上げて地面に倒れて動かなくなってしまう。
「敵の行動停止を確認。これより、ホリイの援護に向かいます」
 ブリジットがホリイたちの戦いに目を向けると、
「このオレに物理攻撃は効かないネ!」
 シュネーシュツルムはガバッと起き上がると、ブリジットに向かって再びダンシングエッジを振るった。
「っ!」
 ブリジットは咄嗟にマスケット・オブ・テンペストで刃を受け止めた。
「カカカ! 残念だったネ! このオレは、地獄の底から蘇る!」
「攻撃方法変更、敵対者の身体を再生不可能なレベルまで破壊します」
「やれるものならやってみるネ!」
 叫びながらシュネーシュツルムはブリジットと切り結ぶ。
 増援同士が戦う中、草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が二人の間を抜けるようにしてアルブムの前に立った。
「また会ったのうラルウァ家の娘……本調子でないのは不本意じゃが、リベンジさせてもらうぞ」
 羽純は天の炎をアルブムに放った。
 ストゥルトゥスの頭上が怪しく光ると、空から火の柱が落ちた。
 焼けるような熱さを肌で感じながら、アルブムの目の前が炎に包まれ鮮やかな火の光りが彼女の視力を一瞬奪った。
「今じゃ甚五郎!」
 羽純が叫ぶと、甚五郎は炎の柱を突っ切ってアルブムの目の前に飛び込んだ。
「前回の方が強かったぞ、死体使い」
 アルブムの胸に突き刺さる言葉。
 二刀の霊断・黒ノ水が振るわれる。
 死を前にして、脳の処理速度が飛躍的に上がり――いわゆる走馬灯が脳裏をかすめた。
 それは、戦闘前の出来事。