リアクション
◇ ◇ ◇ 最奥の広間にいたのは、竜だった。 「ドラゴン!?」 近くに、フェニックスアヴァターラ・ブレイドが横たわっていて、某ははっとして駆け寄る。 カメラは壊れているが、ギフトは無事だ。ほっとする。 「三日くらい前かの、どうやって入り込んだのか、此処に居座られてしまっての。仲間が一人喰われてしまったわい。 なあに、でかいが所詮はレッサー種じゃ。おまえさんらが束になってかかれば、楽勝じゃよ」 ファイトー、と、ギャラリーのドワーフが声援を送る。 「……やれやれ。全く……」 某は立ち上がり、ギフトを剣化させた。刀真達も前に出る。 竜は始めから、低く唸り声を上げて威嚇し、口の端から焔のブレスを沸々と漏らして、凶暴さをあらわにしていた。 吐き出されるブレスをかいくぐって、某が一気に接近して仕掛ける。 しかし斬撃は弾かれた。 「くっ、硬いか!」 尾が払ってくるのに気づき、素早く移動する。 月夜が援護射撃した。 眉間は撃ち抜けなかったが、喉元を狙った一発が、皮膚の下に飲まれて行く。 「刀真! 喉!」 月夜の声に、刀真は頷く。 「よしっ、喉だな!」 某や康之達もまた、喉を狙って行く。 「ブレス来るぞ!」 ズシン、と前足を踏み出して某達を下がらせながら、竜がぐわっと口を開けた。 ゴウッとブレスが一面を覆う。 恭也がわざと竜の顔の前を掠めながら、その上空へ回りこんだ。 恭也の銃撃と共に、布袋佳奈子達も、魔法を撃って、竜の気を引く。 そこへ、某が潜在解放を使い、康之はゴッドスピードで、竜の喉に突っ込んだ。 その攻撃に、竜の首がのけぞる。 ぐらりと傾ぎ、そして、そのまま倒れた。 喉元からはゴボゴボと血が溢れていたが、倒れたまま、竜の口から焔が溢れる。 自分も焔の海に飲まれるのを承知で、最後のブレスを放つ気か。 「――往生際が悪いな」 刀真が、渾身の力を込めた白の剣の三撃で、とどめを刺す。 口の中に焔を含んだまま、竜の頭が切断され、ブレスは放たれないまま、竜の命の灯火の如く薄れて消えた。 「びっくりしたぁ……」 佳奈子がほっと息を吐く。 ドワーフ達は、収穫じゃ、と喜びながら、先を争って竜の牙を抜いたり鱗を剥がしたりしている。 「さすがじゃの。やれやれ、助かったわい」 これで修復作業に専念することができる、と、アンドヴァリは礼を言った。 そして、竜の居た場所の向こう側に、それはあった。 「これが、巨人族の秘宝か?」 「いかにも」 都築の問いに、アンドヴァリが頷く。 「……音叉に見えるんだが……」 「そうじゃな。音叉じゃよ」 壁際の中央に、音叉が立っている。 高さは、二十メートル以上はあるだろうか。 全員が、呆気にとられて、その聳え立つ巨大な音叉を見上げた。 「え? これどうやって持って帰るの? ていうか、何にどうやって使うの?」 仁科姫月がぽかんと訊ねる。 「ふっふ、音叉が二股に分かれるところに、六芒星が刻まれているじゃろう」 面白そうに見ていたアンドヴァリが、ようやく助言を出した。 「そこに何かをぶつけてみるがいいよ。魔法でも、剣でも、拳骨でも何でもいいぞ」 聖槍を握り締めながら、紅悠が進み出る。 音叉を見上げて息をつき、大きく横振りした槍を、言われた場所に叩き付けた。 音叉が震え、音を出す。 耳からではなく、その場にいた全員の脳裏に、その音が伝わった。 いや、音ではなく。 「……歌……?」 「そう、歌じゃよ。それが巨人族の秘宝じゃ」 アンドヴァリは笑う。 頭の中に届いた音は、彼等の中で、歌になった。 どんな歌なのか言葉なのか、それを説明することはできない。けれど、それは確かに歌だった。 「これは、どう使うものなんだ?」 「そこで『とっておきの情報』じゃ。此処へ行くといい」 アンドヴァリは、都築に地図を渡す。 「巨人族の地下遺跡じゃよ。『門の遺跡』とも呼ぶの」 「門の遺跡?」 「ふふふ、これ以上は教えんぞ。 自分達で道を見つけるがいい。なあに、それ程難しくはないよ」 にやにやと楽しそうに、アンドヴァリは笑ったのだった。 |
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