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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

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【借金返済への道】帰ってきたヒーロー!

リアクション



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「やっと繋がった! もうショーが始まっちまうぞ!」
 楽屋では緋桜 ケイ(ひおう・けい)が携帯を耳に当て焦っていた。
「はぁ!? 2人してそんな風邪にかかちゃったのかよ……大丈夫なのか!? ショーはどうするんだよ!」
 電話の相手からの返答で更に焦り出した。
「俺が代わりに!? ま、マジかよ……」
 結局、出る旨を伝えてから電話を切ったのだった。

■借金魔女ホイップ第999話〜逆襲! 怪人ユキグニベアー〜■

「これは借金を背負った少女達を狙う悪の組織『トリタテー』と仁義の魔法少女の物語。仁義の魔法少女ホイップは今日も愛用の木刀を手に仁義無き取り立てから少女達を守る!」
 幕が上がる前に黒子和子が音声のみで舞台のあらすじを読み上げた。
 舞台が始まり、最初に登場したのは薄汚れた白熊のキグルミを着たケイだ。
「ベアーッ! 辛い修行のおかげで俺様は新しく生まれ変わる事ができた……その名も怪人ユキグニベアー! クマックマックマー!」
「さあ、怪人ユキグニベアーよ! その生まれ変わった力で悪意のある取り立てをしてくるのだ!」
 ケイの後ろから指示を出したのは悪の組織『トリタテー』の女幹部悠久ノ カナタ(とわの・かなた)だ。
 その指示に従い、客席へと降りて行くケイ。
 足が止まったのは自身の恋人ヴァーナーの前だった。
「お前の借金を取り立ててやるぜぇ!」
「きゃ〜、取り立てられちゃいます〜!」
 突然の事だったのに、ノリノリで役に入り込んでくれた。
 ケイに連れられ、ヴァーナーも舞台の上へ。
「クマックマックマー!!」
 今にもヴァーナーを襲おうとするケイ。
「助けて〜」
 少し楽しげに演技するヴァーナー。
「極悪非道な取り立ては許さないんだからっ!」
 ケイとカナタが声のした方へと振り返ると愛用の木刀を手にしたホイップが居た。
「現れたな、借金魔女! 今日こそ目に物見せてやるのだ! いけ、ユキグニベアー!」
「ベアーッ!」
 カナタに言われ、ケイはホイップへと向かっていく。
「ベアクローっ!」
 間合いを一気に詰め、ケイは必殺技を早速披露した。
「うっ……そんな前より全然強くなってる……!」
 そのままホイップは暫く、避けることも出来ずに攻撃を食らいまくってしまう。
「ホイップちゃん、頑張ってくださいー!」
 ヴァーナーが思わず声援を送ると、客席からも次々と応援の声が飛んできた。
「頑張れー!」
「悪徳業者の取り立てなんかに負けちゃ駄目ー!」
 その他諸々の声を聞き、膝をついて受け身でいたホイップが立ちあがった。
「そう……私はあくどい取り立てから皆を守る仁義の魔法少女……負けるわけにはいかないんだからっ!」
 そう叫ぶとホイップの木刀がさく裂。
 ケイの顎へと直撃し、ノックダウンさせた。
「くっ……覚えておれ!」
 捨て台詞を残し、ケイを引きずりながらカナタは退場していった。
「大丈夫? 怪我はない?」
「はいっ! 有難うございました!」
 心配して駆け寄ってくれたホイップへとお礼を言うと、ヴァーナーは抱擁しほっぺへとキスをしたのだった。
「こうして、悪の組織『トリタテー』の酷い取り立てからまた1人救出する事が出来たのでした」
 和子の音声が締めくくると幕は下ろされた。


■桐生特戦隊■

「時は戦乱、世はカオス。巨大怪獣の台頭により、人類は絶滅の危機に瀕していた! 20XX年、このパラミタでは2体の怪獣により支配されていた。東はホイップ決定戦をサンダーホイップの舞で制した猛者、心優しきキングホイップ。西は大量の桐生を倒し、のし上がった双頭の怪獣デストロイヤー桐生。2つの国は今まで交わることはなかったのだが……ここに今デストロイヤー桐生の侵略を受け自国を守るためキングホイップが立ちあがったのだった!」
 なんとも長い説明をミネルバがナレーターとして読み上げると幕がするすると上がった。
 ちなみに、始まる前に観客に配られたパンフレットに同じ内容が書かれている。
 パンフレットを配布したのはこの舞台の脚本を書き、もうやる事がないオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)だ。
 舞台が始まるとちゃっかり客席に座りニヤニヤと楽しんでいる。
 さて、話しは舞台の方へと戻りまして、背景は東の国の砦となっている。
「道を開けないと踏みつぶしちゃうのですよ〜!」
 デストロイヤー桐生の片方、桐生 ひな(きりゅう・ひな)が楽しげに言葉を発した。
「ボクの邪魔をするなー!」
 もう一方の桐生 円(きりゅう・まどか)も『もけーっ!』と叫び威嚇をしている。
 砦のあちこちを踏みつぶして回っているデストロイヤー桐生。
「のーんっ!」
 そこへ、怒りをあらわに現れたのはキングホイップだ。
 デストロイヤー桐生はキングホイップを見ると襲いかかってきた。
「私の指示通り動いてくださいねー?」
 ひながそう言うと今にも襲いかかろうとしていた足が止まった。
「何言ってるの? ボクの判断通りに動けばいいんだよ!」
 円が言い返す。
「もけーっ! 私ですーっ!」
「もけーっ! ボクの判断が正しいー!」
 双頭の怪獣は言い争いを始めてしまった。
「のーんっ!! ローリングサンダーアターック!」
 それを見ていたホイップは体を丸くして必殺技を繰り出した。
 仲間割れをしていたデストロイヤー桐生はその攻撃を避けられず、ボーリングのピンのように跳ね飛ばされてしまった。
「のーんっ!」
 ホイップの勝利の雄叫びが響いた。
 暫くしてむくりと起きあがったデストロイヤー桐生にホイップが近寄った。
「どうしてこの国を侵略してきたの?」
「実は……」
「ボク達の国はこの異常気象で日照り続き、雨が降っても大洪水、地震も頻発し色々と問題があったが出てきた。とりわけ食糧問題は深刻で、一刻を争ったんだ……」
 ひなの言葉をついで、円が自国の説明をした。
 しょんぼりと肩を落とすデストロイヤー桐生。
 その背中を優しくぽんぽんと叩いたのはほかでもないキングホイップだ。
「国同士の同盟を組まない? 貿易をして、お互いの国を守ろう!」
 ホイップの提案は直ぐに受け入れられた。
 実はキングホイップのおさめる東の国でも技術力の不足が深刻化していたのだ。
「こうして、互いの国は手を取り合いしばしの平和を手に入れたのでしたーっ!」
 ミネルバが締めるとお客さんからの拍手のなか、無事に舞台は終了したのだった。

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「最高の舞台だったわねぇ〜」
「妾達は最強タッグにゃっ!」
 オリヴィアの言葉にナリュキも同意した。
「でも〜、あんなに難しい最後だったかしら〜?」
「ん〜……忘れたのじゃ! でも楽しく仲間割れが見れたから良いのにゃ」
「内部分裂は最高よねぇ〜」
 そんな感想を言い合うと2人は楽屋へと戻っていったのだった。