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嫉妬にご用心!?

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嫉妬にご用心!?

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被害拡大を防げ!

 一向に被害の減らない美少女誘拐事件。

 ひとり、またひとりと、犠牲者は増えていく現状を見て、筑摩 彩(ちくま・いろどり)は対策を考えていた。

「ひどい事件ね。これ以上被害者を出さないようにするには、女の子たちを集団下校させるしかないね。集団下校すれば一人になるタイミングは減らせるだろうし・・・・・・あたし、校長先生に頼んでみようかしら」

 集団下校という言葉に反応した御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)は、くゆっていた紫煙を消すと、筑摩 彩に向き直った。

「私もそれを考えていたのよ! 早速だけど、校長にかけあいましょう。校長室はどこ?」

「え? ・・・・・・あ、はい」

 軍人らしく即断即決の千代に、彩は少しうろたえつつも、彼女を校長室へと案内した。

 蒼空学園の校長、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に向かうや、千代は話し始めた。

「私、シャンバラ教導団から派遣された御茶ノ水 千代と申します。校長、今回の女子生徒連続失踪事件をご存知ですよね? 私は、これは誘拐の可能性があると考えます。
 そこで、これ以上貴校の生徒たちに被害が及ぶのを防ぐため、私は集団下校を提案します!」

 御神楽 環菜は、黙って千代の話を聞いている。

「全生徒数2500人のうち、非戦闘要員の女生徒数は推定800人。この女生徒をエリア毎に分け集団下校させます。各グループには男性戦闘要員生徒を付け、責任をもって女生徒を自宅前まで最後まで送り届けさせるのです。窮屈な状況やもしれませんが、現状の張り紙の注意書きだけでは対策不足かと思われます。過去の連続行方不明事件の対策を鑑みるに、状況悪化を防ぐ最良の策と思われ・・・・・・」

 御神楽 環菜は、淡々と表情を変えずに、いつまでも機械的な話を続けている千代を遮ると、彼女の申請を許可した。

「わかったわ。あなたの提案どおりにやってちょうだい」


「千代さん・・・すごい!」

 驚く筑摩 彩をよそ目に、千代は校長室を出ると、早速準備に取りかかった。

 蒼空学園の女子生徒たちを校庭に集め、整列させているさまは、まさに軍人にうってつけの役どころだった。

 筑摩 彩も負けてはいられない。

「あたしも何かお手伝いしなきゃ。そうだ、あたしは隠れ身で集団下校グループを見守るわね・・・・・・全部は無理だから、相手は、白い着物の女の人が目撃された場所に縁のある子かな? あとは、着物の女の人が事件に関わってるとしたら、その人に目をつけられた子なんか危ないと思う。つまりは、女の人が目撃された付近に教室や部室がある子ね」

「いいところを突いているわね。じゃあそっちは君にお願いするわ」

「ええ、千代さん。任せてください! あとは、すっごいあいまいだけど・・・・・・可愛い子かな? 天然系とか元気系とか、消えた子たちに近いタイプの子を優先して守りますね」

「よろしくね。犯人は、近いうちに勇敢な生徒たちが捕まえてくれるはずだから、私たちは、今いる生徒たちを守りましょ!」

※ ※ ※


「わあ! 可愛い女の子がいっぱい集まってる! ウハウハ〜」

 アリス・レティーシア(ありす・れてぃーしあ)は、集団下校のため校庭に集まった女子生徒たちをみて、喜んでいた。

「さすが、おねーちゃんだなぁ。本当に一箇所に可愛い子を集めちゃうなんてすごい! 蒼空学園には可愛い女の子っていっぱいいるから、集めるなんてムリだろうなーって思ってたのに」

 こう勘違いするパートナーのリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)に、アリスはあえて否定しなかった。

「へへへ、すごいでしょ・・・・・・『ていうか、あたし何もしてないんだけど・・・・・・』
 さあリース、可愛い女の子たちに呼びかけて、囮調査に協力してもらうわよ。マリエルさんや愛美さんにも声をかけてもらうように頼んでおいたからね」

 アリスはそう言うや、片っ端から美少女に声をかけ始めた。

「あ、すみません! あたしアリス・レティーシアっていうの。あなたの三本編みおさげ、とてもステキだったので声をかけちゃいました」

 声をかけられたのは、シャンバラ教導団のコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)

 彼女はちょっと驚きながらも、ようやく声をかけてくれた人物に親近感を覚えていた。

「ありがとう、私、パートナーの剛太郎とはぐれてしまって、探しているところなんです。そうしたら、この校庭にやってきてしまって・・・・・・でも、まさか女の子にナンパされるとは思わなかったわ」


 そうやって女の子たちとのやりとりをウハウハ楽しんでいるリース・アルフィンだったが、肝心の犯人は一向に現れる様子もない。

「おねーちゃん、やっぱりみんながいるところでは、犯人は出てこないんじゃない?」

「確かに、そういわれてみれば、リースの言うとおりかもね。よし、こうなったら犯人のアジトに潜入よ。そこにも可愛い女の子たちが囚われているはずだしね」

 こういうと、アリスはリースの手を引いて、駆け出していった。

※ ※ ※


 被害拡大を防止するためには、学園内外のパトロールも欠かせない。

 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、誘拐の危険性があるところを重点的に見回っていた。

「聞いた限りだと、女の子は独りの時しか襲われないみたいだし、みんなもそれなりに警戒しているだろうから、見回るだけでも効果はあるんじゃないかと思うのよ。というわけでソル、手分けして人目のなさそうなところの見回りをお願いね」

 ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)が返事をしようとした矢先、噂を聞きつけたもうひとりのパートナーアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)が大騒ぎをし始めた。

「おいおい、美少女がいなくなってるってどういうことだよ! このままじゃカワイイネーチャンとの出会いも減っちまうじゃねぇか・・・・・・いやまてよ、攫われそうになってるところに颯爽と俺が登場! 華麗に助けて、そのままいい雰囲気に・・・・・・というのも悪くないな。
 よし、そうと決まればこんなところにいてもしょうがねぇ。まだ見ぬネーチャン、待っててくれよ〜」

 鉄砲玉のように飛び出していったアストライトの意図を、ソルファインは理解できない。

「リカさん、今の兄弟、すごい勢いでしたけど、どうしたんでしょう? 」

「あいつのことなら気にしなくていいわよ、ソル。まともに話を聞かないで飛び出していったけど、多分やろうとしてることは私たちと同じだと思うわ」

「なるほど、そういうことなら、僕も見回りに協力いたします。早く皆さんが安心して帰れる日が来ますように。リカさんも、さらわれないように気をつけてくださいね」

「あはは、私はさすがに少女って歳じゃないから大丈夫よ」


 リカインたち同様、朱宮 満夜(あけみや・まよ)ミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)のコンビも、箒に乗って学園をパトロールしていた。

「ミハエル、いつその白い着物の女性が現れるかわからないから、私たちも学園内を監視しないとね。街中に出現するのは不自然ですしね・・・・・・あと、考えたんだけど、やっぱり白い着物の女性って、雪女だと思うのよ? 季節柄ってのもあるでしょ」

「そうかもな。但し蒼空学園以外の女子生徒が狙われるかもしれないから、学園の外も見回ったほうがいいと思う・・・・・・『ともあれ、我輩は満夜の護衛に専念するよ』」

 彼らの努力によって、被害の拡大防止に成果があったことは、言うまでもない。