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【十二の星の華】変心のエメネア

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【十二の星の華】変心のエメネア

リアクション

「洗脳だと? ふざけるな! 他人を操って、自分の為に血を流させるなんて許せるわけがない!」
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)はすっかり変わってしまったエメネアの様子に憤りを覚えた。エメネアへと近付いていくと、もちろん彼女はレンに向かって鞭を振るう。
 それを黙って受けながら、レンは更に近付いて、彼女を抱いた。
「目を覚ませ、エメネア……」
 抱きしめたまま、押さえつけようとするけれど、寸でのところでエメネアに突き飛ばされてしまう。
「……おかしくなってる人というのは大概、頭を打ったか、それに類するものだと、以前何かの書物で読みました……」
 エメネアと逢うのは初めてだというレイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)にとって、話に聞いていた彼女と違えども驚くことはなく、冷静な口調でそう告げる。
「あ、たしか右斜め45度から衝撃を加えると治ると言う話もどこかの本で……。ちょうど良い機会ですし試して見ましょうか」
 言って、メイスを手にすれば、エメネアへとそっと近付いていく。
「えいっ!」
 右斜め45度の角度でメイスが当たるようにレイナは振るう。
「別に、頭を打っておかしくなったとかではありませんー」
 エメネアはそのメイスへとむちを絡めたかと思えば、レイナの手から奪い取った。
「ああっ」
 メイスをあらぬ方向に投げられて、レイナは慌てて、それを追う。
「お前も鞭か、気が合うな!」
 垂が光条兵器である鞭を取り出しながら言う。
「状況は良くわかりませんが、こちらに攻撃を行ってくるあなたを敵と見なします。覚悟をして下さい」
 皆へと攻撃を仕掛ける様子を見かねて、朔は告げると、レールガンを構えた。
「僕達のこと忘れちゃったの? エメネアさん!!」
 ゴアドー事件の後、エメネアを誘って遊びに行ったことを思い出しながら、ライゼは声を上げる。
 そこまでしてもエメネアの様子が変わるでもなく、鞭を振るってくる彼女にそれぞれ応戦した。
 狼の耳と尻尾が生えたアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は、それぞれのパートナーと共に、最上階へと上がって来ていた。
「どういうことだ……あれがあのエメネアか?」
 エメネアの様子を目の当たりにして、クルードは呟く。
「一番怪しいのはあの鞭よね。何とかしてみましょう」
 クルードのパートナー、アメリア・レーヴァンテイン(あめりあ・れーう゛ぁんていん)はライトブレードを構えた。当てるつもりはないけれど、その切っ先から爆炎を放つ攻撃を仕掛ける。
「研究しがいのある資料がたくさんあるというのに、そうも言ってはいられん状況のようだね」
 アシャンテのパートナー、ラズ・シュバイセン(らず・しゅばいせん)は肩を落としながら呟いた。
「ぼやかないの」
 アシャンテはラズにそう言いながら、霧を展開させた。
 伝説上の英雄が放ったという魔技『幻惑の霧』――それは、虚像や幻覚を生み出す霧を発生させるのだ。
 アシャンテと共に、エメネアは霧に包み込まれていく。
「またですか!?」
 先ほど、アシッドミストの霧に包まれたエメネアは、今度は何事かと身構える。
「……これがかつてのお前、そしてこれが今のお前だ……これでも、今のお前は本当のお前なのか?」
 問いながら、アシャンテがエメネアへと見せるのは、かつての姿のエメネアと、今の姿のエメネアだ。
「今のあたしが、本当のあたし――?」
 問いかけられて、エメネアはその言葉を繰り返した。
 見せられた幻にぼんやりとした様子のエメネアが、晴れた霧の中から現れる。
「今だ……!」
 クルードが先手を取ることを狙った構えから、エメネアへと距離を詰めた。
 そして、雅刀の峰側でエメネアの手首を叩く。
 衝撃で、エメネアの手から鞭が離れた。
「あ……」
「もう持たせないわ」
 落ちた鞭を拾おうとするエメネアより先に、アメリアはそれを蹴って、遠くへ移動させる。
 エメネアは離れていく鞭を視線で追うけれど、追いかける様子はない。
 暫しそれを見つめた後、不意に辺りを見回した。
「ここは……? それに、皆さん、そんな怖い顔してどうしたんですかー?」
「エメネア、お前……」
 不思議そうに問いかけてくるエメネアの様子に、応戦していた涼司の手が止まる。
「元に戻ったのですね!」
 花音が嬉しそうに、微笑んだ。
 背徳的なエメネアを支持していたメニエスたちは残念に思う。
 けれど、それ以上の学生たちが、エメネアの様子が元に戻ったことを喜んでいる。
「この馬鹿野郎が……」
「い、痛いですよー、レンさんっ」
 レンは思わずエメネアのことを力いっぱい抱きしめた。先ほどのように突き飛ばされることはなく、ただ、くすぐったそうに笑っているだけだ。
 エメネアが戻ったところで女王器の情報探しを再開しようと、何処からともなく声が上がる。
 そうしようと皆が動き出したところで、1階から爆発音が聞こえた。
 建物が大きく揺れて、天井から細かな砂が落ちてくる。
「情報探索どころじゃないな! 皆、逃げろ……!」
 涼司の声と共に、皆、階段を下りていく。
 2階を探索していた学生たちも何事かと階段付近に集まっていたために、共に階下へと降りた。
 1階に下りると、いくつかの柱が崩壊していた。
 それにより建物全体が脆くなりつつあるのだ。
 逃げ遅れている学生が居ないか、互いに確認し合いながら、皆、遺跡から脱出していく。
 結局、女王器に繋がる有益な情報を見つけることは出来なかったけれど、連れ去られていたエメネアは戻ってきた。
 それだけでも戦果だと考えて、皆は帰途へと着いた。

 エメネアは、涼司と花音の提案の元、暫く蒼空学園に身を寄せることになったようだ――。

担当マスターより

▼担当マスター

朝緋あきら

▼マスターコメント

 朝緋あきらです。
 まずは参加ありがとうございました。

 結果は説得側の勝ちとでも言えるでしょうか。
 連れ去られていたエメネアは、戻ってきました。
 暫く蒼空学園に身を寄せるそうなので、また皆さんを女王器探しの冒険へとお誘いするかもしれません。

 残念ながら遺跡は、一部の方の暗躍により、崩れてしまいました。
 女王器に関する情報もありそうでなかったようで、こちらも一部の方が辿り着いた限りの情報しか手に出来てません。その手に出来た情報も皆と共有するかどうかは、手にした人次第です。

 それでは、またお会いしましょう。