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ドラゴン・モスキート大発生!

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ドラゴン・モスキート大発生!

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第四章 夜明けのレッサードラゴン

 そろそろ夜が明けそうだった。
 ママモスキートを引き上げた為、もうボウフラが増える事は無かったが、不眠不休で働くみんなの疲労はピークに達しはじめていた。
「無理かも知れない……」
 誰かか、ボソッと呟いた。それまで
 朝までに、全部を駆除するのが困難に思えて来た。雪華と亜夢も、焦りの表情を隠せずにはおれず、いてもたってもおられずに、作業に加わり一緒にボウフラ駆除し始めた。

 ランツェレット・ハンマーシュミットと、シュペール・ドラージュは、ドスン、ドスンと、音を立てながら、こっそり蒼空学園から抜け出そうとしていた。ハンマーシュミットは、ボウフラを一掴み氷術で凍らせてクーラーBOXに入れて持ち帰ろうとしていた。
「これで、色んな薬を調合できるわ。めったにお目にかかれない生物だもの。きっと役に立つはず……」
「マスター……成功ネ」
「当たり前ですわ。ホホホ」
 ハンマーシュミットが、笑ってクーラーBOXを開けると、そこに居たはずのボウフラが消えていた。
「消えた! ボウフラがいないわ!」

 月詠 司は、まだ、ボウフラを持って帰る事を諦めてはいなかった。ようやく、司にもチャンスがやって来たたしい。今は、誰も、司の事を気にしていない。
「今だ……」
 再びビーカーで掬い、試験管に入れて、ポケットにしまう。
「よし……このまま帰るぞ……」
 もう一度、試験管を確認する司。しかし、
「あれ……? いなくなったぞ」
 試験管にボウフラはいなかった。
「確かに入れたはず……」
 もう一度、挑戦しようとしたとき、声が聞こえてくる。

「見ろ! 池のボウフラが消えていってるぞ!」

 その一言を境に、一斉にそれは起こった。
 池のボウフラも、掬われて網の中にいるボウフラも、バケツで運ばれているボウフラも、みんなみんな、ふわぁ〜と消えていく。

 勿論、肉団子スープの中の肉団子もツナギの卵白だけになった。
 店に来ていた譲葉 大和と鷹野 栗が、
「おい! 卵白だけになったぞ!」
「スープも味が変です!」
 スープを調理していた藤波 竜乃は、
「え〜! うそ? マジ? ボウフラが消えた?!」
「ボウフラ!?」
 藤波 竜乃が、ニヤっと笑って、
「能ある竜は角を隠すって言うでしょ?」
「これは……ボウフラなのか?!」
 ゲー・オルコットが、
「エヘヘ……バレちゃったか……でも、美味しかっただろ?」
 譲葉 大和と鷹野 栗が口を両手で抑えて、走っていった。
「竜乃! 塩撒くんだ! ったく、あの臭みを消すのにどれだけ苦労したと思ってやがる……」
「じゃ、あんたも食べなさいよ!」
「俺は……いいって!」


 ママモスキートの死と共に、ボウフラも消滅し始めていたのだった。あらゆる所から口々に、
「ボウフラが消えたぞ!」
などと、聞こえてくる。


 その時、どこからともなく、地響きがして来た。

 ……ドーン。

 ……ドーン。

 巨大な生物の足音だ。間違いない。レッサードラゴンだ。
 全員が、身構えて音のする方を見つめる。戦闘態勢を取れるものは、戦闘態勢を取った。 

 ボウフラを餌にレッサードラゴンを呼ぼうとしていた、イルミンスール魔法学校の生物部員の七尾 蒼也の所に、譲葉 大和と鷹野 栗が集まっていた。
「来たぞ……」
 七尾が身構える。
「ドラゴンのお出ましです」
 栗も緊張する。
「どうやらそうらしいな」
 譲葉が、餌付けの準備を始めた。
「何か、顔色が悪いみたいだけど……」
 七尾が、マロン部長と大和を見て言う。
「気のせいです……」
「ならいいけど……」

 
 夜明けの朝日を背に、レッサードラゴンの姿が見えてきた。ゆっくりと、大地を踏みしめるように。

 蒼空学園の中に入ってきたレッサードラゴンは、その温厚な性格を象徴するような優しい眼差しでみんなを眺めた。体長は10メートルはあろうかという、巨大な体だったがその優しい眼差しに誰も手を出そうという者はいなかった。
 レッサードラゴンは、まっすぐママモスキートの亡骸に近寄り、そして、大きな口を開けてママモスキートをくわえた。そのまま、レッサードラゴンはUターンし、また、ゆっくりと帰って行く。その壮大な光景に、目を奪われるだけの一同であった。後には、ドラゴンの足跡とボウフラのいなくなった綺麗な池だけが残った。
 ふと、雪華と亜夢が見ると、朝日が昇り始めていた。
「もう、朝や……」

 朝日が昇った。みんなの顔は、疲労と安堵の表情が入り混じった複雑な顔になっている。
 酔いの覚めた環奈校長が、みんなの表情を見て、
「お疲れ様。みんな、よく頑張ってくれたわね。ありがとうとまず言うわ」

 一晩を共に共有したみんなは、自然と握手や抱擁を始めていた。お互いの労をねぎらい合っていた。

 こうして、最後の最後にチームワークが生まれた。今度、同じメンバーで何かを行う時は、さらに強い絆で行動できるでだろう。全員がそんな不思議な感情を抱いていた。


「じゃ、そろそろ解散しましょうか? 授業も始まることだし……」
 環奈校長が言い放った。

 雪華が興奮した様子で、
「え? カンナ校長! そんなアホな! こんだけ学校に貢献したのに、今日は全員休みでよろしいやん!」

「何を言ってるの? それはそれ。これはこれよ。楽しかったでしょ?」

 焼却場まで運搬業務に当たっていたヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)は、怒りまじりに、隣にいるリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)に声をかけた。
「お嬢、あの校長、俺たちを殺す気か?」

 リカイン・フェルマータは、ここぞとばかりに言い放った。
「そんなの無ぇ!」

 全員の明るい笑い声が、蒼空学園に響き渡る。
 こうして、ドラゴンモスキートの幼虫は全て駆除されました。

 しかし、どうしてママモスキートは蒼空学園の小さな池に住み着き、ボウフラを生み続けたのでしょう?
 その謎だけが、みんなの胸に残りました。


担当マスターより

▼担当マスター

小林森

▼マスターコメント

 楽しいアクションを送って頂いて、皆様どうも有難うございます。
 初めてのリアクション、いかがだったでしょうか?
 正直、戸惑う部分が多く皆様に楽しんでもらえるかどうか、不安で一杯です。
 レッサードラゴンとの対決を期待されている方が多かったのですが、こういう処理になってしまいました。すいません。次回、機会があれば対決物もやりたいと思います。
 それではみなさん、次のシナリオでお会いできる事を楽しみにしています。

3月9日  2、4ページを修正しました。