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【2020年七夕】サルヴィン川を渡れ!?

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【2020年七夕】サルヴィン川を渡れ!?

リアクション


2章


「さて……大体そろったか」
 紫煙を燻らせながら、マクシベリス・ゴードレー(まくしべりす・ごーどれー)は周囲を見渡してそう呟く。
 ここにいる者たちは、同じ目的で集ったと言えるだろう。
「そういえば陽一殿はどうした? どこにも姿が見えないが……」
「お兄ちゃん? 私が毒針刺しておいたから、動けないでいるわよ?」
 陽一の姿が見えないことに気がついた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)だったが、続く酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)の言葉になんとも言えない空気が流れる。
「え〜っと……何故ですか?」
 一応理由を尋ねてみる鬼崎 朔(きざき・さく)だったが、表情には呆れしかなかった。
「酒杜妹のことだ、大方兄の説得を聞き流すのが億劫になったのであろう」
 ため息をつきながら、しかし真実に近いことを述べる毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)だった。
 そこへ聴こえてきた声に全員が反応する。
「あなたち、あの者たちの邪魔する準備はよくって?」
 そこにいたのは今回の発端たるアルタイル(あるたいる)であり、背後には立川 るる(たちかわ・るる)と、日下部 社(くさかべ・やしろ)が共に笑顔を――片方は仕事柄かもしれないが――浮かべてたたずんでいた。
「まかせて! 全力で妨害するんだから!」
「俺も全面的に協力させてもらおう。必ずや説得してみせる!」
 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)が元気に言えば、前原 拓海(まえばら・たくみ)は力強く宣言する。もっとも拓海のものは何か違ったのだが。
 それに続いて如月 正悟(きさらぎ・しょうご)も発する。
「ま、俺も彦星たちが仲良くしてるのを見てるとイラッとくるんだよね」
「アルタイルの一途さを知ったら手伝うしかないだろう」
 セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)のその言葉で締めくくった彼らは、アルタイルの言葉を待つ。
「上出来ですわ、なんとしても成功させなさい。――あなたたち、参りますわよ」
 気をよくしたアルタイルは笑みを浮かべ、るると社をつれて戻っていく。
「ほんならみんな、またな〜。見落せぇへんように、気をつけるんやで」
「失敗しちゃだめなんだからね〜」
「そうだ、アルタイル。作戦のために少し手を借りたいんだがいいか? 内容は――」
 その前に思い出したように頼みごとをするセリス。
 内容を聞いたアルタイルは、面白そうだと了承し、立ち去っていった。



「ふむ、そちらは動き出したのね……ありがとうお兄ちゃん。それと、その要望には応えられないわ。唯でさえ収入減ってるんだから諦めなさい」
 陽一の言葉を聞き流した美由子だったが、尚も続ける陽一の言葉をさえぎって言葉を続ける。  
「それに、アルタイルも本当は分かってるのよ。ただ、不安になっちゃっただけ……自分が彦星に必要とされてるのかなって」
 そこまで言うと、陽一からの言葉を待つ。その返答に頬を緩ませながら
「ならフルコース――」
 当然、最後まで言い切らずに却下されたのだった。

「なぁ、兄貴に毒針刺しといて見張りにつけさせるって……」
 そう呟いた神代 正義(かみしろ・まさよし)は、陽一に同情するしかなかった。
「まぁそのおかげで彦星たちの情報がはいってきたんだ。よしとしよう……でなければ陽一が不憫だ」
 セリスのもっともな言葉に、おもわず遠くを見つめてしまう一同。
「あとは、アルタイルがどう感じとるか……だな」
 ふいに放った正悟の一言に周囲の雰囲気が変化していく。
 ――そう、本来の目的はアルタイルを諭すことにある。
 また、今回妨害に加担したのも、彦星たちが試練を乗り越えるさまを見せたほうがより気づきやすいだろうとの判断からくるものだった。
「どう転ぶかはわからないけど、やってみないとなんとも言えないわ」
「そういうことだ……そろそろ頃合だろう。各々思うことはあるだろうが、それに気をとられすぎないように、な。――ぬかるなよ」
 美由子の言葉を引き継ぐように、行動を促したマクシベリスに従ってそれぞれの場所へ向かっていく。



「は〜、織姫さんたちも機織大変やな〜」
「ふん、いい気味ですこと。わたくしと彦星様の邪魔をするからこうなるんですわ」
 社とアルタイルの視線の先には、アルタイルによって織姫にされた女子生徒たち――小谷 愛美(こたに・まなみ)蓮見 朱里(はすみ・しゅり)ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)双葉 京子(ふたば・きょうこ)湯島 茜(ゆしま・あかね)芦原 郁乃(あはら・いくの)咲夜 由宇(さくや・ゆう)ナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)――の姿があった。
 黙々と機織をし続けているものの、全員が虚ろな表情で静かに涙を流しているのを見て、るるはアルタイルに尋ねていた。
「アルタイルさん、ここまでする必要あったの?」
「当然ですわ! あの女たちが、彦星様とあの女を逢わせたのが悪いんですもの」
 これ以上の長居は無用とばかりに、アルタイルは足早に去っていく。
 当然、アルタイルに付き従う二人も後に続いていく
「う〜ん、やっぱベガさんに頼んどかないとあかんかなぁ」
「そうだね〜。るるがお願いしてみるよ」
「任せたで? にしても……随分意地悪い試練やな〜、そう思わへん?」
「でもその分、いっぱい気持ちは伝わるよ!」