イルミンスール魔法学校

リアクション

第５章　サンシャイン　

　高くなってきた日差しが、まぶしくビーチを照らす。フェリアのいる一角は、クレアとパティが大量に調達してきた密に立てられたビーチパラソルが心地よい日陰を作っていた。毒の進行を食い止めるべくキュアポイゾン、ヒールを交代でかけているファイリアとエクスを、睡蓮と刹那が団扇で扇いだり、汗を拭いたりして立ち働いていた。リリィはマリィとの喧嘩の合間に、キュアポイゾンをかけている。
　氷見はSPチャージを、回復メンバーとフェリアに交互にかけていた。タンタンはカマクラから出てこない。
　アリア、ウィルヘルミーナ、綱斬と橘は定期的にフェリアの水を交換したり、優しく声をかけたり、体に海水をかるなど、まめまめしく働いている。

　薬草捜索に行っていたメンバーが次々と戻ってきた。神裂とルナが夢見草の籠を持ち、そのあとに湯島とハロルーがら小走りに続く。霜月、卯月、アイリスの3人が仲良く何か話しながらやってきた。唯斗が続いて帰ってくると、睡蓮とエクスが歓声を上げた。
　芦原とマビノギオンは崖にシルバースターがなかったことに安堵していた。影野がスキルで探した場所に、ある程度まとまって草があったのだ。紅葉、ノースと流木が早く治してあげてくれと、調合担当の一人、エレオノールにシルバースターを渡す。アインはニコラスが怪我をしなかったことを喜んでいた。
　
　神和とクリスは、レキのポーチに収められた貝殻を、炎術で乾燥状態を保ち続けているミアをサポートしつつ歩いてきた。レキは先頭にたって誘導している。アシュレイはしんがりを警戒しつつ、ゆっくり歩いてきた。
　霧島がディオネアを肩に乗せ、フクザツな表情で五月葉に宝石貝の最後のひとつを渡した。

　ようやく薬が調合され、湿布が完成した。30分ほどで効果が出、毒の中和に成功したと手当てしていたメンバーが宣言した。海岸に集まっていた生徒たちから歓声が上がる。
。フェリアはまだ少し疲れてはいるものの、だいぶ元気になっていた。
「みなさんのおかげです、どうもありがとうございます」
うずくまっていたプールから上体を起こし、フェリアは言った。

　イオマンテはレストハウスの持ち主から修繕費用の負担について話しあわなくてはならなくなり、そのころ変熊は、周囲を警戒していたリネンとヘイリーから厳しく説教をされていた。

　エヴァルト、ガートルード、シルヴェスター、万願の４人は、ついに屋敷の奥手で、ケルナダとダイダが人魚の捕獲失敗の報告現場に踏み込んだのだった。パワードスーツでヴァルトがドアをぶち破る。ガートルードは大剣で家具を打ち壊し、シルヴェスターが二挺拳銃でガラス窓を次々と破壊してゆく。さらには狭い空間でクロスファイヤを使用する万願。
　硝煙と壊れた家具、ガラスが飛び散った部屋の真ん中で、ケルナダとダイダはわけもわからずしがみつきあっていた。
　ゆっくりと4人が間合いを詰め、ケルナダとダイダに迫る。
「女の子を掻っ攫おうとはどういう了見だ、てめえ｣
「ケルナダ、あなたに人魚の治療費を請求します」
「罪のない人魚を掻っ攫おうとするとはどういう了見じゃ、ワレ、あぁ〜？」
「パン屋店長を舐めてもらっちゃぁ…困るであるな」
3方向から各々勝手にまくし立てられ、武器を突きつけられたケルナダとダイダは、そのまま気絶してしまった。
　
エピローグ

　人魚のフェリアがたまに立ち寄るお気に入りの島のひとつに、フェリアを救ったメンバー全員が招待された。
　まっ白い砂、どこまでも深いコバルトブルーの海。一部には磯があり、そこの岩に、打ち寄せる波が細い割れ目を通って天然の噴水となって定期的に水しぶきを上げている。
　そのしぶきの中には丸い虹が、きらきらと輝くしぶきをダイヤのようにちりばめて浮かんでいた。
　海で泳ぐもの、デートを楽しむもの、ビーチパラソルの影で景色を愛でるもの、水のかけっこをして遊ぶもの、ピクニックバスケットを広げるもの……。皆一様に、すばらしい夏の休日を楽しんでいた。

　ケルナダは過去にも様々な不正手段を用いて、盗品を多数所持していた事が発覚し、現在も取調べが続けられている。