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夏だ!祭りだ!喧嘩神輿だ!

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第3章 決勝

「さあ、果たして優勝を飾るのはどのチームなのでしょうか!」

 喧嘩御輿、残るはいよいよ【武術部神輿】、【雪だるま王国】、【イリヤ神輿】の三チームとなった。

「【武術部神輿】には雪だるま王国民がちらほらいるようですね……。丁度いい機会です、女王と戦うということはどういうことかお教えしましょう」

 【雪だるま王国】の美央の視線を受け、【武術部神輿】のメンバーは何人かおどおどし始めた。

「や、やりにくいじぇ……」

 更に、メトロも美央の隣に立つ唯乃を見て萎縮する。メトロは唯乃とは中がいいのだが、彼女には頭が上がらないのだ。

「お前達どうした! 相手が誰だろうと担いで担いで担ぎまくるだけだろ! いくぜ、ヒャッハー!」

 そんな仲間たちを、マイトが鼓舞した。

「援護は任せてくれ!」

 なぶらが味方にパワーブレスをかける。
 【武術部神輿】は【雪だるま王国】に突撃した。

「おっと、俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 そこに【イリヤ神輿】が加わる。三つ巴の戦いが開始された。

「和希を応援してあげよーっと♪」

 観客席のヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)は、【イリヤ神輿】を応援することに決めた。

「私はこのうちわで煽り、扇ぎます!」
 
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は、微妙に上手いことを言いながら戦線に躍り出た。

「それー! 祭だ祭だー!」

 翡翠は褌に晒、上からはっぴというお祭りスタイルで、大きなうちわを振り回す。祭を盛り上げつつ、御輿の担ぎ手たちに涼しい風を送った。小柄なため喧嘩御輿への参加を断念した翡翠にとって、ここが一番の見せ場だ。

「ラッセラー! ラッセラー!」

「防御は任せろ!」

 のかけ声と椿の要人警護を受け、和希は軽身功で華麗に宙を舞う。担ぎ手たちの体力はミューレリアが命のうねりで補った。

「決めるぜ!」

 和希がドラゴンアーツによる強烈な一撃を叩き込もうとしたそのときだった。激しく暴れ回ったせいで、彼女の晒しが解けた。

「和希!」

 和希本人は全く気にしていないが、パートナーのガイウスが和希の胸を隠そうとする。【イリヤ神輿】の統率が一瞬失われた。

「私のワイバーンが!」

 これで緊張の意図が切れたのだろうか。これまでじっとしていたミューレリアのレッサーワイバーンが暴れてどこかに向かい始めた。その先には……

「いらっしゃいいらっしゃい。おいしいイカ焼きだよー」

 薔薇の褌をつけた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)の出す屋台があった。
 丁寧に下ごしらえをした後鉄板の上で焼き、甘い醤油だれで味付けした弥十郎のイカ焼きは、リっとした食感とほのかな甘さが好評で、順調な売れ行きを見せていた。
 ずっと何も食べていなかったワイバーンがその香ばしい匂いに負けたのも、無理はないだろう。

「このみかんで我慢しろ!」

 スレヴィは御輿に供えたみかんでなんとかワイバーンを引き留めようとしたが、ワイバーンはぬるくなったみかん一個になど目もくれず、弥十郎のイカ焼きを夢中で貪った。

「まいどありー」

 【イリヤ神輿】の戦いはここまでだった。

「なによ、駄目じゃない。うーん、どっちを応援しようかしら。うん、人数的にもあっちの方が優勢に見えるわね♪」
 
 【イリヤ神輿】が脱落した途端、あっさり心変わりして【雪だるま王国】を応援し始めるヴェルチェ。ヴェルチェは強い者の味方なのだ。

「これに勝てば優勝です。一気にいきましょう」

 ここを勝機と見た美央が、攻撃の指示を出す。

「皆様、無理のない程度に死ぬ気で頑張ってくださいませ……。回復だけはしてあげますので……」

 ここまで内側に位置取り力を温存していたレイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)が、初めて口を開いた。SPは十分。パワーブレスに命のうねり、清浄化からバニッシュによる奇襲まで、なんでもござれだ。

 対する【武術部神輿】では、全身パワードスーツに身を包んだが雄叫びを上げた。
「この勝負に勝ったら、焼きそばやらたこ焼きやらをおいしく食いまくってやるぜ!」

 それは死亡フラグだと誰もが思ったが、口にするものはいなかった。

 要のパートナー、ルーフェリアも彼に呼応した。

「勝負事なら負けられねぇ! 絶対に勝ってみせるぜ!」

「「ウオリャァァアアアアア!!!!」」

 二人の絶叫とともに、【武術部神輿】が【雪だるま王国】を迎え撃つ。唯乃は荒ぶる力で担ぎ手の腕力底上げ、音井は衝突に備えてサイコキネシスで美央と唯乃を支えた。
 
 二つの御輿が激しくぶつかった。

 箒を組んで装飾を施した【雪だるま王国】の御輿は、軽さと強固さとを兼ね備えていた。枝葉を集めて装飾した【武術部神輿】の御輿は、これに適わなかった。【武術部神輿】の御輿が崩れていく。
 優勝チームが決まった瞬間だった。