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トリック・オア・コントラクト!

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トリック・オア・コントラクト!
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■□■9■□■ ハロウィンの告白

賑やかな会場のそばで。

レオン・ダンドリオンは呼び出されていた。

天海 護(あまみ・まもる)は、
天海 北斗(あまみ・ほくと)のために、
兄として、レオンの好きなものをあらかじめリサーチしていたのだった。
(実りの秋、北斗の恋も実ってほしいからね)
レオンの好きなものを聞いた護は、北斗を送り出す。

緊張していた北斗だったが、
レオンと二人っきりになり、
ドキドキしながら箱を差し出す。
「空京で、美味いって評判の店を探してみつけたんだ。
よかったら、食べてくれよな!」
北斗が差し出した箱の中には、レオンの好物のバウムクーヘンが入っていた。
「ありがとう!
美味いドイツ料理が食いたいと思ってたんだ。
よかったら、いっしょにどうだ?」
「あ……オレ、機晶姫だから」
北斗には飲食する機能がない。
「そっか。じゃあ、これは俺がありがたくいただくぜ。
ありがとうな!」
「う、うん!」
喜んでもらえて、北斗は温かい気持ちでいっぱいになった。

★☆★

そのころ、
ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)は、
ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)と話していた。
「俺は仮装しないけど、ルドルフさん、どうする?」
「僕は仮面をつけているからね。いつも通りにするよ」
そんな中、『カシスの日記』 カーシェ(かしすのにっき・かーしぇ)が、
ルドルフの手をひく。
「ルドルフにききたいことがあるのー!」

★☆★

カーシェのパートナー、
カシス・リリット(かしす・りりっと)がやってきた。
「こんばんは、ルドルフさん。
ヴィナがいつもお世話になってます」
カシスは、ヴィナの「本妻公認内妻」である。
「こちらこそ」
ルドルフは、笑顔を浮かべる。
(うーん、緊張するな)
ヴィナの想い人を前に、カシスは思う。
カシスも、ヴィナの地球にいる妻も、ヴィナのルドルフへの恋を応援しているのだった。
「トリック・オア・トリート!」
カーシェにいきなり言われて、ルドルフは苦笑する。
「あいにくお菓子は持っていないんだ」
「じゃあ、おかしなかったらいたずらねっ。
カシスが昨日、日記にメモしてたしつもんに答えるだよ。
きょひけんはー、ありませーん、だよっ」
カーシェは質問を開始する。
「そのいーち
好きなタイプ!」
「ジェイダス様のような方だよ」
「そのにー
家事のうりょくゼロでも許されますか!」
「人によって得意なことは違うからね」
「そのさーん
ぶっちゃけヴィナのことどう思っ
むがぐぐ」
カシスは、カーシェの口をふさぐ。
(これからヴィナが直接話すようだし、本人より先に聞くのもな)
カシスはそう思いつつも、ルドルフに言う。
「この後聞かれるだろうことに嘘だけはつかないでね」
カシスは微笑んで、カーシェを回収して去って行った。
カーシェは、カシスに抱えられて、ルドルフとヴィナに手を振る。

★☆★

二人っきりになったところで、
ヴィナはルドルフを見つめ、言う。
「前、ルドルフさんは俺に感謝してるって言ってたけど、
肝心なことを言ってないから、聞きたくてね」
「肝心なこと?」
「ねぇ、ルドルフさん、俺のこと、好き? 嫌い?」
「……ヴィナ」
「ちなみに、俺はそう言う意味であなたが好き。
きちんと前を見据えるあなたが好き。
奥さん達はね、余すことなく俺の気持ちをあなたへ伝えるようにと言っている。
だから、俺は言うの。
綺麗で可愛い人だよ、あなたはね」
「ありがとう。そういう風に思ってもらえるのはうれしいよ。
だけどね、僕は、君を頼りにはしているけど、
それは君の言う『好き』とは違うんだ」
ルドルフの表情は、仮面で半ば隠れていたが、真摯に向き合ってくれていると、
ヴィナにはわかった。
「そっか」
ヴィナは、甘いものが苦手なルドルフのために用意した、
スパイスの効いたクッキーを口に放り込んで、微笑う。
「いつか振り向かせてみせるよ」
クッキーを食べたルドルフは、やはり微笑んで、言う。
「10月31日、誕生日おめでとう、ヴィナ」