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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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「皆で鍋パーティしませんかー?」
 高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は携帯でルーシェン・イルミネス(るーしぇん・いるみねす)に電話を掛けていた。
『んー……良いよ! 面白そうだもん!』
 ルーシェンはすぐにオッケーを出した。
「結和ちゃん、その皆って勿論、俺も含まれてるよねー?」
「うん」
 会話の途中で結和に話しかけてきたのは占卜大全 風水から珈琲占いまで(せんぼくたいぜん・ふうすいからこーひーうらないまで)だ。
 結和から一緒に行ける事を聞けると上機嫌で、支度をしにいった。
『じゃ、あたしからコルに連絡しとくね』
「うん、お願いしますー」
 待ち合わせの場所と時間を決めると、電話を切り、結和も出かける支度を始めた。
(誘っちゃいました……恥ずかしかったけど……誘えてよかった……)
 ホッと胸をなでおろすと、ルーシェンからメールが届き、コルセスカ・ラックスタイン(こるせすか・らっくすたいん)がばっちり参加出来ることを伝えてきた。
(来てくれるみたいで、良かったー! 今日はちょっとで良いから近づきたい、な)
 そんな結和の思いを秘めた鍋パーティーは19時から開催されたのだった。

 カマクラの中では、女性2人が頑張って鍋を作っていた。
(つか……ルーとならいいけどね、女の子二人、可愛いよね結構結構。うんうん。……だがどうしてこの仏頂面までいやがるっ! がるるるるっ!)
 結和がチーズ鍋を作っているのを手伝いながら、占卜大全はコルセスカに出て行けオーラを放っている……のだが、コルセスカはルーシェンの鍋に気を配るので精いっぱい過ぎて気が付いていない。
「魔道書さん、こんな感じですかー?」
「ん……美味しいよ! これなら毎日でも食べられる!」
 結和が味見に差し出したスープを飲むとかなり大げさな言葉が返ってきた。
(んで、仏頂面はなんであんなに真剣にルーの鍋を凝視してるのかね? 普通のちゃんこ鍋にしか見えないけど……腹減ってるんだな、うん。きっとそうに違いない。結和ちゃんが作った鍋は渡さないけどなっ!)
 心の中で思いっきり頷くと、占卜大全は得意な料理を結和に教えて行く。
「出来ましたー!」
「こっとも出来たよ!」
 結和とルーシェンは同時に鍋を完成させた。
 コタツに座ると、占卜大全は結和の隣にぴったりと張り付き、座った。
「ち、近いですよ?」
「これは俺と結和ちゃんの心の距離をあらわしてるんだから良いんだよ」
 結和はにっこり言われ、なにも言い返せないで、ただあわあわしているだけだ。
 4人は、そんな感じで鍋を食べ始めたが、すぐに占卜大全が騒ぎ出した。
「おいー、仏頂面! 肉が足りなさすぎるだろうが、肉が! こんなんじゃすぐに結和ちゃんとルーがお腹すいちゃうよ?」
「そ、そうか……解った……。いいか皆、俺が戻るまで絶対に鍋に箸をつけるなよ?」
 そう言い残すと素直にコルセスカはタノベさんのところに肉を取りにいってしまった。
(チャーンス!)
「占くん、あたしが作ったお鍋、まだ食べてもらってないなぁ〜?」
 ルーシェンは目をキラリと輝かせ、占卜大全に自分の作った鍋をよそい、渡した。
「そういや、ルーが作ったものって食べたことなかったよね! 楽しみ〜。いただきますっ!」
「あ、じゃあ私も……」
「ゆーわちゃんは、良いの!」
 占卜大全が食べたのを見て、結和も手を出そうとしたが、ルーシェンに止められてしまった。
「はっ……はっ……ただいま……って、遅かったかっ!!」
 箸を持ったまま固まっている占卜大全を見て、大量の肉を抱えて帰ってきたコルセスカが愕然とした。
 占卜大全はずっと固まっていたが、その内、顔色が赤くなり、紫に変化し、土気色に落ち着き、ぶっ倒れた。
「あー……占くん大丈夫ー? しょーがない、あたしが介抱してくるね」
 ルーシェンの言葉が若干棒読みな気がするが、誰も気づいていない。
「ね、あたしが見てるから2人はそっちの鍋を堪能すると良いんじゃない? せっかくコルがたくさん肉を持ってきたのに、無駄になっちゃうよ」
「そ、そうか?」
「でも、魔道書さんが……」
「良いから、良いから、気にしないで〜」
 結和が占卜大全に近づこうとしたが、これもルーシェンに止められてしまった。
 なので、座り方が変更となり、ルーシェンの横に占卜大全、結和の隣にコルセスカの席となった。
「あっと……えっと……あ、よそいますね!」
「す、すまない」
 結和はわたわたしながら、なんとか自分が作った鍋をよそい、コルセスカに渡した。
「うん、うまい……確かにこれなら毎日でも――」
「えっ!?」
「あ、いや別に他意は……」
「そ、そうですよねー」
 結和とコルセスカは恥ずかしそうに下を向いてしまった。
(うんうん、良い雰囲気だよね〜。あたしの料理ってば最強かもね)
 占卜大全にタオルで仰ぎながら、ルーシェンはそんな事を思っていたのだった。