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SPB2021シーズン キャンプ~オープン戦

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SPB2021シーズン キャンプ~オープン戦

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【八 オープン戦終了】

 オープン戦が全日程を終了し、いよいよシーズン開幕まであと一週間に迫ったという、某日。
 ツァンダ・パークドーム内のカフェテリアにて、フィリシア、理沙、セレスティア達が激務の合間を縫って一息入れていると、葵、リカイン、あゆみ、オットー、シルフィスティという、少々変わった組み合わせの面々がどやどやとやってきて、隣のテーブルに陣取った。
 いずれも、表情が明るい。
「ねぇ、何か良いことあったの?」
 理沙が水を向けると、五人はいずれも口元をほころばせ、互いに意味ありげな視線を交し合う。実をいうと、この面々はつい先程、内々にではあるが一軍当確の通達を受けたばかりなのである。
 ヒラニプラやイルミンスール程ではないが、ワイヴァーンズにも元3Aやプロ選手などがごろごろ居る。そんな中での一軍切符獲得である。嬉しくない筈がない。
 すると、そこでフィリシアが僅かに表情を曇らせた。パートナーのジェイコブは、一体どうなったのか。
 フィリシアのそんな胸中を察して、葵とリカインが笑みを崩さずに頷きかけてきた。
「ジェイコブさんなら、大丈夫だよ!」
「そうね。だって、いの一番に一軍内定を貰ってたんだから」
「ほ、本当ですか!?」
 思わず身を乗り出して勢い込むフィリシアに、今度はあゆみが笑顔で応じる。
「あれだけガンガン打ちまくる一番打者だよ? 守備も手堅いし、いくら3AやNPBの元助っ人の人達でも、あそこまで活躍されたらぐうの音も出ないよ」
 どうやら、間違いないらしい。
 すっかり安心した様子で深々と椅子に腰掛けるフィリシアに、理沙とセレスティアが祝福の言葉を贈る。
「やったじゃん! おめでとう!」
「おめでとうございます。これで安心して、マスコットガール業に精が出せますね」
 セレスティアの最後のひとことに、流石のフィリシアも照れ笑いを禁じ得なかった。

     * * *

 一方、蒼空学園スカイランドスタジアム内のクラブハウスでも、一・二軍の振り分けが発表されていた。
「いやぁ〜、よう受かったもんやなぁ」
 自分で自分に感心したのか、一軍に残ったカリギュラが腕を組んで何度もうんうんと頷いている。だが、彼以上に己の結果に驚いていたのが、キャンプ直前に入団テストを受けたばかりの和輝やルカルカ、クリムゾンといった面々であった。
「まさか、一軍に残れるなんて……」
「よ〜し! やったよ! これで真一郎さんに毎日差し入れが……」
「ほぅほぅ、ミーが残ったでござるか。これはワルキューレ、余程に人材が不足している様子」
 まさに三者三様の反応であった。
「それじゃあ早速、祝いの外野十周いっちょきますか〜」
 何故祝いに外野十周なのかよく分からないが、レティシアの勢いに乗せられる格好で、同じく一軍に残ったソーマとブリジットが引っ張っていかれた。
「あらら、ブリジットさん……ご愁傷様〜」
 春美が笑いながら見送っているが、当のブリジットはといえば、
「ちょっと、笑ってないで助けてよ!」
 と、必死に救いを求めていた。
 そんなレティシア達と入れ替わるように、お祝いのケーキを持参したセレンフィリティとセレアナ、鬱姫、パルフェリアといった面々が、何故か目に見えない火花を散らしながら、クラブハウスに足を踏み入れてきた。
 室内に残っていた選手達が、テーブルに広げられたケーキの山に、わらわらと群がってくる。
 この締まりが無いというかばらばらというか、あまりにまとまりの無い雰囲気に、室の片隅で様子を眺めていた山葉オーナーは深い溜息を漏らしていた。
「涼司くん……どうしたんですか?」
 特別にクラブハウスに招待されていた加夜が、ふと怪訝な表情で山葉オーナーの横顔を覗き込む。この時の加夜には、山葉オーナーが抱く危惧の意味が、まだ理解出来ていなかった。
 泣いても笑っても、SPB2021シーズンはあと一週間後には開幕するのである。
 オープン戦断トツの最下位に終わった蒼空ワルキューレが、シーズンに入って巻き返せるのかどうか。山葉校長の胸中には、ただただ不安材料のみが山積みとなっていた。

     * * *

 このオープン戦の結果を以って、ワイヴァーンズ、ワルキューレともに一軍と二軍に選手を振り分けた。
 そこから更に、レギュラークラスとベンチスタートのメンバーに振り分けられ、スタメンはそれぞれ、以下のような結果となった。

――ツァンダ・ワイヴァーンズ――
投手(先発ローテーション)
 風祭 隼人
 葉月 ショウ
 グレッグ・バッキー
 南臣 光一郎
 マルコ・ブリトー
 秋月 葵
投手(セットアッパー)
 七瀬 巡
投手(クローザー)
 風祭 優斗

野手(打順と守備位置)
 1.ジェイコブ・バウアー:左翼手
 2.川相 琢朗:遊撃手
 3.テルマンチ・ナナリー:右翼手
 4.アレックス・ペタジーニ:一塁手
 5.ガディ・ブラッグス:三塁手
 6.イングリット・ローゼンベルグ:二塁手
 7.リカイン・フェルマータ:中堅手
 8.月美 あゆみ:捕手
 9.投手


――蒼空ワルキューレ――
投手(先発ローテーション)
 ミューレリア・ラングウェイ
 葉月 エリィ
 椿 椎名
 鳴神 裁
 安芸宮 和輝
投手(セットアッパー)
 ルカルカ・ルー
投手(クローザー)
 カリギュラ・ネベンテス

野手(打順と守備位置)
 1.レティシア・ブルーウォーター:左翼手
 2.クド・ストレイフ:二塁手
 3.ブリジット・パウエル:三塁手
 4.馬場正子:右翼手
 5.氷室 カイ:一塁手
 6.ソーマ・クォックス:中堅手
 7.鷹村 弧狼丸:遊撃手
 8.ジョージ・マッケンジー:捕手
 9.投手