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第三章 ブローチ発見大作戦!


 何人かの学生達は雪だるまが残した痕跡を追ってようやく暴走雪だるまに辿り着いていた。暴走雪だるまはその大きさ故に木々の間隔が狭い所に挟まって止まっていた。

「……ブローチの位置を見つけるね」
 コハクは『トレジャーセンス』でブローチの位置確認を始めた。

「ここにあります。あまり深くないからすぐに取り出せるはず」

 コハクが示したのは、暴走雪だるまの体の中心部だった。
「よし、早く取り返して帰ろうぜ」
 日笠 依子(ひりゅう・よりこ)は、コハクが示した位置に手を突っ込んで早く取り返そうとするが、

「……雪だるまを傷つけることは反対です」

 美央の鋭い言葉が依子の手を止めた。
「反対ってどうやってブローチを取り返すんだ」
 依子は困ったように言った。同じおばあちゃん子として早くナコのブローチを取り返したかっただけだというのに。
「雪だるまは人と平等な存在です」
 美央はなおも言葉を重ねる。彼女の側にいる女の子も強く頷いている。
「ブローチを取り出す方法はワタシ達で考えます」
 レイナが雪だるまを傷付けられるのを防ぐために言って雪だるま王国のみんなと作戦会議に入った。

「何とか助けて寂しがり屋の彼に子供達が友達になって欲しいでござるよ」
「そのためには傷つけずに助けて一緒に幼稚園に帰らなければいけません。何か良い方法は……」
 スノーマンやクロセルも方法が無いかと模索するが、なかなか思い浮かばない。
「おい、どうするだ。やっぱり俺様がやった方が早くないか。それか雪だから溶かす方法でも使うか」
 依子は早くブローチを取り返して子供達を幼稚園に帰したくてたまらない。

「日笠殿、それはあまりにもひどいでござるよ」
「そうですよ。もう少し待って下さい。必ず、雪だるまとブローチを救い出しますから」
 スノーマンとクロセルは依子を止め、その間に美央とレイナは方法を考え続け、一つの名案というか賭けを思いついた。
「お待たせしました。では、始めましょう」
 美央の合図でレイナが『氷術』を雪だるまに使った。
 思いついたのは、『氷術』を使い雪だるまの雪を増やし、ブローチを押し出して自然に回収するという方法だった。ただ、雪だるまが巨大化してしまうが、ブローチの位置はそれほど深くはないので問題は無いはず。
「雪だるまが大きくなるよ」
 子供達は楽しそうに大きくなる雪だるまを眺めている。
「……ブローチが出てきたよ」
 少し大きくなったところでブローチが転がり落ち、コハクがそれを拾った。
「はい、このブローチ、ナコ先生に返してあげてね。ナコ先生、きっと喜んでくれると思うから」
 コハクはブローチを美央の側にいる女の子に渡した。
「お兄ちゃん、ありがとう」
 女の子はにっこりと礼を言って落とさないようにしっかり握った。
「さぁ、帰ろうぜ」
 取り返す物も取り返して後は、森を抜けるだけ。

「私達にはまだ大事な仕事が残っていますので子供達をお願いします」

 美央は大事な仕事のために子供達を依子に預けることにした。

「……仕事?」

 依子が聞くより先にコハクが聞き返した。
「彼を助けるのでござるよ」
 スノーマンは答えるなり、すぐに雪だるまの方に目を向けた。
 子供とブローチは救った。後は、雪だるまを救うだけだ。
「この雪だるまさん大丈夫なの?」
 美央達に助けられた男の子が心配そうに雪だるまを見ている。
「大丈夫です。だから、心配しないで行って下さい」
 レイナが心配する男の子に答えた。
「……分かった。ほら、行こう」
 依子はコハクと一緒に子供達を連れて森を抜けた。