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リアクション
第三章 第2試合
イコンチーム
九十九 昴(つくも・すばる)&九十九 刃夜(つくも・じんや)
笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)&アインス・シュラーク(あいんす・しゅらーく)
桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)&エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)&エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)
退紅 海松(あらぞめ・みる)&フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)
巨大化チーム
アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
サオリ・ナガオ(さおり・ながお)
東 朱鷺(あずま・とき)
第七式・シュバルツヴァルド(まーくずぃーべん・しゅばるつう゛ぁるど)
「第2試合は教連隊だね。リーダーが唯斗、サブリーダーは昴だよ。巨大化チームはハンデのために4人。それじゃ、戦闘開始!」
ルカルカの合図で再びシミュレーター内に街並みが浮かび上がった。
唯斗はTAMA-KASUMI絶影の周りにチームメンバーを集めると、ざっと見渡す。
「さて、うちの隊には近接好きが多いねぇ。んで遠距離型が一人だけと。自由募集でこんだけ偏るかー……ま、頑張るけどな。俺は中衛で皆の動きを見てるからそれぞれ自由に動いてみてくれ。細かい指示はエクスに任せる」
「了解!」
唯斗からの指示を受けると、各機予定配置へと急行する。
「頼んだぞ、エクス」
「ふむ、教官か。良い、偶にはそういった事もせねばな」
エクスは頷くと、各機の配置状況を確認する。
「ん? フェブル君どうなさったんです?」
プラヴァー(重火力パック仕様)で後方に待機する海松は不思議そうにフェブルウスに声をかけた。
「あなたがこれに参加するとは……いえ、意外だっただけです」
「折角ロボットの学校に来たんですものね。こういう事には参加したいと思うのは当然ですわ」
「では、援護に入ります」
楽しそうに話す海松に対し、フェブルウスはあくまで淡々と返す。
「それにしてもフェブル君が私の事を気にかけてくれるなんて嬉しいですわ。これが終わったらハグハグチューですわね!」
「あぁ、いえ、それはなしでお願いします」
フェブルウスはじと目で答えるが、当の海松は気にもかけず、鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だ。
フェブルウスは軽くため息を吐くと、戦闘に集中することにした。
巨大化チームはそれぞれが思い思いに動き回っていた。
朱鷺はペットの龍二匹、蛇二匹と式神化した千羽鶴を巨大化させ、自身は千一羽目の鶴となり、千羽鶴に紛れた。
第七式は巨大な植物園を見つけると移動し、ぴたりと動かなくなった。さもはじめからそこに城があったかのうに見せかける。
「紅鵡様、渋谷付近に敵影を感知しました」
アインスのナビゲートで紅鵡はCHP001{ICN0000770#スプリガン}を駆り渋谷で向かう。
「紅鵡、スプリガン……出ます!」
「前衛は皆紅鵡に続くのだ」
「さぁ、行くわよ光刃!」
「了解!」
エクスの指示に、昴のIRR-SFIDA光刃【戟】と煉のCHP009シュヴェルトライテが続く。
「フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!」
渋谷に到着した彼らの前に立ちはだかったのは、セミのような顔に巨大なザリガニのようなはさみ状の手をした宇宙怪獣だった。
「……なんだか懐かしくないか? こいつの姿……コードネーム星人バルタにしようぜ」
「煉さん、結構ギリギリだよ……でも、武器が凄いね」
宇宙怪獣の姿をしたアキラが手にしていたのは、サオリが全長10メートルものビームサーベルに変化した姿だった。
アキラがそのはさみ状の手で器用にビームサーベルを握ると、斬りかかってくる。
3機は即座に飛びのくと、昴が斬龍刀による接近戦を開始する。
紅鵡も、盾を構えながらビームライフルを撃ちつつ、回避を繰り返しダメージを狙う。
煉は銃で応戦するが、巨大な割に動きの早いアキラに避けられ、思うような攻撃が展開できずにいた。
アキラは複眼でイコンを捕らえ、瞬間移動で背後を取る。
「いいか、イコンでの戦闘というのは相手のポテンシャルを推し量り、対応すべく心構えを持ち、いついかなるときでもドーッと動き、ザザッと回避していくことが重要だな」
「結局目の前のこいつを倒すにはどうしろってんだよ」
「焦るな。焦って目が曇れば隙を見失うぜ」
「くっそぉぉぉ……」
その後も続くエヴァの講釈は精神論や擬音が多く、煉は頭を抱える。
アキラは攻撃対象を絞るとサオリで攻撃しつつ、はさみから破壊光線をだし広範囲での攻撃の手も緩めない。
その上、分身を使いイコンをかく乱することも忘れない。
「敵機、急接近して来ます。回避してください」
アインスの言葉に紅鵡が飛び退る。
機動力を活かし前線に跳躍した唯斗は、光刃とシュヴェルトライテを抱えて退避する。
3機がいた場所には、朱鷺が放った龍二匹と蛇二匹が蠢いていた。
「数が多いですね……」
「最終的に勝てるように確実に一体ずつ倒して行こう」
昴の言葉に唯斗が指示を出す。
「前衛連中はあまりバラけるな。ある程度纏まってフォローし合いながら動くのだ。人体では不可能な姿勢制御も出来るから工夫してみよ」
エクスの言葉に陣形を戻すと、昴が魔法の投げ矢で複数の敵にけん制をかけ始める。
刃夜はいつでも機動できるよう、加速1の準備に余念がない。
後方からは海松の機体が威嚇射撃を開始した。
射程ぎりぎりに入りプラズマキャノンを撃ち、そのまま後方へ下がりつつ威嚇射撃とアキラの足元を狙った射撃へと展開する。
そのまま連射を続けると、地面から土煙を出すことで弾幕の変わりにした。
「後衛、むやみに無駄弾は撃つなよ。役目は援護と狙撃に絞れ。いざという時に撃てんのでは困るだろう。……もっとも、今のは良い援護だったがな」
エクスの言葉に、海松たちは射撃を止め、再び後方へと下がる。
煉と紅鵡は頷き合うと左右に分かれて飛び出し、それぞれの標的へと向かった。
煉が飛び出したのを見るなり、龍2匹が飛び掛ってくる。
煉はギリギリのところでかわし、体当たりはビームシールドで受けるが、なかなか攻撃に転じることができない。
「巻きつかれたら終わりだな」
「攻めなければやられるぞ。その心意気が攻防に反映されるんだからな」
エヴァの指摘を受けながらも、イコンが相手の時とは流れも感覚もまったく違う戦闘に、煉は思うように操作ができない。
ビルに身を隠しながら近づいた紅鵡がアキラの破壊光線を避けつつ、龍をビームライフルで攻撃する。
「敵2体、背面から急速接近します」
アインスの言葉に慌てて振り返ると、迫っていた蛇を剣でなぎ払った。
「星人バルタ以外は思考能力は高くないはずだ。意表をついた攻撃にはついてこられないだろう」
唯斗の言葉に隙間を縫って龍に接近した昴は、煉との戦闘に夢中になっている龍を背後から斬龍刀で斬りつける。
最後の力を振り絞ったかのように首をもたげる龍の姿に、煉と昴はいったん後方へと下がった。
昴は手持ちのクレイモアを龍の顔の辺りに投げつけ注意を逸らすと、高速機動20と刃夜の加速1、不屈の闘志(50)を使い、一気に接近する。
「兄さん、ブースター出力上昇!」
「了解、光刃、ブースター出力上昇!」
そのまま龍2体を合わせ張り付くように動き、ダメージを与えていく。
ダメージを蓄積させたところで、使用武器をスフィーダソードに変えダメージ上昇(30)に合わせ、一気に決着をつけた。
「紅鵡様、味方機から余り離れないで下さい。単機では狙われやすくなります」
「そうだね、戻らないと」
蛇を追い陣形から離れてしまった紅鵡は、アインスの言葉に従い、ビームライフルで蛇との距離を保ちながら陣形へと戻ろうとする。
と、突然蛇2匹が素早く這いずり、スプリガンに体当たりをしながら巻きついてくる。
「うわっ!」
「機体確認。損傷、制御、問題ありません」
アインスの冷静な声が響く。
「フラクトゥール!」
唯斗の声に、海松たちが再び地面への射撃を行い、スプリガンに巻きついた蛇たちに土埃を浴びせた。
目をやられたのかのたうちまわる蛇を、煉と昴が攻撃する。
昴は刃夜からの周辺状況の報告を受けながら、効率の良い角度からの攻撃を繰り返した。
蛇が機体から離れた瞬間、紅鵡が2体を剣で切り捨てた。
「相手は常識外の事をしてくると思え。過剰に想定し予想しろ。その方が生存率は上がる」
エクスの言葉に煉は身動きが取れなくなる。
「煉は逆だ。生身での戦闘経験が多い分、戦況を予測しすぎているだろう。イコン戦闘は状況が限られる分、戦闘展開もある程度決まってくる。考えすぎないほうがいい」
「……なるほどな……っ!」
言うなりアキラに近づくと、銃は不要だと投げ捨てる行為によるメンタルアサルトを発動する。
不思議そうに動きを止めたアキラの隙が出来た所にワイアクローを撃ち込み巻き上げた。
ほんの数分前からは考えられない動きにエヴァは驚くが、アキラに隙ができたのを見た瞬間、機体のリミッターを解除する。
煉はギロチンアームで挟み込みはさみを押さえつける。
アキラはもう片方の手のサオリを振り回す。
状況を判断したサオリは突如ムチに変身し、煉や周囲のイコンをはじき飛ばした。
「フォッフォッフォッフォッフォッフォッ」
「イラっとするなー!!」
「同感です」
煉の言葉に昴が同意する。
エクスも静かに頷いていた。
突然背後で射撃音が響く。
どこからともなく現れた千羽鶴が、海松たちの機体に迫ったところを、プラズマキャノンで殴ったのちそのまま零距離砲撃へと繋げ距離を取ったのだ。
前衛部隊が揃って千羽鶴への攻撃を開始すると、アキラが破壊光線を出しながら飛び込み、千羽鶴と連携を取り始める。
「フォッフォッフォッフォッ」
煉はブレス・ノウ、回避上昇(75)、ホークアイ、行動予測、心頭滅却、百戦錬磨にて相手の動きの先を読み、超反応などで攻撃を回避していく。
「要は千発の弾丸と同じってことだな……!」
先ほどまでとは比べ物にならない煉の動きに、エヴァは内心舌を巻いていた。
「いつの間にか操縦テクで負けてる!?」
そんな内心を悟られないように、言葉を並べ立て講釈を続けるが、イコン操縦のコツを掴んだ煉にはエヴァの感覚的な物言いも理解ができる点が増えたようで、頷いては攻撃に活かしていく。
斧に形を変えたサオリを振り回し、アキラはフォッフォッフォッと笑いながら街中を破壊していく。
「紅鵡!」
煉の声に反応した紅鵡はアインスと協力し機体を一気に移動させると、千羽鶴に対してヒット&アウェイで攻撃を繰り返す。
隙を見逃さず、煉は空裂刀を叩き込んだ。
千羽鶴は地面に落ちるとそのまま動かなくなる。
「残り3分だよ!」
響いたルカルカの声に、昴はアキラとの距離と詰めるとスフィーダソードで決めにかかる。
鶴との決着をつけた煉と紅鵡が取り囲むように攻撃を加えると、星人バルタはその場に崩れた。
「城が、動いています」
「動いてるね」
「城がな」
ゴゴゴゴゴゴという大きな音を聞きつけ植物園のほうを見た一堂は、巨大な城が動く姿に唖然とする。
「基本的に後衛の射撃を当てる隙を作るか。射撃回避の隙を突くのだ」
唖然とする昴、紅鵡、煉にエクスは構わず指示を出す。
3機は城に向かって飛び込むと、けん制攻撃をしかけながら城の周りを機動力を活かしすばやく動きまわる。
城はその重量を活かし、重みのある体当たりやパンチ、キックを繰り出す。
イコンから攻撃を仕掛けても、その両手でガードをされ、はじかれてしまう。
見た目とは想像もつかないスピードで大きな音を立てながら移動する城は、街並みすべてを容赦なく破壊していった。
「昴、気をつけて。後方から来るよ!」
回りこみ変則的に動く城に刃夜が注意を促す。
海松の機転で開始前に海松が迷彩塗装を施していた機体が突如城の後方から出現し、城に向かって近距離での砲撃を連射すると、素早く後退する。
動きを止めた城に跳躍すると、唯斗は機動力を活かし、城が反応する前に零距離へと移動した。
そのまま合気の要領で補陀落山おろしを仕掛ける。
あまりにも鮮やかな技に、城はその自重による落下ダメージでそのまま動きを停止した。
勝利を確信したイコンチームの目の前に突然千羽鶴から朱鷺が空に舞い上がった。
「おめでとう。3、2、1……」
「戦闘終了! イコンチーム有効戦力5、巨大化チーム有効戦力1。第2試合、イコンチーム勝利!」
朱鷺のカウントと同時に、戦闘の終了が宣言される。
「完全制圧には至らなかったのだな」
エクスが悔しそうに呟いた。
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