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盗んだのはだ~れ?

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盗んだのはだ~れ?

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>>>>洞窟内部<<<<

「リーラテェロ、どこ〜?」
 時見 のるん(ときみ・のるん)の声が洞窟内の湿った空間に反響する。
 ぬかるんだ土と苔が生えた道に残された僅かな足跡を追って、生徒達は少女を捜索する。
「こんな所で独りなんてきっと怖い思いをしてるよ。早く見つけてあげなきゃ」
「そうだヨ。急ぐの先決ね」
 ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)は【光条兵器】の長剣をかざして洞窟の先を照らす。
 すると、天井付近に無数の赤が輝いた。
「敵!?」
「ちょっと待って!」
 長剣を構えたロレンツォの前に、アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が手を伸ばして制止させる。
 アリアンナは【ダークビジョン】で光源を見据えた。
「……大丈夫。あれは蝙蝠よ」
「コウモリですカ?」
 注意深く光を向けて確認すると、羽をたたんだ蝙蝠達が体を寄せ合うようにしてぶら下がっている。
「危害を加える気はないみたいだよ」
 【禁猟区】で感じ取ったのるんは、自身も向けていた弓矢を降ろした。
「ん?」
「何かわかったの?」
 苔と【人の心、草の心】で会話して情報を聞き出していたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)に、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が覗きこむようにして尋ねる。
「いや、まだこの道を進んだことしかわからない。けど、なんだか他にも女の子が迷い込んだみたいなんだ」
 周囲を見渡すエース。
 すると、暗闇の向こうから川村 詩亜(かわむら・しあ)ミア・マロン(みあ・まろん)が歩いてきた。
「玲亜、返事して――」
 足を滑らせよろめいた詩亜を、ミアが踏ん張って体で支える。
「もう……詩亜はドンクサイんだから」
「そ、そんなことないよ!?」
 必死に否定する詩亜。それに対してミアは投げやりに同意したため、詩亜は不満そうに頬を膨らませていた。
 そんな二人にエースは近づいた。
「話し中に失礼するよ。俺はエース。もしかして君たちも誰かを探しているかい?」
 口論をやめて顔をあげた二人に、エースは淑やかな花びらをつける百合を一輪ずつ差し出す。
 戸惑いながら受け取ると、詩亜は事情を説明しだす。
「私は川村詩亜。実は妹の玲亜が行方不明で……あの、どこかで見てないかな?」
「どうだろう。特徴とか教えてもらえるかな?」
「えっと、玲亜の髪はこの髪と同じで、身長は私より少し低いくらい。頭の上に赤いリボンをしてる女の子なの。それで、やさしい子なんだけど本当によく迷子になる子で……」
 詩亜は言葉を切って深いため息を吐いた。
「そ、それは大変だね。……うん。憶測だけどその子もリーラテェロと一緒にいるんじゃないかな。彼らに聞いた話だと同じ道を通ったみたいだし」
「エース、迷いこんだ子ってこの子達じゃなかったの?」
「うん。聞かされた容姿と近かったから、俺も一瞬そうかと思ったんだけど違うみたい」
 【人の心、草の心】で聞き出した情報では、確かにリーラテェロと玲亜はこの道を進んできたらしい。けれど――
「でも、おかしいな。この先には二人とも行ってないみたいなんだ」
 これより先――詩亜達が歩いてきた道へは誰も行っていないという。
 視界で捕えられる範囲は一本道で、どこにも横道は存在しなかった。
 すると、地面から突き出した巨大な岩に足を掛けながらエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が叫ぶ。
「おい、ここの足場崩れてるぞ!」
 生徒達が駆け寄り覗きこむと、底の見えない縦穴があった。
「苔が削れてるな。足を滑られて落ちたか……かなり急だな」
 どこまで続いているかもわからない縦穴は、ほぼ九十度の急斜面だった。
 エヴァルトは肺に溜めた空気をゆっくりと吐きだすと、漆黒のその先を見つめた。
「行くしかないな。無事でいてくれよ」
 触れただけで崩れそうになる足場。
 エヴァルトは【空飛ぶ魔法↑↑】をかけてゆっくりと降下していく。
「危険な気配を感じるよ。注意して」
 頭上からのるんが警戒を促していた。