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【Down to Earth】

 ある日御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は日本へと降りていた。
 早々に用事を終えて立ち寄った観光地横浜で、彼女は偶然友人達と出会う。
 アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ(あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち)ハインリヒ・ディーツゲン(はいんりひ・でぃーつげん)というお兄さん二人に挟まれて会話する舞花を、友人達は微笑ましく見守る。


 * * * 



 御神楽家の次期当主候補として試練の為未来から独りやってきて、世界中の誰もが自分を知らない状態から全てをスタートさせた舞花だったが、今ではパートナーだけではない彼女だけの交遊関係を築く事が出来ていた。
 プラヴダの旅団長アレクと副旅団長ハインリヒも、彼女の輪を形作る一人だ。
 午後の休憩時間に彼等の基地へやってきた舞花は、応接室のソファに腰掛けて、ハインリヒがサーブしようとしたマグカップを手で受け取る。
「有り難う御座います」
 丁寧な礼を受け取ったハインリヒが笑顔で返すと、隣のアレクが「そう言えば」と口を開いた。
「『ジゼルがまた横浜行きたいね』だって。俺達も舞花ちゃんも遊びに行った訳じゃないんだけどな」
「まあ実際僕たちの方は任務3遊び7くらいになってたのは事実だろ。
 ああ舞花ちゃん、これどうぞ。青と白が美味しい黒が僕のお薦め黄色は正直微妙」
 早口で言いながらハインリヒがテーブルに並べた箱を覗き込んで、舞花は「可愛いですね」と感嘆に近い声を上げる。中にはカラフルな袋で一包ずつ包装された一口大のチョコレート菓子が入っていた。これが客人のお茶請け用に準備されていた訳では無く彼の私物なのは箱に書かれた雑なサインを見れば分かる。
「僕甘いもの無いと頭回んないんだよ」
 軽いウィンクが飛んで来て、成る程と頷きながら舞花はもう一度横浜での出来事を思い出していた。
「それにしてもまさか地球で皆さんとお会いできるとは思いませんでした。
 本当に奇遇でしたね」
 にこにこと微笑む舞花と二人、会話は弾んで彼等の休憩時間をたっぷり使っても終わりきらない程だ。
 初めて出会った頃は威圧的な視線で見下ろされ、びくびくしながらお茶請けも無しに味の無いコーヒーを啜ったものだが、今の舞花から出てくる食事後の挨拶はこうだった。
「ごちそうさまでした、とっても美味しかったです」