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第八章  決戦! 試しの場

【アーリア護衛班・残留】とゴーレム軍団。
 その戦いの火蓋が落とされた。互いの前衛部隊が走り出す。
 こちらの先頭は美羽だ。楽しそうに瞳を輝かせ活きいきとしている。
「きたきた! こーゆーの待ってたのよね! 限界までかっ飛ばすわよ!」 
 敵の先頭のゴーレムが右手をかざす。するとぐにゃりと歪み、鋭い刀の形態へと変化した。
「はあ!」
「……」
 美羽が飛び込むようにして上段から剣を振り下ろし、ゴーレムがそれを打ち上げるようにして迎え撃つ。
「こいつ!」
 互角。しかし美羽の表情は一転、何故か厳しかった。

 敵味方入り乱れる中、匡は戦場を駆け抜けていた。
「さて、黒く立ち回らせてもらいますか」
 匡が英虎と交戦しているゴーレムの背後を取ろうと跳躍する。しかし一体のゴーレムが雑踏から飛び出してくる。
「なんですって!?」
 匡はゴーレムの繰り出した蹴りを両腕を交差してガード、離れ際にナイフを投げつける。しかしゴーレムも手を振るうようにして指の一部を切り離し、ナイフを打ち落としてくる。
 それを見た匡の目が何かをけどり細まった。

 ゴーレム軍の火術の雨を対空迎撃している真人に背中を預けるようにしてセルファが近づく。
「真人! うまく説明できないんだけど、なんだかこのゴーレムたち気持ち悪いよ!」
「ええ、君が何を言いたいのかわかります。このゴーレムたち、似ているんですよ。いや、同じと言ってもいい。おそらく先ほどの魔法陣は投影魔法だったんです。あのゴーレムは各々が俺たち自身になりうるってことになりますね」

「投影魔法? はっ、そんなもので私の剣技を全て写せるとでも思ってるのか?」
 そう声を荒げるのはウィングだった。
「ファティ、光条兵器を!」
「我が身に封じられし神と魔王の力よ・・今ここに顕現せしめん!」
 ファティが片刀剣を生み出し、ウィングへと渡す。二本の剣を逆手に持ち直し、地を滑るように跳躍する。ゴーレムがそれに合わせ両手を刃状に変えた。
「はあああああああああ!」
「……」
 斬撃の応酬。互いに一歩も譲らない。まるで舞っているかのような攻防が繰り広げられる。
「本当に同じだな。やりにくいったらない。だけど……」
 ウィングが左から振り上げようとしていた剣をぴたりと止める。フェイントだ。合わせるようにしていたゴーレムが腕を振り下ろす。ウィングはそれを剣の柄の尻の部分で弾き、そしてそのまま十字に切りつけた。
「どうだ!」
 手ごたえありだった。しかし、
「…ギギギ…」
 ゴーレムは何事もなかったかのように突きを繰り出してくる。ウィングは一足飛びで後ろへと下がり距離をとった。
「ウィング!」
 ファティが駆け寄る。
「……なるほど。それでもってタフいときてやがる」 

 ベアとマナのコンビもゴーレムと交戦中だった。
「敵さん疲れ知らずかよ! 戦力は同じ、だけどスタミナは無尽蔵でなおかつ打たれ強いってか。俺の推察ではかなり不利だぜ」
「そんなのベアじゃなくたって、誰でもわかるわよ! しかしどうすればいいの。これじゃあジリ貧でやられるのを待っているようなものだわ」
「気合よ!」
 どこから現れたのか美羽が叫ぶ。
「あと根性! そして親友の死があなたを遙かなる高みへと押し上げてくれるはず! とう!」
 そして跳躍、美羽が去っていく。
「こらー! 適当なことばっか言うな!」
「……なるほど、道理だな」
「ベアもなに納得してんの!? 全然違うわよ!」
 自分たちを完全に投影しているゴーレム軍団に、対処の糸口を見つけられないでいる一行は徐々に劣勢へと追い込まれていった。