蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

狙われた学園~シャンバラ教導団編~1話/全2話

リアクション公開中!

狙われた学園~シャンバラ教導団編~1話/全2話

リアクション

「助かった、礼を言う」
 ダリルがワームらを退治した四人に頭を下げた。
「良いってことよ。あんたらもフラッグ目ざしてんだろ?」
「そうだが」
「ああ、そうそう、行動を一緒にさせて貰っていいかね?フラッグの場所が全然わからなくてよ。まったくメンドクセェ、こういう任務はオレ向きじゃねぇって言うのに。何考えてるんだかね、上は…」
 その瞬間、ダリルたちに緊張が走る。もしかすると、この連中が不穏分子なのか。小声ではあったが、デゼルは上に対する不満も漏らしている。
 また、デゼルも同じようなことを考えていた。これだけ目玉焼きごときで論争を盛り上げているからには、何か理由があるに違いない。のるかそるか、判断に迷ったがここは乗ることに決めた。面倒くさがり故に、この連中に乗っかったほうが得策、と判断したのだ。
 そこにアルコリアがうんちょう タンに話かけてきた。
「あの、服の下のその墨、流行ってるんですか?」
「それがし、ゆる族であるからして、服の下は見えないでござる」
「ああ、そうでしたか。とりあえず一通りカマを掛けてみようと思いまして」
 真っ赤な瞳と黒髪が美しいアルコリアの言葉に、その場が凍てつく。
「アル、その辺りにしておいた方が良い。さて、目玉焼きの食べ方論争チームの君たち。ボクたちもフラッグを目指している。一行に加えて貰えればありがたい」
 シーマの言葉に、固まっていた面々はようやく我に返った。今のところ、あやしい動きをしている者はいない。また、これも一つのチャンスだ。そう、目玉焼きの食べ方論争チームは頭の中で判断し、顔を見合わせ、最後に祥子が口を開いた。
「判ったわ。で、あなたたちは目玉焼きには何をかけるのかしら?」


 相沢 洋(あいざわ・ひろし)は不穏分子の行動を攪乱すべく、虚偽の情報を無線で流すことにした。
 周波数の帯域を変えながら、マイクに向かって複数の人間を装い、情報を流す。
「不穏分子の一人を確保した」
「こちらは戦闘中だ」
「それらしき人物を発見!捕縛に向かう!」
マイクのスウィッチを切り、にやりと笑う。
「これで動いてこない方がおかしい。逆にこの情報に乗らなかった奴らの方が、あやしいかもしれない。もうしばらく様子を見て、再度同じ状況で事態が進展したように思わせる情報を流してやりましょう」
 洋の頭脳は相当キレるようだった。

 ディアス・アルジェント(でぃあす・あるじぇんと)ルナリィス・ロベリア(るなりぃす・ろべりあ)橘 ニーチェ(たちばな・にーちぇ)橘 ヘーゲル(たちばな・へーげる)の四人はワームの森にいた。
 ディアスは、ある日ニーチェから電話がかかってきて
「明日シャンバラまで来てくださいね〜約束の時間30分前には来て下さいますね? ね? じゃなきゃ撃っちゃいますから〜」
と無理矢理誘われ、しかも来てみると、何故か教導の制服が用意してあったのだ。ついつい、ニーチェに乗せられてそれを着てみたところ、
「………、…きゃははっ! ディーってば似合わないのです〜!!」
 と笑われた挙げ句、そのまま訓練参加することになったのだ。
「似合わないとか言うんじゃねぇよ…」
「ニーチェ姉様が用意してくれた…他校の制服……初めて…なんか嬉しい」
「ルナリィスかわいいじゃん。まぁ、ニーチェがバカな事言いだすのはいつものこと。ディアスは悪いが頑張ってくれ、な?」
ぐっと親指を立てるヘーゲルにディアスは苦笑いをする。
(またニーチェに振りまわされるのか…)
「そもそもフラッグを取りに行くはずが、なんでまだ、ワームの森なんだよぉ」
 実は彼ら、ワームとゴブリンに囲まれていたのであった。
「だぃじょうぶ! 孤高の銀狼にワームやゴブリンのごとき雑兵が勝てるとお思いで? いきますです!」
 アサルトカービンでガンガン、ワームとゴブリンを撃ち落としていくニーチェ。
 それを援護するヘーゲルは、
「地獄の業火のなか、踊れよ踊れ」
 と呟きながら火術を使ってワームを焼き払う。ディアスはルナリィスに光条兵器を使わせたくなかったので、火術で応戦する。ルナリィスは後方にて、誰かが怪我をした場合、回復に専念するため控えていた。
「なんとかここを切り抜けて、フラッグめざすぜ…」

第3章

 一方、ドラゴン棲息地では−

 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)と、ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)はドラゴン棲息域で息を潜め、監視を行っていた。
 二人は不穏分子が必ずドラゴン棲息地にやってくる、そう踏んでいたのだ。スタート早々にドラゴン棲息域へと立ち入るルートを監視できる樹上を確保し、双眼鏡で観察を続けていた。ただ、ここのドラゴン棲息域は、木が多く、視界は遮られがちだった。
「葉教官の『信用できる人材』の中に、使える者がいなかったか。このような訓練において不穏分子をあぶり出さなければならないとは」
 クレアのつぶやきに、優しげな風貌をしたハンスはアルカイックスマイルで答える。
「確かにそうかもしれませんが、情報源に何か不都合があったようです。それに、こうやってドラゴン棲息域を見張っていれば、何かあったとしても問題を解決できるでしょう。また、何もなかったとしたら、それはそれで喜ばしいことです」