リアクション
第２９章 ほんのちょっとした遊び
琳 鳳明（りん・ほうめい）がリリーハウスにやってきたのはぎりぎりになってのことだった。
「えっと、すみませーん。リリーハウスに入りたいんですけど……。
あ、この紙に名前書くんですね。琳鳳明……っと」
手の空いていたラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）が、鳳明の応対をする。
「せっかくですから、指名に答えていただけるかしら、鳳明さん☆」
「えっ？ あれ、これ契約書！？」
客のつもりで来たのに、気がつけばドリームメイデンの一員である。
「でも、もう私を指名してくれるようなお客さんはいないんじゃないですか」
そういって鳳明は肩を落とす。
しかしラズィーヤは楽しそうに微笑んで、開いたテーブルを指した。
「あの席で待っていて頂戴。ちゃんと指名が入るわよ♪」
言われたとおりに鳳明が座って待っていると、男装の麗人がやってきた。男の身なりをしているが、よく見れば女性とわかった。それが誰だかわかって、鳳明はあっと声を上げそうになる。
鳳明を指名したその人は、人差し指を唇に当てて静かにするよう示した。
鳳明はぎこちなく注文を取り、そして乾杯した。
「どうしてそんな格好をなさってるんですか……それに、どうして私を指名なんか……？」
「お客さんの気持ちが知りたかったからですわ。ほら、ドリームメイデンならお客を楽しませなくてはいけませんわよ☆」
心配が晴れない鳳明は続けて聞く。
「皆さん、お気づきになるんじゃないでしょうか？」
「大丈夫よ。もうすぐこの夢の３日間も終わるのだもの、自分たちが楽しむことで精一杯のはずですわ♪」
「その……楽しんでおられますか？」
「ええ、とっても」
鳳明の売り上げ：６００Ｇ
