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リアクション
8-07 クライスと藍澤
高松塚古墳の奥に向かって、走るクライス(灯かり付)、ぞろぞろとそれを追う式神、更に、藍澤、二人のパートナー達が続く。
「わわわっ、と。敵を引き付けたのはいいけど、藍澤さん達が追いついてこないよ……?」
奥へ進むごと、ぞろぞろぞろぞろぞろ、鬼、猿、マラの数が増え、クライスにまつわり付いてくる。
「くうっ、引きつけ過ぎた……かな?!」
下がるわけにもいかない……クライスがそのまま、霊気強まる最奥に達すると。
子どもたちを捕らえて、それをばりぼり貪り……喰おうとする、鬼の姿があった。他の鬼兵の数倍はでかい。
向かい合うクライス。
背後に、追いすがった式神が集まる。
「やるしかない……!
やい、お、鬼……」
「……ォオニァァァアアァァァ?! 何ダ。小僧ゥゥゥゥ」
子どもをほっぽり、クライスに向かって立ちはだかる鬼ボス。
「ホゥ。ヨク見ット、美味シソウジャァ。シャブリツクシテヤルオニァァ」
「へ、変態鬼……!!」
藍澤も、今ここへ到達する。
「クライス殿、……一人で向かうつもり、か!」
群がる式神が、邪魔だ。
「藍澤さん! だいじょうぶ、まかせて」
クライス殿……クライス殿は、割合に熱血なところがあるから。
一手に魔力を集中する、藍澤。
二人のパートナー達が、到着する。
フィルラント、「幽霊さんは、光にあたって成仏してもらおか!」
バニッシュ!
式神が光のなかに消えていく。鬼は……腕で目を塞いでいる。
「今だ!」
飛びかかるクライスに、鬼の一撃が振り下ろされる。
とっさに前に出る藍澤。
「――クライス、引けッ」
火術を展開しながら、消滅していく式神たちの間を駆け抜ける、藍澤。
すんでに避けるクライス。
藍澤は手に炎を纏ったまま鬼へ突っ込む。
「――藍澤、危ない!」
鬼の鋭い二撃目を、クライスが受け止めた。
鬼の目前で炎をぶちまける、藍澤。
顔を覆い、退がる鬼へと、ヒロイックアサルトの力を帯びてクライスの強烈な一閃が入る。
「わ、うわぁぁぁん」
囚われていた子どもたちが、一斉にフィルラントのもとへ駆け込む。
「ってまたボクかいな??!」
「フィルラにーちゃん。今日えらい人気だよね。うらやましいなぁ」
「……よかった。」
ふしゅうぅぅ、と煙を放って消えていく、二人して打ち倒した敵の前で、佇むクライスと、藍澤。
言葉はないが、互いを、称え合うようでもあり……
(クライス……初めて、その名前を呼び捨てにした、な。)
(……とっさだから言っちゃったけど、……ひょっとしたら、いい切っかけになったかも。)
藍澤は次を切り出せないでいるが……
「さあ、早く残りの皆も助けに行こう、……藍澤!」
「!
あ、ああ。クライス……!!」
そのやり取りを静かに見守っていたローレンスたち。
「やはり藍澤殿といるのは、主にとっていい刺激になるようだ……感謝せねばな」
「うんうん、青春ね」
「ふぅむ。騎士、か。そう言えば人を守らないといけないんだったか……(俺も、戦い方も変えなければいけないのか、面倒だな。)
ま、それが騎士というなら仕方ない、か」
――そう。今は互い、薔薇の学舎で技を磨き合う仲だが、いつか騎士として並び立ち、
"イエニチェリ"を目指す。
その思いは言わずとも、互いに同じの筈。
そして出来得ることならば、共にそうなりたいものだと。
「……で、友情はいいから先に行かなくていいの、か?」
ジィーンが、いつまでも熱く見つめ合う二人に、声をかける。
「そ、そうだね、行こう!」
「あ、ああ。そうだ」
再び、駆ける一行。
走りながら、今度はサフィがフィルラントをじっと見ている。
「お、こ、今度は……? これも友情か、はたまた恋情か?
今日のボク、どうなってんや??」
「ね、さっき、乱戦にまぎれてあたしのスカートの中のぞいたでしょ」
「な、なんでやねんっ!!?」
8-08 セオボルトと59代目
その頃……遥か、京都では。
奈良の清明文殊院で一祈り済ませると、現在実際に清明がいる京都の清明神社へと向かった、セオボルト。
折りよく、清明は神社に滞在し、セオボルトは清明とまみえることと相成った。
「清明さん。はじめまして。
自分は、シャンバラ教導団の、セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)と申します。どうぞお見知りおきを」
「これはこれは、御丁寧に。こちらこそはじめまして。
59代目安部清明です」
59代目清明は、蒼空学園の修学旅行で陰陽師体験学習を実施する準備中であることを語った。
「教導団のお方々も、京都へ修学旅行をされているのですか?」
「あ、いえ。実は自分らは奈良に修学旅行中でしてな……」
清明に、現在の奈良の事情を説明する。
「ほうほう。なるほど……」
涼しげな笑顔で、セオボルトの話に聞き入る様子の清明。
「では、セオボルトさまは、もしや奈良の戦いから逃れて、京都に……」
なお優しい口調ながらも、清明はくすと笑いつつ、そんなことを言ってみせるのだった。
「……(なるほど。これが59代目清明さんの本質ということですな)」
「いえ、失礼。
ですが、私もセオボルトさまと一緒のことをするでしょうね。
修学旅行に来てまで戦おうなんて、優雅ではない……
まったくこの京都見物していった方が余程賢明というもの」
清明は、セオボルトの方を向き、にこやかに微笑んだ。
「さておき、その相手の陰陽師というのは一体?」
「その者の名は……蘆屋道満と」
その名を聞くと、清明の涼しげな表情に影が差したかに見えた。が、一瞬であった。
「道満、……ですか。なるほど、彼が。英霊として、ね……ふふ」
清明は、独り言の最後に、これから楽しい遊びでも始まるといった子どものような笑顔を見せた。
「清明さん?」
「いえ、セオボルトさま。何でもありまぬ。道満を破る術ですか……
ここへ道満を連れてくるのがいちばんですね。……ははは」
清明は今度は、空を仰ぎ見て、笑ってみせるのだった。道満の挑戦を受けてみせようという自信のようでも。
「さて、セオボルトさま。あなたにお会いできてよかったです。
せっかく京都においでになったのですから、蒼空学園の生徒さまと共に、古都の観光コースを巡りつつ、私の式神・十二神将と戦いなぞ、いかがです?
なかなか、風流だとは思いませぬか?」
「……。それは、確かに。
自分は芋ケンピのお店でも探しながら、京を経巡り歩こうかと」
「ほう。それは、また。なかなか通な楽しみですな」
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