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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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第9章 ゴーストの襲撃

-AM0:00-

「まだゴーストの襲撃はありませんが、油断できませんね・・・」
 美術室のドアの前でルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)は、どこからか不意打ちされないか警戒していた。
「相手は再生する不死身なんですよね」
 カルスノウトの柄を握り締め、サクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)も廊下を歩きながら見回りをする。
「ゴーストが入ってこないように、バリケードでも作ったほうがいいでしょうか?」
 いつどこから現れるかわからない敵から生徒たちを守るため、クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が提案する。
「それもいいですけど、ちょっと待ってみましょう。ここへ行方不明者を連れて来る生徒たちもいるでしょうか」
「たしかに・・・追われていたらすぐに助けられないかもしれませんからね」
 美術室の中では樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、天井に書かれている文字を見上げていた。
「謎がわかんない・・・」
「刀真・・・解けないのは仕方が無い」
「―・・・月夜、慰めはいいです。それにしても校舎に入ってからかなり時間が経ちましたね」
「これ、お弁当」
 夕飯用に作ったお弁当を刀真に手渡す。
「月夜・・・この弁当大丈夫?」
「賞味期限は切れていないから・・・」
「(せっかく作ってくれたんですから食べてみますか・・・。ちょっと胡椒の量が多いようですね・・・)」
 から揚げをハシで摘まみ口にいれる。
 一方トランプカードを差し込む台座の周りで、ソウガ・エイル(そうが・えいる)たちが謎の言葉について考えていた。
「王の右側に騎士が控えている。Kの右にJ・・・そして王の後ろに4人の騎士・・・10から6の内、いずれか4枚・・・。女王も王を疎ましいという言葉は王より後ろの位置・・・という意味か?」
「そうなるとどういう配置になるの?」
 傍で聞いていたアリア・エイル(ありあ・えいる)は首を傾げる。
「左前がKのカード、前にはJのカードと右前に10・・・。9のカードは右側へ差し込み、8は右後だろうか?後には7のカードがきて、6が左後・・・Qは左側だと思うんだが・・・」
「なるほどね・・・トランプカードが手に入ったら、それで試してみよう」
「そうだな」
「一応メモとっておくね」
 ソウガの考えた謎解きの答えを、エイルがメモ帳に書き込む。
「それじゃあ・・・私の考えも一応言っておくわ」
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)も天井に書かれた謎の言葉について考えた答えを、エイルにメモをとってもらう。
「王の右にいるという騎士はJでいいはず・・・4人の騎士というのはおそらく数字札ね。まずKを一番北におき、Jをその隣の北東・・・そしてQをKから一番離れる南の位置ね」
「そうなるとどうなるの?」
 エイルのメモを見ながら、ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)がリネンに答えの続きを聞く。
「残りの数字札は・・・空いた箇所に時計回りに差し込む感じね・・・」
「カードの配置はどうなるのかしら」
「つまり・・・・・・東に10、南東に9のカード、南西は8のカード、西に7・・・・・・北西に6・・・。これで4人がK・・・後方に配置できるはず・・・」
「なるほどね」
「はい、メモにとりました。他に意見のある方います?」
「トランプに関するゲームを重点において考えてみたらいいんじゃないかな?」
 謎を解くポイントになりそうなことを、神和 綺人(かんなぎ・あやと)が天井の文字を見ながら言う。
「ゲーム?何か関わりがありそうなのあるかしら・・・」
 口元に片手を当ててヘイリーが考え込む。



「美術室はここでござろうか?」
 ゴーストから逃げならようやく辿りついたゴザルザ ゲッコー(ござるざ・げっこー)が美術室の中へ入ってきた。
「帰り方が分からないから皆が帰る時に、一緒に校舎から出ることにした・・・」
 町からの出方が分からないナガンと歩がやってきた。
「あんなのまともに相手してたらきりがないな」
 赤月 速人(あかつき・はやと)も謎解きの参加するため、ゲッコーの後にドアを開けて入る。
「無理に戦おうとしたら斬られちゃうわよね・・・。美術室の外でゴーストが来ないか見張っているわね」
「あぁ頼む」
「謎解き頑張ってね」
 パートナーのカミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)は、ドア付近で待機することにした。
「皆集まっているみたいね」
「かなりの人数が集まっているようなのだな」
 夜薙 綾香(やなぎ・あやか)藍澤 黎(あいざわ・れい)も謎解きの参加にやってきた。
「今ちょうど謎解きの提案をメモとっているので、案がある人は言ってくださいね」
「拙者の考では・・・まずスペードのスートの数字カードを騎士として、王の右側に配置できるよう王を左上に置き・・・王より右の差込口に数字を置く。次に4枚の騎士が王の後ろを狙える位置にくるようずらす、女王も王を疎ましいと思っているようでござるから隣ではなく後ろに・・・。ジャックは騎士や王子よりも家来と見て、空いたところだと思うのでござるが」
「それでカードの並びは?」
「力の強さが時計回りてことだから・・・前がジャックで左前がキング、その後ろにあたる左側がクイーンのカード。左後へ6のカードがきて、後ろ側に7のカード・・・。8は右後に・・・そして9は右側で、最後に10が左前にくるのではないでござろうか」
 ヘイリーの問いかけに答えるようにゲッコーが説明する。
「ふむふむ・・・メモとりました」
「私も少し考えてみたのだがいいか?」
「えぇどうぞ」
「まずは配役の確認から・・・キングとクイーン、それとジャック・・・。数字札がどこか、だが・・・騎士は複数居るから騎士だな。QはKを疎ましく・・・とある。Qの方がKより強ければこうは思わんだろうし、力関係はQよりもKのほうが強いだろう」
「力関係を重点に置くと、カードの配置が分かるのかしら?」
「王の背後を狙う騎士は4人・・・数字札は5つ。ならば王の左右には騎士がいるはず。JがKの右、数字の内1枚が左だな」
 首を傾げて聞くヘイリーに、綾香は頷いて説明を続けていく。
「札の強さ順にはめて・・・北から時計回りにK・・・J・・・Q・・・10・・・9・・・8・・・7・・・6となるのではないであろうか」
「―・・・はい、メモに書きました。お次、誰かいます?」
「我の解釈だとスペードのJのモデルはオジェ・ル・ダノワ、伝説の騎士なのだ。Kの右・・・北東にJを置くのであろう」
「そういう考えもあるんですね」
「スペードのKは右を見ていて、スペードのQは左を見ている。女王も王を疎ましく思う・・・とあるのだから、視界に入らないよう互いにそっぽを向くようになる位置が正しいだろう。つまりKの左・・・北西にQを置く」
 エイルがメモをとりやすいように少し間を空けて説明を続ける。
「しかし4人の騎士は王の背後を狙っていたということは、共通項のある4枚は背後にいないということ・・・。カードを見て見るとスペードの4と同じように上下対象なのは10・・・9・・・8・・・7・・・6では10しかない。つまり・・・10がKの背後にいる」
「なるほど・・・書きました、続けてどうぞ」
「北側がKで北東側にはJ、東側には9のカードを差し込み、南東側に8・・・南側へ10のカード、南西側は7・・・西側が6・・・北西側がQとなるのではないであろうか」
「とりあえず・・・他の方がいらっしゃったらまたメモをとりますね」
 パタンッとメモ帳を閉じた。



「行方不明者とカードを探しにいった人たち、なかなか戻ってこないわね・・・」
 美術室のドアの前で待機しながらカミュが廊下の奥を眺めていると、ミシッミシッと足音が聞こえてきた。
「来たのかしら・・・?」
「いえ・・・これは人の気配とは違います」
 呼びに行こうとするカミュを刀真が止める。
「そっちは変わりないか?」
 ドアを開けてヴァルフレード・イズルノシア(う゛ぁるふれーど・いずるのしあ)が外の様子を見る。
「ちょうど招かざるお客さんがいらっしゃったようですよ」
「そうか・・・ならば加勢しよう」
 足音が聞こえる方へエペを構えた。
 ピタッと足音が聞こえなくなったかと思うと、ギュィイイイッとけたたましい音が鳴り響く。
「うるさい・・・」
 月夜は顔を顰め、騒音が聞こえる方へ火術を放つ。
「ピエロは俺たちが抑えておきます、謎解きお願いしますね」
 美術室にいる生徒たちにそれだけ言うと、黒い刀身の片刃剣をした光条兵器でゴーストへ斬りかかる。
「君のチェーンソーより俺の黒の剣の方が強いですよ」
 振り下ろされたチェーンソーと光条兵器がぶつかり合い、ギギギギッと金属が擦れる音が響き渡る。
「しばらく死んでてください、起きたらまた殺してあげます」
 標的の片足と胴を薙ぎ払う。
 ベシャベシャッと赤黒い血が床に飛び散る。
「・・・・・・遅い」
 斬り落とされた肉片同士がくっつき再生し、襲いかかろうとするゴーストを、ヴァルフレードが微塵に斬り刻む。
「ふぅ・・・・・・1体だからなんとかなるけど、こんなの数体いたら厄介よね!」
「えぇ・・・持久戦はキツイかもしれませんね」
 カミュとクリスは息を切らせながらも、巨大なゴーストに立ち向かう。
「このままではらちがあきません。コイツをここから引き離しましょう!」
「えぇそうですね」
「さぁこっちに来なさい!」
 何度も再生を繰り返すゴーストを引き離そうと、ルイスとサクラは廊下を駆ける。
「刀真・・・」
「俺たちも行きますか」
 ルイスたちに加わって刀真と月夜の2人も美術室からゴーストを引き離す。



「こら・・・・・・正気の人間すら、狂気に走りそうな空間になっとる。早いトコこの状況を解決せな」
 斬り刻まれてもすぐに再生する化け物を目にし、フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)は顔面を蒼白させる。
「さっきから誰かに見られている感じがするし・・・べっ・・・べつに、ホラーが駄目ってわけやないんやぞ?!」
「1匹や2匹ついても?」
「どどこに!?」
 恐怖心を煽るさらりと言い放つエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)に対し、フィルラントは慌てて自分の周りを見回す。
「おい、ここが美術室か?」
「うぎゃぁああっ、出たぁああ!」
「出たって・・・・・・何がだ?」
 背後から話かけてきた武尊に驚きいたフィルラントは、ぎゃあぎゃあと喚く。
「なんや・・・人か・・・・・・」
「行方不明の人を見つけたんで連れてきましたよ。途中でゴーストに襲われたりして時間かかってしまいましたけど」
 メイベルたちが美術室の中へ入ってきた。
「こっちも連れてきたわよ」
「俺たちは教室で見つけました」
 続けて美羽と陽太たちがやってきた。
「(この状況下・・・・・・生きている見込みは薄いと思ったんですね・・・・・・)」
 アルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)が生存者たちの顔を確認して、ほっと安堵の息をつく。
「天井に書かれている言葉の謎解きに、そのトランプのカードが必要なんだ。貸してくれないか?」
「えぇよ、ほい」
 ルフナがラビアンとジューレが持っているカードを集めてロブに手渡す。
「それではさっきのメモを元に、トランプカードを台座に差し込んでみましょう」
 生徒たちにメモを見せ、その通りに台座へ差し込んでいくが、台座に変化はなかった。
「しかしぃ、“しにん”のきしはぁ・・・・・・」
 エディラントも謎解きに参加しようと、天井に書かれている言葉を読み上げる。
「しにんってナンや!そこは4人や!」
「あ、ごめん。でも、此処まさか“しにんがはち”で8のカードの位置の指定の事じゃないよね?」
 案を思いついたエディラントは北にKのカード、北東にJ、東へ10、南東へ9、南へ8、南西7、西へ6、北西Qの順にカードを差し込む。
「あれー・・・駄目なのかな?」
 しばらく待ってもなにも変化は起きなかった。