イルミンスール魔法学校

リアクション

　他の生徒たちも心配げに集まる中、三池　惟人も駆け寄ってきた。
「どうしたんですか！」
「わからないの」
　と、言いながらとっさの判断で祥子は惟人に見つからないようにロケットを自分のポケットに隠した。
「みんな、わたしのこと、おねがい、わすれないで…」
「何を言っているの！！　真珠、しっかり！」
「さちこさん、ありがとう、みんな、だいすき…」
　その瞬間、まばゆい光が真珠を包んだかと思うと、真珠の姿は光とともに消えてしまったのだ。
「真珠！　真珠！」
　祥子や惟人、生徒達は近辺を探したが、真珠の姿が見つからない。
「なんてこと…私が守るって言ったのに…」
　祥子は自責の念でいっぱいになる。
　その時、自分のポケットの中のロケットがちゃり、と音をたてた。
　それがふと、気になった祥子は、ロケットを開ける。
「…！」
　一瞬何かわからなかったが、ロケットには古い写真で真珠と真珠の父母らしき人物と、そして蒼空学園の制服を着ている黒髪に白い肌、鳶色の瞳の少年が写っている写真が入っていた。
「これって…」
　祥子はそっと後ろを振り返る。
　そこには、他の生徒たちと混じって真珠を探している三池　惟人の姿が目に入った。


☆　　　　☆　　　　☆



…時間は逆戻る。
「これって…」
　勇に円、翡翠に陽太はPCの画像を前にして凍り付いた表情を浮かべていた。
「蒼空学園特別会館を襲った『アッサシーナ・ネラ』と、計算から割り出した体重や体格と一致する人間を絞り込みました。その中でも、一番確率が高いのが、この人です」
　陽太も真剣な顔をしている。
　PCの画面には黒髪に白い肌、鳶色の瞳の三池　惟人のデータが映し出されていた。
　黙り込むみんなを前に、勇が情報収集能力を駆使して手に入れた情報が決定的な証拠となった。
「テロ当日、恋愛相談のため、三池を訪ねた女生徒が部屋にいなかったことを証言してる…」


☆　　　　☆　　　　☆


「ミルザム様、大丈夫ですか？」
　明子や静佳、ショウに助け出されたミルザムは、壇上の近くに座らされていた。一旦、ネラの姿が消えたことに安堵する生徒達。
「ありがとう、みんな…」
「…しかし、これでは卒業式にミルザム様に出て頂くわけにはいかないわね」
　明子のつぶやきにさすがのミルザムも無言だった。
　そしてそこにネラを退治してきた赫夜たちが戻ってくる。
「赫夜さん！」
「あなたが藤野　赫夜さん？　ありがとう、助けていただいて…」
　そこまでミルザムが言った途端、赫夜が凄いスピードでミルザムに向かって駆け出してくる。駆け出しながら、赫夜は光条兵器を取り出した。
「危ない！　ミルザム様！」
　ミルザムの一番近くにいた天城　一輝（あまぎ・いっき）が最前列でハンドガンで、赫夜に攻撃をかけると、赫夜は反射能力の高さを活かして、銃弾を避け、光の剣が左右から伸びている剣をミルザムに振り下ろそうとする。
　さらにそれを一輝が狙い撃つが、赫夜の頬を銃弾がかすめただけで、ミルザムに一気に近づく赫夜。
「…グレッグ、ボア、ゾディス…休憩は終わりだ、行くぞっ…！」
　アシャンテ・グルームエッジ（あしゃんて・ぐるーむえっじ）がパラミタ虎「グレッグ」パラミタ猪「ボア」狼「ゾディス」を使い、赫夜に攻撃を仕掛けると、赫夜はずざざざあっと音を立て、天幕前に退いた。
　ミルザムを抱え逃げ出す明子。
「何をするのですか！」
「…じたばたしない！　貴女の無事が最優先なの！」
「何をする！　赫夜！」
　赫夜を警護していたグレン、ソニア、李　ナタク、そしてラルクに星剣を向ける赫夜。
　その赫夜の体をみるみるうちに体を黒いマントと仮面が被っていく。
「どうして！」
　戸惑うみんなに対して、赫夜は発煙筒を投げつけ、煙幕で自身の姿を被ってしまった。
「ごめんなさい…」
　そのかすかな声だけがみんなの耳に残る。
　煙幕が途切れると、屋上に『アッサシーナ・ネラ』が佇んでいた。
「もしかして…」
　『アッサシーナ・ネラ』は自ら、仮面をはがした。
「赫夜…！」
　騒然とする生徒達。
　そして、赫夜の背後に、口角をあげて薄ら笑いを浮かべる真珠が現れた。

　刹那があまりの事態に「なぜなの！　どうしてなの！　私たち、友達だったじゃない…！！」と涙ながらに叫んだ。
　その刹那の顔を酷く苦しそうな切なげな顔をして見つめていたが、再び、仮面をつけると宣言する。

「私、藤野　赫夜こそが『十二星華『蟹座（セルバトイラ）の赫夜』。そして『黒の暗殺者、アッサシーナ・ネラ』。この星双頭剣、Due spade（デュエ・スパデ）でお命頂戴する、ミルザム殿！」

続く