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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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【海を支配する水竜王】リヴァイアサンを救出せよ

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第2章 極寒の空間

「あぁっ、あんなところにもゴーストが・・・」
 地下3階の保管庫の近くにたどり着いたジョセフは、見張りのゴースト兵を見て、武器を取り戻そうとする力を失いそうになる。
 いっきに地下まで駆け降りたせいで、戦う余力がほとんど残っていないからだ。
「でも・・・ここで諦めて戻ったら、美央に何て言われるか分かりまセーン!」
 ゴースト兵に向かってサンダーブラストを放ち、保管庫の中へ駆け込む。
「これが美央ので、ミーの武器と使い魔たち・・・。あとは3階にいる人のデスネ」
 美央とジョセフが持ってきた物と、仲間たちのも確保し保管庫を出る。
「よくもやりやがったな!」
 怒りまくったゴースト兵がハンドガンで、ジョセフの足を狙う。
「邪魔デースッ」
 兵の顔面に向かって光術を放ち、階段の方へ走る。
「ぐぅっ」
 避けきれず足に銃弾が掠めたが、なんとか耐えながら進む。
 足を引きずりながら階段の近くまで行くと、カツンッコツンッと地下2階から降りてくる靴音が聞こえてくる。
「(せっかく武器を取り戻したというノニ・・・)」
 ジョセフが隠れている柱の陰の近くで、靴音がピタリと止まる。
 見つかってしまうかと思ったその瞬間、地下3階の小部屋から煙が発生した。
 ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が董天君を誘き寄せようと、手頃な石を火打石代わりにして廃材に火をつけたのだ。
 彼女のいるフロアには装置や設備らしきものが見当たらなかったようだ。
「武器なしでは探しづらいですからね・・・」
「だからといって野放しにしておくわけにもいかないからな」
「これで現れてくれればいいけどさ」
 火をつけた廃材の傍には、グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)李 ナタ(り・なた)もいる。
 足跡の主である董天君が煙が流れてくる方へ歩き出す。
 階段側から遠ざかっていくのを確認し、ジョセフはすぐさま地下2階へ向かう。



「地下から煙が流れてくるけど、誰か施設内で暴れているのかな。早く来ないかな白ぼさちゃん」
 まだ地下1階にいるルーセスカ・フォスネリア(るーせすか・ふぉすねりあ)は、レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)を待っている。
「悪いな、待たせたか?」
 牢から捕縛された者たちを助け、3階にいたレイディスがようやくやってきた。
「下の階で誰かが暴れているみたいだから、ゴースト兵が来ないうちに急いで降りよう」
「目的地に着くまで、余計な体力を消耗したくないからな」
 レイディスたちはゴーストどもがやってくる前に、下の階へ降りようと走っていく。



「目の前で風森とティアが、氷陣に巻き込まれるなんて・・・。俺たちのことを助けてくれたんだから、今度はこっちが助けに行かないと!」
 愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)は牢屋に放り込まれていた自分たちを、助けてくれた風森 巽(かぜもり・たつみ)ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)を助けに行こうとする。
「武器を持っていないのだから、ゴーストとなるべく遭遇しないようにしないといけないのだよ」
 階段側へ向かうミサに、何れ 水海(いずれ・みずうみ)が言う。
「2人だけで大丈夫ですか?」
 島村 幸(しまむら・さち)はミサと水海の2人だけで、巽とティアの救助に向かうという彼女たちを心配そうに見る。
「何とかなるって。俺たちのことは気にしないで、早く上の階に行きなよ」
「えぇ・・・くれぐれも無茶だけはしないようにしてくださいね」
 そう言うと幸は仲間と共に、8階を目指して走る。



「(やっと現れたか・・・)」
 ソニアに廃材へ火をつけさせ、グレンは董天君を誘い出した。
 光学迷彩を使い、見つからないよう物陰に隠れる。
「董天君!?チッ、グレンが武器を取り戻しに行っているこんな時に・・・!」
 ナタクはソニアと2人だけしかいない状況に、慌てた表情で言う。
 もちろんこれはそう思わせようという彼らの作戦だ。
「私が時間を稼ぎますからナタクさんは今の内に!」
「なっ!?バカかお前は!」
 無謀にも素手で董天君に向かっていくソニアを見て、驚きの声を上げる。
 ソニアを止めようとするように後を追う。
「へぇー・・・獲物は2匹・・・か?」
 周囲を見回してニヤリと笑うと、董天君は寒氷陣を発動させる。
「(ソニアたちの方を見ている今がチャンスだ!)」
 光学迷彩で姿を隠しているグレンが遠当てで、董天君を狙い吹っ飛ばす。
「野郎・・・」
 槍が雪の上へ転がり落ちてしまい、舌打ちをする。
「行けぇ魔獣ども!」
 魔獣の方に注意が向いている隙にと、相手の手から槍が落ち、すぐさまソニアが拾う。
「ちょっとは考えてるのかぁ?」
 つまらなそうに言うと氷術で氷の鏡を作り、吹雪の中へ隠れる。
「(そいつはダミーだな)」
 グレンは殺気看破で董天君が本物かどうか確認し、徐々に間合いを詰めていく。
「―・・・ちっ」
「さて・・・どっちがタフかな?」
 殴りかかろうとする相手の動きを先の先で読み、背後から董天君を接近し、羽交い絞めにする。
「ちくしょう、離しやがれ!」
「そっちが倒れたらな。(とはいえ俺も、そろそろ体力の限界か・・・)」
 SPを全て使いきるまで耐えてやろうと、捕まえたまま雷術を放ち、ソニアにSPリチャージで回復してもらい術を発動させる。
「ハァ・・・お前とはちゃんとした形で抱きたかったな・・・」
 気絶している董天君を正面から、抱き締めるかのように動きを封じる。
「ナタクさん!手加減はしませんから覚悟してください!」
 ソニアは拾い上げた槍を握り、轟雷閃の雷の気を纏った刃で、ナタクごと貫こうとする。
「誰を・・・・・・誰がだ?」
「へっ!?」
 気絶していたと思っていた董天君の声を聞き、驚きのあまりナタクは目を丸くした。
「ぬるい雷術の4・5発程度でやられるわけないだろうが!」
 ナタクの足を思いっきり踏みつけ、さらに足のすねを蹴りつける。
「イッてぇぇええーーっ!!」
 強烈な痛みのあまり、思わず手を離してしまう。
「おぁああっ」
 ナタクは雪の上へ転がり、迫り来るソニアの一撃を間髪避ける。
「あたしの得物を勝手に使ってんじゃねぇえよ」
 ソニアの刃を避けた董天君は、彼女の襟首と腕を掴み雪の上へ放り投げる。
「きゃぁああ!」
 投げられた衝撃で、奪った槍を落としてしまう。
「返してもらうぜ。そんで・・・あたしより弱い男には興味はない!」
 董天君は槍を拾い、槍の柄でナタクの脇腹を叩きつけ、雪山の方へ吹っ飛ばす。
「次はその小娘だな」
 今度は倒れているソニアへ目掛けて襲い掛かる。
 ドスッ。
 ポタタッと雪の上へ真っ赤な血が流れ落ちる。
「―・・・ぅっ、く・・・」
 グレンが盾となりソニアを守った。
「フンッ、終わりだな」
 冷酷な表情で董天君が、雪の上に膝をつくグレンを見下ろす。
「俺たちの作戦が失敗してしまうとは・・・」
 自分たちで考えた作戦が失敗してしまいグレンは悔しげに言う。
「作戦?ここへ閉じ込める前から失敗していたぜ」
「何だと?」
 相手の言葉に驚愕の声を上げる。
「姿は隠せても、気配は隠せなかったようだからな。しかも・・・氷の鏡にお前の姿が丸見えだぜ?それだけじゃない・・・足跡を見れば、てめぇの位置が分かるしな」
「足跡・・・吹雪で消えているかと思ったが・・・」
「一瞬で足跡が消えちまうわけじゃねぇからな」
「迂闊だった・・・、もっと考えておくべきだったか」
「後悔してもすでに遅いけどな。こいつらを牢へ放り投げろ!」
「また牢屋行きか・・・、くっ・・・」
 悔しがるグレンたちを捕縛し、ゴースト兵に命令して牢へ放り込ませた。



「はぁ・・・・・・美央、武器を持って来たデスヨ」
 3階の資材置き場へようやく戻って来たジョセフが、廃材置き場のドアをノックする。
「やっと戻って来ましたか」
 待ちくたびれていた美央がドアを開けて武器を受け取る。
「これが私の武器ね」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)はブライトグラディウスを受け取った。
「私の得物は・・・これだな」
 高周波ブレードを手に取り、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)は自分のかどうか確認する。
「持ってきてくれてありがとうな!」
 ジョセフに礼を言うとミューレリアは、廃材置き場から出て行く。
「それじゃあ私もここから出るわね。武器持ってきてくれてありがとう」
 アリアもジョセフに軽く礼を言うと、ドアを開けて通路へ出る。
 奪い返した得物を渡したジョセフは疲れきった様子でぐったりと倒れた。
「武器を持ってくる途中、董天君らしきやつがいましたヨ〜。けど靴音だけだから、はっきりとは分かりまセーン」
「では美央は隠れていてください」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)に頷いた美央は、廃材の中に埋もれて隠れる。
「まだ他の階にいる生徒たちがいるから、崩壊させないように気をつけないと」
 六連ミサイルポッドで資材を破壊し、董天君をおびき出そうとリア・リム(りあ・りむ)がミサイルを撃つ。
 爆破された資材が燃え、フロア内に黒い煙が充満する。
「これくらいやれば来るはずなのだよ」
 SPリチャージとSPルージュで回復しておく。
「リア、こちらへ来てください」
 ルイに呼ばれたリムはミサイルポッドを床へ置き駆け寄る。
「美央に手を出すとは、いい度胸してるわね・・・。董天君、覚悟してもらうわよ!」
 ブラックコートを纏い、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)は小さく呟く。
「我が娘の美央さんや、沢山の生徒たちを苦しめたことを後悔させてやりましょう!」
 拳をぎゅっと握り締め、ルイは董天君やったことを許せないと言い放つ。
「へぇー、誰が・・・後悔するんだって?」
「(しまった・・・!)」
 ミサイルの爆音のせいで、忍び寄る董天君の足音に気づかなかったのだ。
 寒氷陣を発動させ、ルイたちを陣内に閉じ込める。
「現れましたね!」
 すぐさまルイはパワーブレスを仲間と自分に術をかけ、SPリチャージで補給する。
「ダディの邪魔はさせないのだよっ」
 リアは弾幕援護で弾幕を張り、ルイが術を使っている間、相手の攻撃を防ごうとする。
「よし今のうちにっ」
 護国の聖域の術を唯乃は、自分と仲間たちにかける。
 弾幕が消えると唯乃とエラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)の姿はそこにない。
 唯乃は気配を殺して動こうと移動し、エラノールの方は遠距離から射撃しようと離れたのだ。
「2匹いないようだが。ちょっと遊んでやるか」
 すでに姿のない2人から仕留めようと、董天君は周囲を見回す。
「唯乃のお友達を傷つける人は許さないのです!」
 激怒したエラノールは、遠距離から狙い撃ってやろうと、ライトニングブラストで電気を作り出し、ヘキサポッドを生成した。
「皆の怒りをその身に受けるがいいです!」
 ライトニングウエポンで星輝銃に付与し、雪の上を歩く董天君に銃口を向ける。
「甘いなっ」
 董天君は雪山に飛び乗り、襲撃をかわす。
「そう簡単に倒されるわけにはいかないのですっ」
 接近させまいとエラノールは銃口から電撃を放つ。
「はーっははは!その程度かぁ?」
 雪山の上を滑り降りながら避け、董天君はエラノールとの間合いを詰める。
「命中させられない・・・このままじゃ・・・」
 迫り来る槍の刃に餌食にされてしまうかもしれないと、悔しそうにエラノールは歯をギリリッと噛み締める。
「そこで目を閉じてしまったら、諦めたことになってしまうのだよ!」
 駆けつけたリアが目晦まし用の弾幕を張り、彼女の手を握って走る。
「逃げんじゃねぇえ」
 獲物たちを逃がしてたまるかと董天君は、アルティマ・トゥーレの冷気を槍の刃から放つ。
「これ以上、ワタシの仲間たちを傷つけさせません!」
「うっ!」
 ルイに光術を放たれ、思わず目を閉じてしまう。
「ちっ、逃げられたか・・・」
「(こっちに気づいていないようね)」
 苛立つ董天君を見つけた唯乃は襲撃の隙を窺う。
 隠れている雪の中から唯乃は飛び出ると、光術を董天君に向かって放ち、間合いを詰める。
 鬼眼で相手を怯ませようと睨む。
「そんなんで、このあたしが怯むと思っているのかぁ?失せろ、小娘!」
「くっ、無理か。それなら・・・!」
 光術を使い目晦ましをしてやろうとするが、その手を掴まれてしまう。
「何度もそんな手が通用すると思っているのかよ。おらぁああーーっ!!」
 唯乃の手を掴んだ董天君は力任せに彼女を振り回し、地面へ投げ飛ばす。
「あぁああっ!」
 投げ飛ばされた唯乃は、雪の上へ叩きつけられてしまう。
「小娘・・・このあたしを殺す気で挑んできたなら、てめぇもそれ相応の覚悟があるんだろうな?」
「うっ・・・・・・負けない。あなたなんかに負けるわけにはいかないのよ!」
 負けるもんかと立ち上がり、光術を放ち薙刀を横薙ぎに振るう。
 ガキィーンッ。
 槍の柄で斬撃を防がれ、ぶつかり合う金属音が響く。
「これで終いか?同じような手は何度も通用しないといっただろう」
「いえ、まだよ!」
 つまらなそうにため息をつく董天君に、唯乃が蹴りをくらわそうとする。
「これで・・・・・・終いか?」
「―・・・くぅっ」
 蹴りを片手でガードされてしまい、彼女の策はもう尽きてしまった。
「援護しようにも、唯乃とあいつの距離が近すぎる」
 リアは機関銃で援護しようとするが、仲間と敵との距離が近すぎるため、銃撃を躊躇う。
「それで終いなら今度はこっちの番だな」
 董天君は唯乃の足を蹴り、地面に倒れた彼女の腹部を殴る。
「唯乃に何をするのですっ」
 エラノールは銃を構え、唯乃を守ろうと銃口から帯電させた銃弾を放つ。
「てめぇも同じような目に遭いたいようだな」
 銃弾をかわした董天君は、エラノールの頭上に氷術で作り出したつららを降らせる。
「きゃぁああーっ」
 アイシクルリングの守りでも防ぎきれず、身体に傷を負ってしまう。
「―・・・よっ、よくも唯乃たちを!」
「よしなさい」
 無理に戦うことが目的ではないと、ルイがリアを止める。
「もう終わりか、つまらねぇな」
 陣を解いた董天君を見てルイはニヤリと笑う。
 彼らはただの囮なのだ。
「お久しぶりです。今度はちゃんと当てますよ」
 リアが破壊した資材の物陰に隠れていた美央が現れ、忘却の槍で防壁も貫通するランスバレストの一撃を、憎き敵へ目掛けて繰り出す。
「―・・・くっ、避けるとは・・・」
 美央の一撃は董天君の腕を掠めた程度だった。
「気配を隠すなら、それに合う術の1つでも身につけておくんだな」
「かわされたからといって、まだ負けたわけじゃありません」
 忘却の槍を構え直した美央は相手を睨みつける。
「死者を冒涜し、友達を傷つけ、非道な実験を繰り返した罪・・・。そしてなにより、私を馬鹿にした罪!」
 タワーシールドで相手の刃をガードし、今度こそ仕留めてやろうと槍の切っ先に殺意を込め、ターゲットの心臓を狙う。
 ポタタッと真っ赤な血が床へこぼれ落ちる。
「ふぅ、マジで殺しにかかってくるとはな」
 槍の刃が刺さる寸前、董天君は素手で止められてしまった。
「殺す気で挑んできたなら、・・・・・・分かっているよな?」
「ぅっ・・・!」
 美央は歯を噛み締め、悲鳴を上げないよう堪える。
 得物を持つ腕を突き刺され、手から滑り落としてしまう。
「その辺のピーピー喚く女みたいに、悲鳴を上げないだけマシだな。この前よりちょっとはマシな戦法を考えてきたようだし?」
「当たり前です・・・。みっともなく悲鳴を上げてしまえば、あなたにゲラゲラ笑われるだけですからね」
「フンッ、そうかよ。こいつらを全員、牢へ連れていけ!」
 董天君は無線機でゴースト兵を呼び、美央たちを牢へ放り込ませた。
「オゥ、また牢屋デスカ〜」
 武器を取り戻して休んでいたジョセフも、彼女たちと同じく簀巻きにされてしまった。