リアクション
第2章 存亡 前回から戦いに登場した砂漠の獰猛な獣人兵団。 彼らが来たもとの国、ドストーワ。 砂漠の西寄り。黒羊郷はその北東に位置することになる。 序章から砂漠を旅し、オアシスの町(そこで戦いに向かう獣人たちを見たことになる)にて装備と食料品を整えると、そのドストーワへ向け出発した。 レジーヌ・ベルナディス(れじーぬ・べるなでぃす)と、パートナーのエリーズ・バスティード(えりーず・ばすてぃーど)である。勿論、必死で戦っている教導団の仲間のためにできることを、と思っての旅であった。敵列強国の情報を入手し弱点を探るか、それとも彼女らだけでも教導団に有利な影響を与えられれば…… 町を出ると、また強く砂が吹き付けてくる。 「レジーヌと旅ができて楽しいな」 だからエリーズは、そんな砂まじりの風も、平気だ。 でも、姉のように慕うレジーヌにもう怪我なんかさせない。と強く思う。 「ええ、ワタシもですよ」 「ほんとっ?」 レジーヌを気遣うエリーズ。レジーヌにはこの砂漠の風はつらくないだろうか。フードの下に、笑顔が覗いている。今は大丈夫なようだ。 水もたくさん持ったし……休養もとった。 「はっ」 上空を、風に吹かれて、デザートフライの影が飛んでくる。群れからはぐれたものか。一匹だけ、こちらに関心もなく高い空を……もう、行ってしまった。 柄にかけていた手を、戻す。 「あ、また何か」 今度は、違う形の影だ。さきほどのはぐれ蝿の飛んでいった方向から、レジーヌらと同じ進行方向に向けて飛んでいく。砂塵もきつくなってきており、はっきりと形は見えないが…… 「ね、ねこ?」 2-01 国境北における戦と策謀 囚われとなってしまった、龍雷連隊のナイン・カロッサ(ないん・かろっさ)とロザリオ・パーシー(ろざりお・ぱーしー)。 その自分たちを捕らえた黒羊軍(ひろしの王羊隊300)と、砂漠を来た獣人(ドストーワ中軍300)の一隊との間で、どうやらもめごとが起こっているようだ。 「オマエラ、黒羊軍……砂漠ノ小国ヲ攻メテイル、ソウカ。ソレハイイ。 ダガオイ、我々ドストーワノ先鋒ガ、ならず者ノ裏切リデ、半壊シタト聞イタゾ!! 黒羊、ドウナッテル!?」 「何ですと。そのような情報が何処から…… そちらの指揮官殿は? 私は、五月蝿 ひろし(さつきばえ・ひろし)と申す」 「指揮官ハ後軍ダ(※実は前回、離れさせられたのち桐生円に討たれていることを彼らは知らない)。 我等、急ヲ聞キ駆ケツケタノダ!」 「それは、残念ながら虚報でしょうな」 「ナ、何?!」 ひろしは、どういうことだ……とざわつき相談を始める獣人らに、甘利 砲煙(あまり・ほうえん)をして「根回し」(スキル使用)を行い、指揮官不在の彼らの心理を利用し主攻派と慎重派に意見が分かれるよう仕向けた。 「さて私どもひろしの王羊隊は一時撤退します。 私らは黒羊軍の一隊に過ぎずあなた方獣人兵の皆さんの指揮権があるわけでもございませんので……採用するかどうかは皆さんのご判断になりますが、こちらさきの戦闘の中で教導団員を捕らえています」 「本当カ」 「ええ。これをお預けしますので、意図的にこれを逃げさせ追尾、相手の救出部隊と一当てして武勲を稼いだあと速やかに離脱……というのはいかがでしょう?」 主攻派はこれを採用し手柄を稼ぎたいと言い、慎重派は、ともあれグレタナシァ入りすべきとなった。 「捕虜ハドレダネ?」 囚われの二人は…… 「このまま黙って敵に捕まっているわけにはいかないのよ。ロザリオさん?」 「準備OKにゃ」 ロザリオの場合、着ぐるみだから、どうしても内の本人と外の殻には甘くなる……そこでチャックを開けてナインのロープを断ち切った。「ありがとう。中身は……速くて見えなかったわよ」 ひろしと獣人が来た。 「アッッ!」 ナインとロザリオは、二、三人の小国の捕虜をロープから抜け出させたところであった。 ナインは、襲いかかってきた獣人にキックを食らわす。 「ウッ急所……」 「ちょっといきなりなんて、ないんじゃない?」 「捕虜ガ逃ゲルゾ!」 主攻派100程はこれを追った。 しかし、ナインらが走った先は、龍雷連隊のいる岩城ではなく、助け出した数人の共らの砂漠の小国クトレアの方角であった。 「まぁ、よいか。 では、私らはグレタナシァに入りましょう。と、ザビエルは例のことを頼みますぞ?」 ひろし配下のフランシスコ・ザビエル(ふらんしすこ・ざびえる)は、味方が安全に撤退するため、 「このようなことはしたくはないが、味方が安全に逃げる為には仕方あるまい」 水を確保した後、撤退するキャンプの井戸に、毒(テロルチョコ)を…… 「なぜ毒物に精通しておるか、だと? 前世で色々あってな……」 ザビエルの前世に? いや、この人物の正体は……? 付き従うティトー・リヴィオ(てぃとー・りう゛ぃお)は、ザビエルの流し込んだ毒を罠化(「トラッパー」使用)させ、 「リーダーたるもの、非道はできるだけ避けねばならないわ。 でも、必要なことであればためらってはいけないのよ」と訓示した。 グレタナシァへの帰途、ドストーワ獣人兵団の後軍が壊滅した……との情報が入る。兵は動揺した。 「マ、マタ虚報デハナイノカ……?!」 しかし、傷付いた兵は語る。吸血鬼の軍に攻められたのだと。そもそも、先ほどの虚報が、中軍と後軍を引き離すための吸血鬼勢の罠だったのだ。彼らの将ジャールバッフもこの一戦で討たれてしまった。兵は唖然とした。 「……。策に嵌りましたな。 厳しいようですが、皆さんはこのままでは処罰を免れないでしょうな。 王羊隊の傘下に入れば、黒羊軍として庇護できるでしょうが」 ひろしはやわらかに提案をしたが、目は鋭く光っていた。 ひろしは残った獣人兵200を引きつれ、グレタナシァを目指した。(王羊隊500(もと浪人兵(Lv2-3):200/獣人兵(Lv7-8):200/捕虜100)) さて、グレタナシァには黒羊軍指揮官のラッテンハッハ(らってんはっは)が国境での敗残兵200と撤退していることになるのだが。 それに、ここにもまた我らが教導団の強者がすでに潜みこんでいる…… * ひとまずは無事に撤退した黒羊軍指揮官に、酒をつぐ宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)。もっとも今は、行商人の姿であるが。 「何? グレタナシァ兵を鍛えるためにも雇われているのか。 貴殿、なかなか腕が立つのだな」 「いえ……私はたぶん、それほどでも?」微笑してそう言ってみせる。「私の供の者が」 「そうであるか。 そうだな……今度戦が起これば、グレタナシァにも兵を出してもらわねばならなくなったことだ。ちょうどいい。 ハハハ。今夜は、飲もうぞ。共に、教導団を倒そうではないか?」 指揮官は腰に手を回そうとしてきたが、宇都宮はさっと交わした。飲みニケーション、でもお触りはなしで。とりあえず。 ラッテンハッハ、か。 どことなく青ざめた顔のやせた男だった。狡賢そうな目をしているが、腕っぷしの方は弱そうである。戦も……この戦で、兵であったならず者を全て失い、獣人兵もことごとく捕虜にされている。自分の兵だけはほぼ失わずに逃げおおせてきた。 その戦いの間のこと…… 「えっ? 私たちグレタナシァに売られ……もとい雇われるんですか?」 セリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)は言う。 高官に接触した宇都宮は、今回更に、自分たちを商品として売り込んだのだ。 前回時に、教導団の情報を差し出した彼女らであったが、今回それを更に押し出しこれを購入できれば、教導団とのパイプができる、と触れ込んだのである。 「とくに今、三日月湖に滞在している第四師団とは、師団長ともそれなりのつながりがあります」 同じ宗教に基づく他の黒羊側の同盟列強国(ドストーワ、ブトレバ等)と違い、グレタナシァは兵力・国力差から現在の黒羊郷の同盟国になっているのであった。 グレタナシァが教導団側に傾くなら、何かの際に兵を鍛えておけば、黒羊軍やドストーワの兵も追い出せる……そのために、訓練も買って出た。グレタナシァにはこれといった指揮官もおらず、兵は長城を警備してきた程度の兵である。 (思い切れば、撤退してきたラッテンハッハと黒羊の兵らをそのまま締め出したままにしてしまう方法もあったかも知れない。無論、その際に王や家臣を上手く(もしくは強引な手段で)説得できるかあるいは踏み込んだ行動が必要であったろうし、グレタナシァの兵が黒羊兵と渡り合えるくらいに精強であることも条件の一つであったかもしれないが。) こうして、セリエや湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)が訓練にあたることになったのであった。 「やっぱりこういう場所だと剣や槍かなー?」 グレタナシァ兵の装備には銃器はなかった。基本的にこの辺境の国々は、そのようである。 「……ふむ。祥子と契約してから、銃器メインの教練ばかり受けてきたからな。 こうして剣槍を用いた錬兵を行うのは本当に久しぶりだ。徹底的に鍛えるぞ!」(グレタナシァ兵500(Lv1→3))*セリエとランスロットが錬兵。 「ところで……」 「ああ。あれだろ。心配なわけだが。ヤリ殺さんか」 「ヤリころ……す、……ど、どんなふうになにをヤったらそ、そんな」セリエは顔を赤らめた。 同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)である。 静かは、グレタナシァの王に気に入られていた。王は、変態のようであった。 その夜から(スキル「誘惑」使用)、"手コキ足コキ前立腺マッサージとか胸とか前とか後とか必要とあらば踏んだり罵ったり"彼を快楽の虜とすべくその全てを行い、ヒール&SPルージュで回復しては枯れ果てるまで搾り取ったのであった。 (*何か有事の際に、王の決定(グレタナシァの決定)を左右できるようになりました。) |
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