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リアクション
〜イベントは準備から〜
百合園の水着を着たレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)は、相変わらず眠たそうにあくびを漏らしながら、
『餌を探すところから勝負は始まっている! フィッシング大会!!(釣った魚は夕食に)』と大きく書かれた横断幕は、恐らく運営委員会が持ってきたのだろう。
文字を囲むような形で小さな模様が細かく描かれており、一朝一夕で出来たものではないのだと彼女にも理解できた。
「とりあえず、ロープがあればいいからえさ探しの時間はお昼寝しよ……ふぁあああ……」
とはいえ、理解できただけで、あくまでもその苦労に対する感情やらは彼女にはわかないようだった。アンドリュー・カー(あんどりゅー・かー)はそれに気がついたらしく、苦笑しながらその細やかな模様を書いた人間に心の中で「よくやるなぁ」と褒め言葉を投げかけた。
適当に見つけた木片をナイフで手際よく削ると、小魚によく似た形になる。
「よし、これでいいかな」
「わぁっ……凄いわね」
白地にカラフルなドット柄のビキニを着たフィオナ・クロスフィールド(ふぃおな・くろすふぃーるど)は、出来上がった小魚に驚きの声を上げる。オレンジのビキニ姿のエステル・ブラッドリー(えすてる・ぶらっどりー)は、マネをして作ってみるが、アンドリュー・カーほど精密な小魚にはならなかった。
「これを使えばいいよ。僕はもう一個作るから」
「え、いいの!? ありがとう〜!」
「確か、ルアーってふわふわしたものがついてることもあるわよね? こういうのつけてもいいのかしら?」
そういって、フィオナ・クロスフィールドは手近な草をちぎる。猫じゃらしにもにているが、もっと羽毛のような柔らかなそれは、たしかに毛ばりっぽく使えないこともないだろう。そう悟ったアンドリュー・カーは頷いてそれを受け取り、手製のルアーに取り付ける。
なかなかの出来栄えに、彼は柔らかく微笑んだ。
「よし、これで準備はOKかな」
「パラミタミツバチの巣を探しに行くわよ!」
そんなアンドリュー・カーたちのそばで、スクール水着姿の芦原 郁乃(あはら・いくの)が気合十分に森に向かおうとすると、おそろいのスクール水着姿の十束 千種(とくさ・ちぐさ)に止められてしまう。
「あの、2人だけだと危険だと思うんですけれども?」
「や、ほら。大型の獣が襲った直後の巣なら大丈夫なんじゃないかなぁ。きっとこれだけ大きな森ならどこかに」
「一体探すのに何時間かける気ですか」
そんな漫才を繰り返していると、タク・アンとナラ・ヅーケが通りかかった。その後ろには、宇都宮 祥子と姫宮 和希、ガイウス・バーンハートが立っていた。
「パラミタバチなら、この近くに巣がある」
「え! 本当!?」
「私たちも、今釣り用の餌を探すために彼らに協力してもらってたの。一緒に行く?」
「いくいく! やったね千種〜」
満面の笑みで喜ぶパートナーに、十束 千種は赤い髪を耳にかけながら微笑んだ。姫宮 和希は先陣を切って森の中へ入っていく。
2人で森に入ろうとしていたわりに、芦原 郁乃は怯えた様子で十束 千種の後ろに隠れながら森に足を踏み入れていた。十束 千種は辺りを見回しながら、パートナーを護ることに専念していた。
時折襲い掛かってくる巨大な蛇やら、蜘蛛やらは姫宮 和希の拳に沈められていく。宇都宮 祥子もモノケロスを投げつけ、離れた獣達へ仕掛けていく。無論、それらで食べられそうなものを回収することも忘れなかった。
ようやく、破壊された蜂の巣を見つけると、芦原 郁乃はすぐさま飛びつこうとする。
「危ナい!」
タク・アンが駆け出し、芦原 郁乃を抱きとめる。彼女の鼻先に、まだ生き残っているグロテスクな蜂が今にも攻撃を仕掛けようとしていた。ナラ・ヅーケがすぐにその蜂を叩き落して、難を逃れることができた。
「あ、ありがとうございました」
「すみません」
「怪我がなくクてよかッた」
柔らかく微笑んだ蛮族は、彼女の代わりに蜂の巣に手を入れた。そこから何匹かの蜂の子を見つけると、手ごろな瓶の中に放り込んで芦原 郁乃に差し出した。にっこり笑ったまま、受け取らない彼女の変わりに、十束 千種が瓶を受け取る。
「釣リ、うまクいくよう、祈ってマす」
ナラ・ヅーケが黒髪をたなびかせて微笑むと、蛮族の二人は森の奥に進むようだった。釣り競技に参加する面々は一旦岩場へと戻るために引き返すことになった。
「よし、できた!」
手製のルアーを作っていたのは、雨月 晴人(うづき・はると)だった。初心者向けでよく釣れると評判のスピナーベイトは、一見すると小魚には到底見えないが、水中で魚達はこれを小魚の群れと勘違いする仕組みになっている。
森に入ってすぐにみつかった動物の骨や、派手な色の草を使って作り上げたルアーは、調べてきた本に出てきたものによく似ている。
紺色のサーフパンツ姿の少年は、自慢げに隣にいるアンジェラ・クラウディ(あんじぇら・くらうでぃ)に見せびらかした。真っ赤なビキニ姿の美少女は、小首をかしげて「うん。すごい」と呟いた。
「ほら、ここなんてあそこで見つけた花を使ったんだぜ」
「なんだかかわいそう」
小さく呟いたその言葉に、雨月 晴人は首をかしげた。その様子に、アンジェラ・クラウディは繰り返した。
「だって、ちぎってこうしちゃったの、かわいそう」
少しだけ頬を膨らませる彼女に、残った花(原形をとどめているもの)を頭に差した。赤い髪の色によく合う黄色い花だ。
「まぁ、こうしたほうがお花も喜ぶかもな」
「……うん!」
「なんか、青春しとるのぅ」
「いいから早くおろせよ!!」
肩車をしながら雨月 晴人たちを眺めていたロランアルト・カリエド(ろらんあると・かりえど)が呆然と呟くと、上にいるアルフ・グラディオス(あるふ・ぐらでぃおす)に頭を叩かれる。
星条旗を模したような掘るターネックのビキニに、デニムのショートパンツをはいた飛鳥 桜(あすか・さくら)は、少しその格好を恥ずかしがりながら、肩車組みがようやく手に入れたトマトを受け取る。
「もう、本当にトマトなんかで釣れるかなぁ」
「トマトは万能なんやで!!?」
「いま、疑問符はいったけど……」
ため息混じりに赤い三角ビキニ姿のジェミニ・レナード(じぇみに・れなーど)が、携帯でなにやら写真を撮りながら突っ込みを入れた。写真のタイトルは『激写! ロラン×アルフ』と丁寧に記入した。胸元のオレンジの花といっしょに豊かな胸を揺らしながら、ジェミニ・レナードはついでといわんばかりに高いところに実っている野生のトマトらしいものを撮影した。とりあえず得然様に一個持っていくが、後ほど食材班辺りに「こんなのがはえてたよー」、と知らせるためにだ。
「あ、晩御飯に使えたらええねんけどなぁ。とりあえずは餌の分だけでええか?」
収穫に必要な肩車の相方に降りられてしまったため、ロランアルト・カリエドは唇を尖らせながら真っ赤に熟したトマトを見上げる。一つつまみ食いように手に入れたトマトは、見た目どおりの味だった。地上のトマトの種がここで野生化したのではないかと、通りかかった誰かが言っていた。
曖浜 瑠樹は昨年作ったティピー型テントについて手伝いのメンバーと語らっていると、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が四方型のテントの設計図を板切れに描いて見せた。そこまで大きくはないが、昨年と同じよりは変化があるほうが楽しそうだと、誰かが言った。
「いいな、男子と女子でテントの形を変えてみるか」
「陽太郎、あたしたちの愛の巣にぴったりなデザインね?」
「や、男子女子別のテントだから」
一見するとワンピースの水着を纏ったイブ・チェンバース(いぶ・ちぇんばーす)の言葉に、蒼空学園の男子水着を履いた楠見 陽太郎(くすみ・ようたろう)はため息をつきながら言葉を返した。
イブ・チェンバースの真っ白な水着はその褐色の肌に映えていたが、ワンピースの水着がいろんなきわどいところに切れ込みが入っており、その肌をさらけ出しているデザインになっているのを、楠見 陽太郎は懸命に意識しないように勤めていた。
「もぅ、せっかくこの表札だって作ったのに」
「そんなのダメに決まって……!」
相合傘が描かれた表札には、イブ・チェンバースと楠見 陽太郎の名前が記されていた。突っ込みを入れたパートナーに向かい、魔女は自慢の豊かな胸に挟みながら見せ付けて、楠見 陽太郎の鼻は決壊した。
「ど、どうした!!?」
「たいへんだ!! 救護班! 救護班のところへ!!」
一生懸命鼻を自分で押さえようとしていたのだが、その手ごとイブ・チェンバースの柔らかなふくらみでつつまれ、決壊した血液は救護班のところにたどり着いてなお流れ続けていた。
それを横目に、昨年も使ったであろうテントの柱に使えそうな大きな流木を抱えていたのは、赤羽 美央(あかばね・みお)だった。その背中には、ヤマネの獣人エルム・チノミシル(えるむ・ちのみしる)がくっつくように負ぶさっていた。
「なんだか大変そう」
「みお姉ー。早く運んでおやつにしよーよ」
「設営が終わるまでおやつはありません」
イルミンスールの水着がよく似合う二人は、まさしく中のよい兄弟に見えた。赤羽 美央の白いロングウェーブの髪は、今は邪魔にならないよう簡単な髪留めでくるんとまとめてある。両腕には女性が持つにはいささか大きすぎる流木だが、彼女は難なく持ち上げていた。
「おまたせしましたー」
「あ、ありがとうございます」
湯上 凶司はようやく男子の一つ目の土台というか、寝床になりそうなだけ、葉を敷き詰めて終えていた。続々と集まってくる大型植物の葉っぱの山に、本人はうんざりしたような顔をしている。おそろいのマイクロビキニを着ているヴァルキリーさん姉妹のうち二人、エクス・ネフィリムとディミーア・ネフィリムはてきぱきと葉を敷き詰めている。作業の一つ一つを行うたびに、彼女たちのビキニが妖しい色気を振りまいていく。
それを尻目に、次の作業のお願いをしようと、湯上 凶司は口を開いた。
「それじゃ、次は……」
「凶司、いつまで一つ目の作業をしているの?」
「ボクらもう敷き終わったよー。女の子用のところ行ってくるから、ここよろしくね?」
「あ、ああ……」
「え、えと……柱はこれで終わりだと思うので、その、私も女子テントのほう手伝ってきますね」
赤羽 美央はビキニ二人組みの後を追いかけるため駆け出していった。その背中に背負われているエルム・チノミシルは「がんばれー」と少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら応援の言葉を残していった。
「お、おかしい! なんでこのボクがこんなことをしているんだ!!」
「まぁ、とりあえずもう少しだからがんばろうな」
テント用の骨組みを集めてきた緋桜 ケイが、その哀しげな叫びに返事を返してやると、湯上 凶司は少し涙ぐみながら小さく頷いた。
その頃悠久ノ カナタは一足先にキャンプファイヤーのやぐらを組むため、北側の海岸に来ていた。競技はほとんど南側で行われるので、邪魔にならないだろうという判断だ。
薪は魔法で少しずつ積み上げ、火村 加夜はその横で氷術で作ってもらった氷製の小さなプールに、スイカをいくつも浮かべている。
「今から冷やしておけば、夕方までにはキンキンに冷えてますね」
「お二人ともー!」
片倉 いつきが水着姿で駆け込んでくると、その腕には色とりどりの果物が抱えられていた。見たことのないものが多いから、恐らくはキージャ族の村から持ってきてくれたのだろう。
「こちらも、冷やしておくとおいしいそうですよ!」
「ありがとうございます、いつきさん」
「あと、頼まれていた例の準備も、ダッティーが用意してくれました」
お下げを揺らしながら、片倉 いつきがウィンクをすると、火村 加夜はぱあっと顔を明るくした。悠久ノ カナタも魔法を使いながらそれを聞いて微笑んでいた。
影野 陽太とアルメリア・アーミテージは釣り準備のため、人魚のエイリと岩場で打ち合わせをしていた。
「沖合いでつりたい方には、この小船を使ってもらう形でいいですか?」
『ええ。そのほうが私たちも見守れるし……よく釣れるスポットに連れて行けるわ』
「この岩場のほうが確かにお魚いっぱいいるみたいね……沖合いに出ると、大物がいるとかかしら?」
エイリは儚げな外見に反して元気よく首を縦に振った。その様子がかわいらしかったのか、アルメリア・アーミテージは思わず人魚に抱きついた。
『え、ど、どうしたんですか?』
「ううん。いいのよ。なんだか癒されちゃったの」
「ええと、僕お邪魔なら他のとこ行きましょか?」
「あなたがいなくなったら、私運営そっちのけでいくとこまでいっちゃうわよ?」
その表情があまりにも真剣だったので、影野 陽太は自分の使命を全うしようと改めて決意した。そうこうしているうちに、他の人魚達も岩場に集まってきていた。
「あ、みなさん」
『日時計のための軽石は、競技前に持っていけば平気かしら?』
「はい。よろしくお願いします」
『色もつけてあるから、すぐに使えると思うわ』
それだけ告げると、人魚達はすぐさまその波の中に姿を消していった。エイリがそれを見送ってから口笛を吹くと、波が大きく盛り上がって、日に照らされて輝く巨大くらげが姿を現した。
『この子も、釣りに参加したいそうです』
「え、大丈夫なんですか?」
『あくまでも競技だと言う事はこの子も理解してるので、遊ぶつもりで参加したいみたいです。どうでしょう?』
「なら、このくらげを釣り上げたら優勝、って言うのはどうかしら?」
アルメリア・アーミテージの言葉に、影野 陽太は目を見開いて笑った。
『あそこにあるのが、私たちのつかっている日時計がある場所よ。今は海上からでもわかりやすいように、旗つきの浮きを目印にしてあるの』
イルミンスールの水着を着ている五月葉 終夏(さつきば・おりが)とニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)に説明していた人魚は、救護テントからさらに南東の方角を指差していた。釣りの競技に影響がないくらいにかなりは慣れた場所にあるみたいだ。
「あそこまでは、船で行くのか?」
『はい。競技自体は、私たちの魔法でこんな風に映像を出します』
大人びた人魚が聞きなれない言葉で呪文を唱えると、大きな泡が作られ、その中に魚達の群れが泳いでいるのが見えた。
「泡のテレビか……きれいな魔法だね。私にも使えるかな?」
『私たちの言葉が特殊なのと、水に近しい種族じゃないと恐らく使うことが難しいかもしれません』
少し残念そうに呟いた人魚に、五月葉 終夏は満面の笑みで返した。
「そっか。でも本当にキレイな魔法! いいなぁ」
『よければ、少し下見してきますか? どんな感じで見られるか』
「え! いいの?」
『競技が始まったら、見ている余裕なんてないかもしれませんよ』
「あ! それなら私も見たいです!」
そこへ駆け込んできたのはフリルがいっぱい使われた水着を着ているソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と、ちゃんとイルミンスールの水着を着ている白熊のゆる族、雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)だった。ソア・ウェンボリスの頭の上には、使い魔の梟がおとなしく座っていた。
「あらかじめ見られるなら、攻略もしやすいだろうしな」
「俺も一緒に見に行っていいかな?」
水着姿のエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)と、メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)も後から現れた。人魚は元気よく頷くと、浜から6人を導こうと、一足先に旗のほうへと見えるように水面をはねて泳いでいった。
「さ、皆さんも行きましょ……って、ええええええ!!!?」
ソア・ウェンボリスは悲鳴に近い声を上げていた。
それもそのはず、6人のうち2人が見事におぼれていたのだ。まだ、腰くらいの高さしか浸かっていないにもかかわらず。大慌てで五月葉 終夏をニコラ・フラメルが抱えあげ、エース・ラグランツを雪国 ベアが引っ張りあげる。メシエ・ヒューベリアルは口元に手を当てながら、優雅とは言いがたい様子で笑いを堪えていた。
「終夏さん! エースさん! 大丈夫ですか!?」
「「だ、だ、大丈夫……じゃない……」」
「てか! 泳げないなら何でこの競技にした!!」
ニコラ・フラメルが顔を真っ赤にして怒鳴りつけると、五月葉 終夏はしゅんとした様子でうつむいて「だって、日時計が見たくって」と呟いた。エース・ラグランツは「メシエが勝手に……」と嘆きを漏らしていた。
ソア・ウェンボリスはぽん、と手を叩いて呪文を唱え始める。すると、両手で抱えられるくらいの薄い氷でできた壺が出来上がった。
「カナヅチさんって、うまく浮かべなくて沈んじゃうんですよね。沈んじゃって呼吸が出来なくって……それでおぼれちゃうんですから、呼吸さえ出来れば、素もぐりにはむいてると思います」
といって、にこやかな表情でその壺を、一つずつ五月葉 終夏とエース・ラグランツに手渡した。
「これをひっくり返したまま沈んでいけば、つぼの中に空気が残ります。それを苦しくなったら吸い上げれば、苦しくないですよ」
「わあああ!! すっごい! ナイスアイデアだよ、ソア」
「だが、これを使っていいのか?」
「実際使うの初めてだから、うまくいくかわからないですけど……さっきのジュース飲むときに使ってたストローで、何とかできないかなって」
「まぁ、物は試しだ。どのみちあってもなくても、泳げないことには代わりは無い」
吸血鬼からの冷ややかな皮肉を軽やかに受け止めて、エース・ラグランツは壺を逆さに抱きかかえ、ストローを咥えた。
その頃、リレーに参加するメンバーに、チームを発表していたのはシリル・クレイドとネヴィル・パワーズだった。
「朝野 未沙さん、未羅さん、孫 尚香さん、ニーフェさんはAチームです。ケイラ・ジェシータさん、久世 沙幸さん、天貴 彩羽さん、彩華さんはBチームです」
「えっと、ちの すみれ、いくさべ こじろうはにんぎょちーむだよ。2チームにわけてはいってもらうからねー」
「事前にチームを組んできてくださったローザマリアさんたちとで、計5チームでの対戦になります」
「このちいさなほらがいを、ゴールでいちばんさいしょにふいたチームがゆうしょうだよ」
シリル・クレイドは、その手に5つの首から提げられるほら貝を取り出した。色はどれも虹色に輝いていたが、紐の色は赤、青、緑、黄色、紫と分けられていた。
「やった! 人魚チームだ」
「ニーフェさんと一緒のチームなの! お姉ちゃん!」
茅野 菫(ちの・すみれ)と朝野 未羅(あさの・みら)はそれぞれ喜びの声を上げていた。ビキニ水着にいつもの羽をつけ、技師ようのゴーグルを身につけた朝野 未沙(あさの・みさ)はその妹の喜びを受け止める。
朝野 未羅とおそろいのワンピース水着を着ている朝野 未那(あさの・みな)は、応援の準備万端といわんばかりに、タオルと、凍らせた飲み物が入ったペットボトルを籠の中に入れて持っていた。ビキニの水着でたわわな胸を見せ付けているのは孫 尚香(そん・しょうこう)だ。楽しげにはしゃぐ三姉妹を眺めながらも、自身もわくわくした表情を隠せないでいた。
「よろしくね」
赤いチェック柄をしたかわいらしいホルターネックの水着を着ているのは、久世 沙幸(くぜ・さゆき)だ。首の後ろで結んだ水着の紐も、彼女を可愛らしくするためのアクセサリーのようだった。
ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)に握手を求めた久世 沙幸の前に、天貴 彩羽たちも握手を求めてきた。上品な水着を着た美女3人に囲まれて、イルミン男子の水着にタンクトップを着ただけのケイラ・ジェシータは苦笑した。見た目こそ、ケイラ・ジェシータ自身も引けを取っていないが水着の華やかさで彼女たちのほうが勝っていた。
「なんだか、水着のファッションしょーに来ちゃったみたい」
「……」
水着を纏ったほかのメンバーを遠巻きに眺めていたのは、御薗井 響子(みそのい・きょうこ)だった。彼女は潜水用のスーツという少し色気の足りない格好で来ていたからか、このすがすがしい日差しの中では異質な空気を放っていた。
そこへとてとてと駆けてきたのはニーフェ・アレエと朝野 未那だった。
「響子さんは見学ですか〜?」
「あ、はい……泳げないから」
「そんなの、姉さんに言っていただければパーツをお貸ししましたのに」
「そうですよ、明日は一緒に泳ぎましょうよ! 自由時間があるそうですから!」
朝野 未沙とニーフェ・アレエの言葉に、御薗井 響子はおもわず頷いてしまった。そうしてから、はっとしてケイラ・ジェシータのほうを見つめると、彼はにっこりと笑って返してきた。
「よかったね」
そういいたげな笑顔だというのは、長い付き合いで彼女にも理解できた。少しうつむいて、御薗井 響子は口元をほころばせた。まだうまく喜びを表現できないが、自分の中の気持ちが喜んでいると彼女自身も理解できた。
「よし! これで絶対大物を釣り上げるぞー!」
小鳥遊 美羽は爆炎派で丸焼きにしたパラミタイノシシを抱え、気合の声を張り上げた。トラップに他にもパラミタイノシシがかかっていたが、その中でもいちばん大きなイノシシを餌にすることにきめていた。
少しばかりサイズが残念だったイノシシたちは、調理場へと運ばれて今晩の食卓に上ることだろう。
「ふふふ、バラクーダなんか目じゃないくらいどでかいものを釣り上げるんだからね!!」
白いミニワンピースのすそを翻しながら、岩場へとそのイノシシを超能力で運んでいくのだった。その後を追うのは秋月 葵(あきづき・あおい)だ。いつもの改造制服と同じく、フリルをふんだんにつけた改造水着を着ている。髪は砂がつかないように、と彼女の世話をしてくれるパートナーが出かけ際にいつものツインテールをさらに結んで半分の長さにしていた。白虎の獣人であるイングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)は、いつもどおりのスク水姿で、持ってきたお菓子の山をたった今食べ終えたところだった。
「それにしても、何で釣りなのにゃ?」
「うんとねー。面白そうだったから!」
まぁ、イングリットはご飯が食べられればなんでもいいにゃ
と小さく呟いたのは、パートナーに聞こえていないようだった。
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