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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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4-04 東の谷へ来た荒れくれ
 
 金住 健勝(かなずみ・けんしょう)も前線で一部隊を担当する。兵と、もちろん、パートナーのレジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)を伴い配置の場所へ移動していく。
 教導団陣営にあって、最もジャレイラ戦死のショックを直に受けていた様子なのはレジーナであると言えた。金住の剣の花嫁であり、また、神子であることが判明する(実際には別シナリオ)など、様々のことがあった。ジャレイラに対し何らかの共鳴をし、また、ジャレイラもレジーナの変化に気付いている様子もあった。しかし、最終的には響き合いが予感されたジャレイラをどうにかするということはできなかった……
 そんなレジーナは、今どこか上の空といった印象である。
「……」どう言葉をかけたものか、金住は迷っていたが、
「自分達は、お互いにもう言葉では解決できない状況に置かれているであります。
 そういうときに出ていくのが兵士であります」
 きっぱりと、言う。
「……」
 レジーナは、金住の方をちらと見るが、まだ様子は変わらない。
「……レジーナ」
 金住は、レジーナと向き合った。
「いつまでも引きずってると格好悪い、と言ってなかったでありますか?
 自分に出来ることを、自信を持ってやればいいだけであります」
 金住はそう、自分に向けても言っていたのかも知れない。
 レジーナも、金住を見る。
「……(ジャレイラ、戦死してしまった……彼女に私の言葉は届かなかったし、……思えば、ケルメロス・コッタッティア(※)と遭遇したときも攻撃をやめるように私は言っていた……。)」
 ※ :バンダロハムの傭兵。執拗に相手を追う殺し屋であり、金住を本陣まで追尾したがエイミー・サンダースとの共同で討ち果たされた。(「黒羊郷探訪」より)
 レジーナは、思いつつ、何も口には出さずに、金住の瞳をじっと見返している。
「レジーナ。……?」
「(私は何をしにここへ来たんでしょう。甘いことばかり言って、二度も死にそうな目に遭って。私の力なんて、何の役にも立ってない……)」
 また、少し重い表情のまま、歩き出すレジーナ。
 金住も、今は仕方ないようでありますね……とぼやきながら、歩いていく。
 そこへ、
「くけけーっ。
 おいこいつ等を討てば報酬にありつけるのかねぇ?!」
「何者? はっ。こ、こんなところにならず者?」
 金住らの前に続々、崖を下りて立ちはだかってきたのは、めいめい勝手に武装した傭兵のような集団である。
「バンダロハム傭兵の生き残り? こんなところに?」
 金住は銃を構え、後ろに追従していた狙撃兵らも前に出てくる。
「くけけっ。おいてめえ等、飯の為だ、おら一気に潰しちまえやぁぁ」
「違う、待て」
 剣を抜き放った傭兵どもを制止する、背丈の高い男。身長より更に大きな剣を、この男は抜き放つことなく背にかけている。
「言った筈。俺達は、教導団の味方に来たのだ。
 こいつ等、軍服を着ているだろうが」
「何っ。俺様達は、タカムラって野郎の味方に来たんだろうがよ。こいつが、タカムラかっ。もっとでかい野郎と、それにおっかない嫁だったろうがよぉ!」
「タカムラは教導団だ。
 教導団の者を傷つければ、タカムラに迷惑がかかる、わからねぇようなら斬るぞ」
 ギズム・ジャトだ。
 鷹村の義憤に応じ仲間の傭兵軍団を説得し、東の谷へ駆けつけた。
「ちぃ! わぁったよ。おいタカムラ何処だ!!」
「すまない。タカムラは来てないか?」
「た、鷹村殿でありますか……!」
 金住はよくわからないながらもとりあえず敵ではないと判断し、銃を下げさせた。その間こちらを睨みつけ襲いかかってきそうな連中もいたのだが。まったく、気の荒い連中である。そう、三日月湖に着いて初日の、バンダロハム領主館で見た顔の者たちだ。イルミンスールの魔法学生に扮して乗り込んでいった松平・現龍雷連隊長のことをひやひやして見守っていたときのこと……・岩造ファックと言った男が確かこの……
「ギズム・ジャトだ」
「金住 健勝であります!」
「いかにも軍人なやつだな。そっちの彼女は?」
「わ、私……。レジーナと申します」
「……。随分と元気のない嫁だな。
 もっとおっかない嫁を連れている奴だ。タカムラは。まだ来てないか?」
「よ、嫁ではないであります。そ、その、剣の花嫁であります……」
「……」今ひとつ心あらずで、金住のあわてぶりも入ってこないレジーナである。ともあれ、
「タカムラは何処だ!!」「タカムラを出せ!!」傭兵が怒鳴り散らしている。
「た、鷹村殿が何かしたでありますか?」
「ああ。約束したんだ。あいつのもとへ駆けつけるってな。
 あいつの嫁、じゃない、ホントの婚約者の方がピンチなんだ、俺とあいつは仲間だ。放ってはおけないだろう?」
「?? 嫁? 婚約者? ……でありますか。……」(戦場にも何かと色々なことがあるものでありますね……。レジーナと言い、この人達といい……。自分としては一兵士として、戦うのみ、な筈だったのでありますが……)
 


 
 前回物資を届けた鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は実はその後、鋼鉄の獅子の作戦をあえて離れていたのだ。
 ギズムの話にも出ている鷹村が彼女の為に駆けつけた、とも言える婚約者……もちろん、ルカルカのことであるが、そのルカルカにしてみれば、
「ルカルカなら大丈夫ですよ。
 っか……。
 ……。軍人としては嬉しいんだけど、乙女としては、……ね」
 出陣前の兵たちにチョコバー配りながら、複雑な心境を述べるルカルカ。(その矛先はもちろん、敵兵に向かうことになるが……「やつあたりだろそれ」(ダリル))
 ただ、鷹村にしてみれば、また、戦となれば共に戦うこととなるこの女性(パートナー)の存在のこともあったわけで……
「ほら! さっさと行動ッ! グズグズしてると噛み付くよっ!」
 松本 可奈(まつもと・かな)である。鷹村には、ルカっちが心配なのと可奈も危険だからと、鋼鉄の獅子と行動を共にした方がいい、言われた――「ケド、右の耳から左の耳へ〜」だったのである。
 思う存分に暴れるべく、鷹村の先を堂々行く可奈。
 そして……
「タカムラ!」
「……ギズム。
 ……来てくれたのですか、いや……来てくれたのか……!」
「おう、タカムラか!!」「おう、タカムラ!! たっぷり俺様たちにも、飯食わせや!!」
 ぞろぞろと、傭兵等を引き連れ、ギズム・ジャトが鷹村のとこまで、全速力で走ってきた。
「あ、危ない! よせ、く、剣を抜いたまま……」
「荒れくれ者どもの挨拶だ。許せ。
 おまえもだろう? タカムラ。今からは……」
「……ああ」
 ギズムと手を取り合う鷹村。
 可奈もこれににっこり微笑む。
「さあ! 暴れるよっ思いっきり!」