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はじめてのおつかい(ペット編)

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はじめてのおつかい(ペット編)

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「トップの藤乃さん、二位カタリーナさんは変わりありませんが、三位に変動があった模様です。村雨丸さんが、一つ順位を上げてきました。では、他の場所の様子を見てみましょう」
 シャレード・ムーンがそう言うと、大型モニタの画像が切り替わった。
 たちこめるアルコールの中を鼻をつまんで走る小ババ様の姿が、モニタに大きく映し出される。その横には、ふらつく足で走るニャルラトホテプの姿があった。
『フレー! フレー! 小ババ様! ファイト! ファイト! 小ババ様!』
 フレームの外から、風森望と音井博季の応援する声だけが聞こえてくる。
 さて、南部ヒラニィの罠は、なぜか猫に大人気という結果に陥っていた。けれども、南部ヒラニィが予定していたような一本釣りにはならず、すべてサザエをじゃれて転がして遊ぶのだった。
『さすがにこれは予想外だったのだよ』
 少し進んだ中継車のインタビューを受けながら、南部ヒラニィがポリポリと頬をかく。もう一本釣りは半分諦めたらしい。
 その後ろでは、毛を逆立てて唸るルイ・フリードの門次郎と、エース・ラグランツのシヴァとゼノンが、サザエを真ん中にして睨み合っていた。
『負けるなー、シヴァ、ゼノン!』
 モニタの中では、カメラ片手にエオリア・リュケイオンが戦いの行方を記録しながら応援している。
 そのころ、すでに遊び尽くした本郷涼介のルタールはそこから走りだしていた。すぐそばを、サザエには見むきもしなかったアンドラス・アルス・ゴエティアのフラウラスが走る。
「ほら見ろ! 私の子は優秀だぞ! 貴様等とは違うんだよ!!」
 縛られたまま大声をあげて喜ぶアンドラス・アルス・ゴエティアが、同じようにゴールでペットたちを待つエース・ラグランツとルイ・フリードからキッと睨まれたが、本人はまったく意に介してはいないようだった。
 一方、影野陽太の罠に宙吊りにされていた納羽は、なんとか暴れて逃れることに成功していた。代わりに、ミルディア・ディスティンのゆーちゃんが、頭のアンテナを縛られて宙吊りになる。
 悲喜こもごもの中、エレナ・フェンリルに見逃してもらった毒島大佐のヨシテルが、やっと落ち着きを取り戻してレースに復帰していった。同じように、血を吸えないということで、ジュレール・リーヴェンディのロビーも、堂々とその場を通りすぎていった。
『まったく、血の吸えない獲物ばかり……、ああしまったー、地上に気をとられて、獲物を見逃してしまいましたわ』
 悔しそうにエレナ・フェンリルが言った。うまく彼女の間隙を突いたテオルが頭上を飛び去る。
「きゃー、きゃー、きゃー。さすが私の……」
「はいはい」
 そのころ、狂喜乱舞するソア・ウェンボリスをなだめるのに、『空中庭園』ソラは苦労していた。
 
    ★    ★    ★
 
「ふふふ、作った本人が動けなくても、どんどんと引っかかるとは。さすがは俺の作りだした罠。かんっぺきです」
 まだ氷に貼りついたままのクロセル・ラインツァートが、すべってじたばたしているエリシア・ボックのゴーレムのフォルテシモと、キャプテン・ワトソンのオルカを見てほくそ笑んだ。さすがに、すでに小雪はずっと先に進んでいることだろう。
 すぐ近くでは、仲良く機晶石を分けあったタイタンとビスマルクが手を取り合ってライゼ・エンブの餌場を後にしていた。
「さあ、いらはいいらはい」
 呼び込みをするライゼ・エンブを無視して、ザカコ・グーメルの風雅がピョンピョンと跳びはねながら通りすぎていった。やはり、武者人形などはあまり餌に興味を示さないようだ。
 かなり離れて、やっと復活した黒竜と白竜が、落ち着きを取り戻したゲキとフレキと共にレースに復帰していた。
 
    ★    ★    ★
 
「はい、ビリに変化があったよ。なんと、右介さんと左介さんがスラの助さんを追い抜きました!」
 最後に、レテリア・エクスシアイが最後尾の動きを報告してきた。
 
 
残り14ターン
 
 
「悠久ノカナタさんの村雨丸さん、追いあげています。カタリーナさんを追い抜いて、藤乃さんに迫る勢いです」
 
    ★    ★    ★
 
「この辺りに小ババ様がいらっしゃっていると聞いていたのに、見つかりませんですわねえ」
 残念そうにフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が言った。
「まあいいじゃない。サンドイッチも持ってきたことだし、ハイキングだと思って楽しもうよね」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が、フィリッパ・アヴェーヌをなぐさめる。
「そうですねぇ。こうして歩いていれば、偶然出会えるかもしれないですぅ。のんびり歌でも歌って……。あら、何かいるですぅ。ええーい♪」(V)
 茂みががさごそ言ったので、メイベル・ポーターは問答無用で野球のバットを振り下ろした。灌木の茂みが木っ端微塵に粉砕される。
「あら、何もいなかったですぅ。気のせいだったみたいですねぇ」
 ちょっと残念そうに、フィリッパ・アヴェーヌは言った。
 ちょうど近くを通りかかったバフバフが、ビクンとしながら、音のした辺りを慎重に避けて進んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
「ぐるるるる……」
 たちこめる酒の臭いに気づいたゲシュタール・ドワルスキーのシュナイダー12世が、なるべく吸い込まないように全速力で第六十二区画を走り抜けていく。
 だが、朝霧垂のティーカップパンダたちは、もろに気化したアルコールを吸い込んでしまい、全員千鳥足でふらついていた。
 
    ★    ★    ★
 
 やっとサザエに飽きた門次郎とシヴァとゼノンがレースに復帰するのと入れ違いに、今度はマティエ・エニュールのミーシャがサザエに猫パンチを食らわせた。だが、サザエの殻のごつごつした感触に、不機嫌そうな顔になる。
 それにしても、南部ヒラニィのサザエ、猫にモテモテである。マタタビでもまぶしてあるのだろうか。
 
    ★    ★    ★
 
 ミルディア・ディスティンのゆーちゃんは、影野陽太のロープを囓り切って、無事罠から抜け出した。ついでに、まだ吊り下げられていたティーカップパンダを助け出して、二匹連れだって逃げだしていく。
 
    ★    ★    ★
 
「頑張って、みんなー。お腹すいたら、ここで休んでいってくださいねー」
 ノルニル『運命の書』の呼び込みにも、テオルは見むきもしない。もう、ソア・ウェンボリスは狂喜乱舞である。
 だが、ノルニル『運命の書』の声に、素直に反応したビスマルクが、よいしょっと用意されていた丸椅子に腰をかけた。
「あっ……」
 思わず、ジーナ・ユキノシタが唖然として口をあんぐりと開ける。
「よし躾けられてるなあ。さすがジーナのゴーレムだ」
 なぐさめるように七尾蒼也が言ったが、使命を忘れて休んでいるのだから、あまり慰めにもなってはいない。
 
    ★    ★    ★
 
「今度こそ、獲物キャッチ……。なあんだ、小鳥かと思ったら単なる折り紙ですわ」
 お腹をすかせたエレナ・フェンリルは、残念そうに捕まえた黒竜と白竜をポイした。
 
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 中間地点では、脱出できたオルカとフォルテシモのいなくなった場所で、ゲキとフレキがつるつるすべって悲しげな声をあげていた。
 
    ★    ★    ★
 
「和むよねえ。現在、最下位はスラの助さんだよ」
 うにょうにょ這い進むスラの助さんに和みながら、レテリア・エクスシアイが報告した。