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空京暴走疾風録

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空京暴走疾風録

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第20章 不可侵協定 環七北/26時半頃

 “環七“北にある深夜営業レストラン「エアロシティ」の店内には、妙な緊張が漂っていた。
 以前からの暴走族騒ぎで、週末夜の客の入りは少なかった。
 が、そんな現状にあってなお、夜に出歩くような者は、色々な意味で破格な者であると言えよう。
 グループごとにまとまり、バラバラに座る彼らは、その実互いに他のグループに視線を向け合い、水面下での牽制を図っていた。空いた小腹を満たすべく頼んだ料理にも、全く手をつけようとしない。
 その客とは――ひとりひとりの名を呼ぶより、それぞれのグループに付いている名前を記した方が分かりやすいだろう。
 “圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)““銀輪騎士団(シルバーナイツ)““DSSh連合(デッシュレンゴウ)“。いずれも、“環七一周“を狙う者達であり、互いにその事を悟っていた。
 ――もっとも、“DSSh連合(デッシュレンゴウ)“の一画を担う“出羅津駆棲・喪哀漢(デラックス・モヒカン)“メンバー、ゲブーとホーは、駐車スペースに置かれたテラス用テープルを囲み、「救世主」と一緒に鍋料理をつついていた。5メートル近いホーの巨体は、店の中に入らないからだった。
(こいつらはライバル)(今の内に“躾(シメ)“ておくか?)(騒ぎを起こすには、ここは戦場としてどうだろう?)(今、「北」には警察や自警団が集まっているらしい)
 そんな思惑が交錯する中、また自動ドアが開いた。店員が駆けつける。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
 入店したのはエルフリーデ達だったが、店内の気配を察した途端、
(〜〜〜〜〜〜〜っ!!)
 サリーが鎧化してエルフリーデに着装した。たちまち彼女は黒いライダースーツ姿となったが、頭にも豹頭をかたどったフルフェイスヘルメットが被さり、人相が分からなくなった。
 歩を進めようとして、店員に止められた。
「お客様……その、フルフェイスヘルメットは……」
「分かったわ。サリー、鎧化を……」
(やだやだやだやだやだ! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い!)
「……すみません、ツレが人見知りの魔鎧なもので……コーヒー一杯飲んだら出て行きますんで」
「ですが、その格好は他のお客様の迷惑に……」
「構いませんよ!」
 店内の片隅で、そう声を上げたのは“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“のクロセルである。
「私達なら構いません! そこの魔鎧をまとった方、よろしければご一緒にいかがですか? コーヒー程度ならごちそういたしましょう!」
「……どうやらご招待を頂いたようですが」
「はい……どうぞ、こちらに」

(ヤロウ、どういうつもりだ?)(連合とか同盟でも結ぶつもりじゃねぇのか? オレたちみてぇに、よ?)

 エルフリーデを“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“らの席に案内した店員は、窓を見ると慌てて外に飛び出して行った。
 ピリピリしている者達は、様々な動きに敏感である。必然、店内の者達は店員の動きを眼で追った。
 眼にしたものは、駐車スペースの立木に、自分の白い乗馬を繋ごうとする黒の外套をまとった男の姿だった。
(す、すみません! その、馬を駐車スペースに乗り入れるのは……)
(? そんな貼り紙も立て札も見当たらないが?)
(いえ、ここは『駐車』スペースであって、厩舎では……え?)
 クロセルが窓を叩き、店員の注意を惹いた。眼が合うと、身振り手振りで「中に入れて、私の席へ連れてきて下さい」と伝えた。
 多少悩みながらも、黒の外套の男――ロイ・グラードを店の入り口まで案内しようとする店員。だが、さらに駐車スペースに乗り入れようとする者を見て、店員と、そして駐車スペースでナベをつついていたゲブーらは悲鳴を上げた。
 駐車スペースに入ってきた「異形の鎧」は、自分の乗馬のゾンビ馬をやはり立木につなぎ、店に入ろうとしていた。厄介なのは、引き連れていたゾンビも一緒だった事だ。
(お、お客様〜〜〜〜ッ! ゾンビ馬の乗り入れと、ゾンビの後入店は他のお客様の……!)
(? そのような告知はどこに?)
(店員さん、店員さん。その方も、私達の席に案内してくれませんか?)←身振り手振り

「魔鎧装者のそろい踏みというのも、なかなか壮観ですなぁ」
 ルイ・フリードは大笑した。
 “銀輪騎士団(シルバーナイツ)“の集まっていたボックス席には、店内の緊張とは別な意味で異様な雰囲気が満ちている。もともとのメンバーの他、魔鎧を装着した者たちも一緒になってテーブルを囲んでいた。
「で、相席に私を招待された理由は何ですか?」
 エッツェルが、訊ねた。片手で窓に向かって「あっちに行ってろ」と合図をし、どこかのホラー映画のように窓にへばりつくゾンビらを追い払う。
「単に一緒に食事をして、親睦を深める、というわけでもあるまい?」
 ロイもそう言いながら、周囲の気配をうかがった。他の“暴走族(ゾク)“然としたグループらが、こちらに聞き耳を立てているのが分かった。
「皆さんは……いえ、ここにいる全員が、おそらくは今夜の“環七一周“を目指している事でしょう」
 クロセルは切り出した。いきなり核心に入る。
“環七一周“は、空京の“ワル一番“のステータス……ですが、今夜の情勢はいつもと違う事はご存じでしょうか?」
「『東』と『北』で大きな取り締まりがあったみたいですね。おかげで思ったよりも道が静かでしたけれど」
 エルフリーデの答えに、「それです」とクロセルは指を立てた。
“環七一周“すなわち“ワル一番“とする根拠。それは、コースの中でいくつもの“ワルワル“なみなさんが互いに競い合い、潰し合う過酷な状況を乗り越える――という前提があるからでしょう。
 しかるに今宵は、その前提が崩れています。
 いつもに比べれば、“環七一周“は容易に出来る。ですが、こんな状況でそれを成し遂げても、果たしてどれだけの意味があるのか? 平和な“環七“をぐるっと周り、『オレが一番だ』とアピールしても、説得力はあるでしょうか?」
「……何が仰りたいのですか?」
 エッツェルが眼を細めた。
「今夜はお互い、“ワルの一番“を目指すのは止めませんか? ただ単純に、それぞれが“環七一周“を目指し、互いに相手には干渉しない――そんな協定はいかがでしょう?」
 テーブルに身を乗り出すクロセル。
「我々“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“は、自転車で“環七一周“を目指しています。“環七一周“を達成する事で、空京の“ワルワル“なみなさんの鼻を明かしたい、という気持ちはありますが、彼らの“アタマ“を張ろうというつもりはありません……そもそも、空京は私達のホームグラウンドではありませんしね?
 例えばエッツェルさん、あなたは空京でご自分の名を売りたいとお考えですか?」
 話を振られたエッツェルは、首を傾げた。鎧化したミストが見せる異形の姿での人間くさい仕草は、センスの歪んだユーモアを感じさせた。
「……まぁ、私は一種の仮装行列みたいなものです。こんな格好で“ワルワル“なみなさんの遊び場を巡れば、少しは怖がって静かになってくれるかなぁ、と」
「なかなか面白いですね……そちらの、素敵な外套を着てらっしゃる方は?」
「ふっふっふ……よくぞ訊いてくれたな」
 ロイの着装した外套が笑い始めた。
「昔ザナドゥに居た頃ァ、俺も“ヤンチャ“したもんさ。
 今じゃすっかり足を洗ってこの通り落ち着いちまってるが、空京の“暴走族(ゾク)“どもを見てたらなーんか“ワル“の血が騒ぎだしちまってよォ。
 ちょっくら若造どもに、ザナドゥ仕込みの“テク“を教えてやろうかってなもンよ! 
 そんで環七最速伝説でも作ればよォ、俺の“暴走(ハシリ)“に惚れた女どもをはべらせてよォ、常闇ハーレム王国でも作って……」
「深い理由はない。ちょっとスリルのある“遠乗り“を楽しみたい、それだけだ」
「相棒! 勝手に話打ち切ってんじゃねぇ!」
「……では、そちらのクールなライダースーツのレディは?」
「主目的は、うちの魔鎧の対人恐怖症の克服……まぁ、そちらの方の『スリルのある遠乗り』っていうのもないわけじゃありませんが」
「誰も“ワルの一番“を目指していない……決まりですね」
 ぱん、とクロセルが手を鳴らした。
「我々“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“は、皆さんの“環七一周“を邪魔しません。皆さんにも、“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“を邪魔する理由はない。
 今夜はお互いに、有意義な夜を過ごせそうですね……」
「ちょっと待った」
 いつの間にか、テーブルの脇に“圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)“の桐生円が立っていた。
“環七一周“がどう、なんて話聞こえてきたけどさ。狙っているのは君達だけじゃないんだ。どんな悪だくみをしていたのか、教えて貰えないかな?」
「そうだな。こっちも黙っちゃいられない」
 離れた席で竜司が立ち上がった。
「陰に隠れてコソコソってのは、あんまり好きじゃあねぇなぁ」
 竜造も立ち上がり、竜司と一緒に“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“のテーブルの前まで来た。
「そっちが“連合“組んで何かやらかすってんなら、まずは俺、“修羅外道(シュラゲドウ)“の竜造様を倒してからにするんだな。正義も悪も平等に潰してやるぜ!」
“池面(イケメン)“流はなぁ、“拳(コイツ)“で物事を決めるのさ! “戦場(バトルフィールド)“なら“駐車場(すぐそこ)“があるなぁ!?」
 凄んでくる“DSSh連合(デッシュレンゴウ)“のふたりだが、クロセルは落ち着いて
「我々は“何もやらかさない協約“を結んだのですよ」
と答えた。
 彼は再び最初から説明した。“環七一周““ワル“の一番の根拠と、今夜の“環七“の情勢、自分達は“環七一周“を目指してはいるが“ワル“の一番は目指していない事、云々。
「関係者が集まったのはちょうどいい。
 我々はそれぞれ“環七一周“を目指す者同士、今夜に限っては協力も競合もせず、互いに不可侵で一周を狙う、という形で協定を結ぶというのはいかがでしょう?」
 ――この申し出は、“圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)““DSSh連合(デッシュレンゴウ)“に対しては、賭けである。
 この両者は目的ではなく手段として“環七一周“を狙っている。目的は“ワルの一番“
 例え今夜の“環七“がいつもに比べて平和だったとしても、“競争相手“を叩き潰す事に意義がある――そう判断するようだったら、この場で今すぐ“戦争“が始まる。
(そうなったら、ただじゃ済まない――下手をすれば、我らの方が骸となって転がるかも)
 エッツェルに着装している魔鎧のミストが、もしも人の姿を取っていたら身震いをした事だろう。
 “DSSh連合(デッシュレンゴウ)“の竜司と竜造――“ダブルドラゴン“とでも呼ぼうか?――は、“パラ実“から来たガチガチの武闘派だ。
 また、桐生円がいる“圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)“構成メンバーは、いずれも様々な冒険屋経験を積んだ猛者ばかり。“称号(二つ名)“を書き連ねれば本が一冊出来そうだ。
 こんなのが敵に回ったら――
 ふっ、と竜司が肩の力を抜いた。
「……そうだな。お前らはお前らで好きに“暴走(ハシ)“るといい」
「何だ、“池面(イケメン)“よォ? “日和“ちまったのか?」
「別に? “無益な殺生“はしないってヤツだ。ちょっと“洒落“好きな“一般人(パンピー)““冒険“する位、生暖かく“スルー“してやろうじゃねぇか。
 さっさと出されたメシ食おうじゃねぇか、“修羅“のぉ。すっかり冷めちまったけどよぉ?」
 竜司は“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“のテーブルに背を向けた。
 一方の円も、肩を竦めた。
「……おっけー。そっちがそういうつもりってんなら、ボクの方もノータッチだ。“圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)“は、むやみに“堅気“に手は出さない」
 そう言って、自分のテーブルに戻っていく。
 がくん、と日比谷皐月の体がソファからずり落ちそうになった。
「……寿命が縮んだぜ……」
 道中、さんざん“歌“ったおかげでガラガラになった喉から、ポツリと台詞が漏れた。額に浮かんだ冷や汗を拭い、ドリンクバーに向かって立ち上がると、クロセルも同時に席を立った。
「……危うい所で、命を拾いました……」

 その後、しばらくそれぞれのグルーブでそれなりにくつろぎながら、めいめいが適当に飲み食いしていると、また新たな客が入った。西城 陽(さいじょう・よう)横島 沙羅(よこしま・さら)の二人である。
 両者は店内を見渡し、あちこちに固まっているグループを見ると、同時に同じ感想を抱いた。
((“平和(マトモ)“なヤツらがひとりもいない))
 外に馬やゾンビ、あるいは巨大なドラゴニュートがテーブルのナベ突いている段階で、察しはついていたが……
(で、“仕掛ける“のはどこにする?)
 「精神感応」で沙羅が訊ねる。
(見るからに“暴走族(ゾク)“ってやつらは怖いなぁ……)
(でも、そうじゃない所もヘンな格好した人が揃ってるよ?)
(いやぁ、ありゃ「魔鎧装者」だろう。最近じゃそう珍しくはないぜ?)
(でも、装着した格好で食べたり飲んだり、ってのは……)
(……よし、あいつらに“仕掛け“よう)
(! あのヘンなのに!? 本気!?)
(ガチの“暴走族(ゾク)“は怖い。うかつに機嫌損ねたらボロ雑巾にされちまうぜ)
 陽は、“銀輪騎士団(シルバーナイツ)“と魔鎧装者が集まる席に向かった。
(どうなっても知らないよ)
 後を追う沙羅。

「あー、すみません。一緒させてもらっていいですか?」
 陽が頭を下げると、その場にいた者が一斉に注目した。
「? 構いませんが、何でしょう?」
 答えるクロセル。
「自分ら、天学新聞部の者なんですけどね。ちょっと“環七“の怪談っつーか、都市伝説を追っかけてるんですよ」
(胡散臭いわね)
 豹頭フルフェイスの奥で、エルフリーデがひっそりと眼を光らせた。
「興味深いですね、どんな怪談ですか?」
 エッツェルが先を促すと、陽は話を続けた。
「――何でも、この“環七“で夜中に轢かれて死んだ少女がいるらしい。轢いた人間はそれをあろうことかバラバラに解体し、各地に埋めて隠蔽した。
 が、俺が調べているのはその事件じゃなくて、その後に流れた幽霊話さ。
 ――バラバラにされ白骨化した少女の頭部が、環七を転がりまわって他の部位を探している。
 ――少女が生前に着ていたボロボロになった衣服が飛んでいる。
 ――車やバイクの前にその少女の幽霊が突然現れる。突然なので避けきれず、轢いてしまったと後ろを見てもだれもいない。その後流れるザザザザという音を聞くと、近いうちに事故死してしまう。
 そんな話が寄せられてる。
 ……まあ馬鹿馬鹿しい話だと思うが、取り敢えず調べないわけにはいかないからな。あんたら、よくここを走ってるんだろ、何か知らないか?」
 話を聞いた者達は、顔を見合わせて「聞いた事ある?」「さぁ?」と首を振ったり肩を竦めたりした。
 沙羅が写真を数葉取り出した。“環七“の夜景をバックにした写真の数々だが、あちこちに奇妙な“何か“が映っている。いわゆる“心霊写真“というやつだ。
 ――これらは陽達の“仕掛け(ギミック)“だった。
 暴走族が跋扈する“環七“だが、それらを糾弾する意味合いの怪談や都市伝説を流布させれば、少しは鎮静化の効果があるのでは、という意図である。
 沙羅の差し出した写真は、スキル「ソートグラフィー」で作ったものだ。「念写」という意味では、言わば“不思議写真“という括りで“心霊写真“に通じるモノはあるだろう。種も仕掛けもないが、ウソ八百の捏造写真という代物だ。
「ふむ、興味深いですね。実に興味深い」
 エッツェルは、写真を眺めながらニヤニヤと笑った。
(インチキは、もう少し細心にやった方がいいですよ?)
 そう心中で語りかける。
 心霊写真と言えば旅行先のスナップ等がオーソドックスだろう。が、差し出された写真はただの風景を撮影したものばかりで、その風景にもさして見所のあるような風物はない。
 そんな、“心霊写真“としての微妙な違和感を感じたのだろう。他の者達も怖れたり恐がったりというのではなく、写真を見てしきりに首を傾げている。
「ありがとうございます」
 エッツェルは写真を返した。
「私の乗り物は外に繋いであるゾンビ馬ですが、私なりの“安全運転“を心がけましょう。それがきっと、この少女の魂への一番の供養となる事でしょうからね。
 それらの話について、あなた方が色々な人に話を聞いて追いかけるのは、注意の呼びかけにはなるでしょう」
 インチキや捏造を殊更に暴き立てるつもりは、エッツェルには無かった。
 “環七“の暴走族問題を何とかしたい、という陽達の意志は尊重すべきと思ったからだ。
「あと、それらの写真はあまり人に見せない方がいいでしょう。写真に籠もってる“念“が拡散して、見た人触れた人に少女の霊を呼び寄せる事になりかねません。
 早々にお祓い等の“浄化“をした後は、燃やしてこの世から消し去ってしまうべきです。
 ――私の言っている事が、分かりますか?」
(すぐバレるインチキは、お止めなさい)
 言外の意味を悟った陽と沙羅は、頷くしかなかった。

 最初に「エアロシティ」を出たのは“圃倭威屠裏璃夷(ホワイトリリイ)“の面々だ。
 駐車スペースから自分のバイクを出した後“環七“に入ってしばらく進むと、交差点で“環七“から降りてしまった。
 ――彼女らの目的は、“ワル“の一番になる事である。“環七一周“は、その為の手段でしかない。
 クロセルの言った通り、今夜の“環七一周“はその価値を変えてしまっている。
(なら、どうすればいい?)
 彼女たちの出した答えはこうだ。
“空狂沫怒(マッド)“残党、その借り出しに興じる暴走族、さらにそれを抑えようとしている警察や自警団らで混乱している“環七“北部を“制覇(シメ)“る)
 七瀬歩は、自分達が抗争の種になる事にいまいち納得ができなかったが、「“環七“北の混乱は、誰かが強大な力を示す事でしか鎮められませんよ」と藤原優梨子に言われ、同行する事とした。