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リアクション
■It’s showtime!
ステージの上では月夜が次の紹介者を決め、発表するところだ。
しかし、刀真達はそれどころではなかった。
さっきまでいたはずの佑也の姿がどこにも見当たらないのだ。
「兄者ならここにいますよ?」
ツヴァイは床に落ちていた眼鏡を拾い上げ、そう言った。
しかも真顔で。
「……」
一瞬、周りの4人は固まった。
「ま、冗談はおいといて」
ツヴァイはそう言ったが、真顔で言われるとどうにも……。
「まさか佑也さん、怪盗に攫われたんじゃ!?」
しかし、アインのこの言葉で顔色が変わる。
「いえ、きっとそうに違いありません! アルマさん、ツヴァイ! 怪盗を捕まえますよ!」
「OK、あのムラサキ蛾にウチの大黒柱に手を出したツケを払わせてやるわよ!」
「分かりました、全身全霊を持って怪盗を捕まえましょう」
アインの言葉にアルマもツヴァイも応える。
「次の人は美緒……ドレスもだけど……胸が……」
月夜はステージに上がってくる美緒の胸を凝視して、自分の慎ましい胸を確認した。
「くっ悔しくないモン!」
「?」
美緒は何を言われているのか分からないといった感じで、とりあえず月夜の側まで来た。
「ゆうやのからだがさらわれたーーーーー!?くそっ、あの女ゼッテー許さねえ!佑也の体、お前の事は俺が必ず取り戻してやる! 佑也も安心しろよな! ……あれ、佑也?」
「えーっと……事情が飲み込めないんだが……トイレに行って、迷子になってる間に一体何があったんだ?」
鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔になってる刀真に、佑也が質問をした。
「いや……あの……お前の本体がこの眼鏡で、お前の体が攫われたって……」
刀真はなんとか説明すると、佑也は状況がやっと理解出来た。
その様子をただ、前だけは吹きだすのをこらえて見ていた。
「いや、その眼鏡俺のじゃねーから! 全然違う人のだから! お前ら、そんな物騒過ぎるものはしまえー!」
ツヴァイが持ってきていた武器満載のトローリーケースが開かれて、それぞれ武器を物色しているところだったのだ。
「あれ……いた……」
アイン、ツヴァイ、アルマは目を点にしてしまった。
ステージの下では不機嫌そうなリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)とそのリースと一緒に来た篠宮 悠(しのみや・ゆう)とヨハン・メンディリバル(よはん・めんでぃりばる)が来ていた。
リースは青紫のちょっとセクシーなドレスを身に纏い、悠はマホロバ城に登城する時の素襖の格好で、ヨハンは仕立てたばかりのモーニングにいつもの帽子を被っている。
(蝶子お姉さまからの招待状なのに……蝶子お姉さまがいらっしゃらないなんて)
リースの不機嫌の理由はその蝶子がいないことなのだ。
「さっきから泉さんばかり見てるんですね。浮気ですか?」
ご機嫌斜めだと、色んなところに飛び火するから恐ろしい。
「ハァ? 浮気!? んなワケねぇだろ! いや確かに美緒の事は気にしてはいるが……いやそういう意味じゃなくてだな!」
「知りません!」
ご機嫌はますます悪くなるばかり。
「おい、悠、気を付けておけよ、この警備の中で盗もうってンだから、相当の馬鹿か腕利きだろう。特に後者だとしたら厄介だ……泉美緒から絶対目を離すんじゃねぇぞ」
「分かってるけど!」
ヨハンの言葉の意味はわかるが、今それをやると恋人であるリースの機嫌がますます悪くなるのが目に見えている。
「イッツ……ショーターイム!!」
そんな声が聞こえて来たかと思うと、ステージに紫のバニーガールの衣装を着たアイマスクの女性と、さらにバニーガール2人、こちらもアイマスクをしているが霧島 春美(きりしま・はるみ)とピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)が出てきた。
アイマスクのおかげで正体は観客にも紫のバニーガールにもばれていない。
打ち合わせと違う人物の登場に珠樹と実はしばしフリーズしてしまっている。
「イリュージョンはド派手にね」
紫のバニーガール達がステージの真ん中まで来たとき、会場内のいたるところから氷術、火術、光術で作られた花の様な花火が打ちあがり、観客を沸かせた。
さらに、セクシーな雰囲気の曲がかかると、舞台では春美とピクシコラが1枚の布を持ち、その後ろに紫のバニーガール、布を上まであげ、顔まですっぽり隠すと、素早く布を取っ払ってしまった。
布の奥から出てきたのは……いつもの肌蹴やすい着物を着た蝶子だ。
「怪盗パープルバタフライ!」
火焔が叫んだ。
会場内がざわつく。
ステージのすぐそばで待機していた大佐と舞とブリジットが美緒の側まで駆け寄る……が、いきなりすぐ近くで光術を使用され、美緒のそばまで辿り着けない。
「蝶子お姉さまー!」
光術でみんなが動けなくなっている内に箒に乗って、リースが蝶子の元までやってきた。
さっきまでの機嫌の悪さが嘘のように、満面の笑顔になっている。
「さ、乗って下さい!」
箒に乗る事を促すと、蝶子は手探りながらも、箒に跨った。
「リース!」
どうやら、悠がステージの上までリースを追いかけてきたようだ。
しかし、まだ目がちゃんと見えていないのか、リースが自分から蝶子の元に言った事に気が付いてないようだ。
ただ、上から声がしたから来た、それだけだ。
そして、手探り状態で前に進んだ時、何かを手に引っかけた。
「いっやーん!」
「きゃーーっ!」
みんなの目が慣れてきた頃、見えたのは箒で浮かび上がった蝶子とリースの下着姿だった。
蝶子はブラを付けておらず、黒の紐パン。
リースはフリルとレースがたっぷりとあしらわれた可愛らしいブラとショーツだ。
悠の掴んだものはリースのドレスと、蝶子の帯だったのだ。
蝶子は慣れた手つきでとりあえず、リースのドレスを直し、それから自分の帯を直した。
「蝶子お姉さま……一生ついていきます!」
「ふふふ……ええ、許すわ」
リースは幸せ絶頂のようだ。
「美緒っ!」
大佐は美緒のすぐ近くまで来ていたが、一歩届かず……盗みに成功したのは正悟だ。
美緒を抱き上げ、レッサーワイバーンに乗ってしまっている。
そして、何故か、ワイバーンの尻尾に月夜が引っかかってしまっていた。
これには月夜自身が一番驚いているようだ。
「蝶子さんが囮で俺が盗む……作戦は成功だな」
正悟はそれに気が付いていない。
「わあ、素敵なレッサーワイバーンですね」
美緒はかなり天然な発言を繰り出した。
「逃がさないんだから! ベアトリーチェ!」
「はい!」
美羽が手を出すと、ベアトリーチェは服の下からグリントライフルを取りだし、手渡した。
設定を蝶子達の体は傷つけないとし、レーザーを発射する。
「きゃっ!」
リースの乗っていた箒が真っ二つになり、2人が落ちてくる。
「うごっ!」
リースと蝶子の良いクッションになったのは日下部 社(くさかべ・やしろ)だった。
下にいてくれたおかげで怪我はない。
社自身も、イベントでやるつもりだったヒーローのきぐるみのおかげで怪我はないようだ。
「あら、また会ったわね」
蝶子はきぐるみの頭を取り、顔を確認すると、社だとすぐにわかったようだ。
「パープルエビフライ!」
「バタフライよ、ダメじゃない名前くらいちゃんと覚えなきゃ」
「う……」
前回、ペースを乱された記憶があり、社はどうにも蝶子が苦手なようだ。
「ハーハッハ! 怪盗Qの名にかけて必ず我が泉美緒のペンダントを戴くデース!
怪盗パープルバタフライなんていう三流怪盗には負けないのデース!」
社のパートナーの著者不明 パラミタのなぞなぞ本(ちょしゃふめい・ぱらみたのなぞなぞぼん)にビシっと指を差される。
「……もう、あなたの手の届かないような場所にあるものをどうやって盗むのかしら? 一流怪盗さん?」
「……はっ!!」
蝶子に言われ、正悟と美緒の方を見、やっと状況がわかったようだ。
「くっ……今回は我の負け……を認めるわけないのデース! 次に会った時こそ、一流の実力を見せてやるのデース! アホ面いきますヨ!」
「覆面野郎置いてくなー!」
そそくさと逃げるパラミタのなぞなぞ本を社が追いかけて行った。
「月夜に手を出しやがったのか……」
刀真達はさっきとは比べものにならないくらい怒っているのがわかる。
それも静かに。
「もういっちょ!」
それを見たベアトリーチェは今度はレッサーワイバーンの尻尾を狙った。
先っぽの方が取れ、月夜が下に落ちてくる。
ワイバーン自体にダメージはそれほどないようだ。
「月夜!!」
刀真と前は同時に走り出し、月夜をキャッチした。
かなりの高さからの落下だから、キャッチ出来ていなければ大けがだろう。
「美羽さん! あれは危ないですよ!」
「でも、刀真っち達なら絶対にキャッチしてくれるって思ったもん」
刀真達は聞いていないようで、月夜を刀真と前で抱きしめている。
「もう……大丈夫……帰ってきたから……」
月夜が2人の頭を撫でた。
なにやらここだけシリアス。
佑也達もこの結末に満足気だ。
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