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機晶姫トーマス

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機晶姫トーマス

リアクション



=第9章=   大団円




 朝野 未沙(あさの・みさ)は、次々と鉄道局からの迎えの車で空京に向かって行く乗客を遠目に見ながら、
 手元のバインダーに挟んだ白紙にペンを走らせていた。

 数分前に、モートンを止めるため集まった仲間たち、トーマス自身にも事情聴取していた彼女は、
 モートン暴走の原因を紙媒体に書き記し、あとで【アルマゲスト】のメンバーにも提出するつもりだった。


「迷惑よね!小さな悪戯で、危うく大参事になるところだったんだもの」


 あれから、吹っ飛んで行ったモートンの煙突を調べたところ、ガムの張り付いたちり紙がパンパンに詰め込まれていたのだ。
 
 機晶姫モートンは、人を運ぶ時以外は機晶姫専用の収容施設に入るが、そこに入場規制はない。
 機晶姫は会話できるし、子供などから機晶姫と話したいという希望が絶えないからだ。

 しかしその善意が裏目に出た。

 モートンの隙をついて、心ない児童・・・・・・もしくは、彼女より背の高い青少年が、悪戯をしたに違いなかった。


(はぁ、これからが大変よ。機晶姫たちに問題はないって、証明しなきゃいけないんだから)


 あとで、車内で写真を撮っていたという国頭 武尊に、写真を現像したものを提出してもらわなければならない。


 けれど、乗客や、仲間たちの口添えが、きっと少女機晶姫を救ってくれるに違いない。
 暴走した・・・・・・だから機能の悪い機晶姫ということではなく、乗客を無事に空京まで送り届けた、
 トーマスと並ぶ唯一無二の機晶姫として、モートンは讃えられてしかるべきなのだ。




 ――向こうで、師王 アスカが、帰る間際にトーマスとモートンを引き止めて、何やら談話しているのが目に入った。

 しかし未沙は、この後に待っている“モートンの暴走について”の会議を優位に進める資料を作るべく、素早く帰宅の途についたのだった。










 ――数ヶ月の月日が流れた。










 モートンが無事に再び客車を引ける機晶姫として復活し、しばらく経った頃、都心の美術館で、とある絵が注目を浴びていた。

 『お騒がせ機晶姫、お手柄機晶姫』と言うタイトルの、トーマスとモートンをモデルにした12号ほどの大きさの絵画だ。

 作者は、師王 アスカ。


 その絵画には機晶姫ふたりの、照れくさそうにはにかんだ笑顔が、惜しげもない彩りで見事に描かれていたという。





 ―了―




担当マスターより

▼担当マスター

さくら まう

▼マスターコメント

 はじめまして、1作目のリアクション発表となりました、さくら まうと申します。
 想像以上の数のプレイヤー様にアクションを頂き、緊張と楽しさの中、初めての執筆活動をいたしました。
 人数が多い分、描写は大変でしたが、こうして出来上がったリアクションを皆様が楽しんでくだされば幸いです。

 空白と改行を多く取り入れ、私なりに「見やすい」文章を心がけております。
 感情移入し、より一層楽しんで頂ければと思います。
 
 それでは、また次回作でお会いいたしましょう。