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リアクション
『青い鳥』が二挺のハンドガンを構える。弓でも引くような特殊な構え方だ。
『お、どうやら縁と『青い鳥』の一騎打ちが始まるみたいだよ!』
実況者のマリエルたちも画面越しに二人が始める戦いに食いついたようだ。
まず動いたのは『青い鳥』だった。
銃撃戦は中距離戦闘が最も有効となるが、対ライフル戦では『青い鳥』にとっては近距離が有利となる。初弾を撃たれる前に以下に相手の懐へと潜るかが重要だ。
一方、ライフル型を使用している縁は遠距離戦向きかと思われるが、意外とそうではない。しかし、近距離戦闘が不利になるのは変りなかった。
それでも初弾は縁が放った。迫る玉を『青い鳥』は《殺気看破》を駆使して前へ詰め寄る。
『青い鳥』の左手を伸ばす。超至近距離での発砲で縁を仕留めようとする。が、縁が『青い鳥』の左手をライフルで弾き、射線が外れる。しかし、直ぐに右手を伸ばす。また弾かれると同時に、ライフルの銃口が『青い鳥』へ向く。『青い鳥』は体をライフル側面に密着させ、銃口を逸らし縁の背後へと周り込む。対して縁が腋撃ちで背面へ攻撃。半歩引いて避ける『青い鳥』に更に屈み足払いで転倒を狙う。だが、側転飛びでそれを躱した『青い鳥』が反転する視界から縁を狙う。視界外から飛んでくる玉を縁は《超感覚》で察知し、足払いで発生した回転運動を利用して後退する。距離を取ったことにより縁が有利となる。
『ガン=カタですか』
二人の戦闘を見てシズルが呟く。彼女は二人の戦闘スタイルが何であるか知っているようだ。
『シズルさんなんですのそのガン☆カタって?』
レティーシアがガン=カタが何か質問する。だが、それは聞かないのがよかったかもしれない。
シズルがガン=カタについて長い説明を始めた。
『ガン=カタとは、膨大な銃撃戦のデータ分析から生まれた戦法です。
敵対者が幾何学的な配置であるならば、その動きは統計から予見できます。
ガン=カタでは銃を最大限に活用し、最も効果的な配置に立つことで、最大のダメージを最大の数の敵に与えることができます。
そして、敵の銃撃はデータから位置と弾道を予測し、回避することが出来ます。
ガン=カタを習得することが出来れば、攻撃能力は少なくとも120%向上します。例え、攻撃能力の向上がその半分程度だたとしても、ガン=カタを習得していれば、敵にとっては脅威の存在と成ります』
その解説にシズルのパートナーであっても、流石にひいた。
『……長い解説どうもですわ。でも良くそのような知識を何処から?』
『昔のアクション映画から』
シズルの答えに、レティーシアは「そ、そう……」と詰まり気味に返した。
『要はどちらが勝っても、負けた方の『鬼』たちにとって実力者を失う痛手になるわけですね。しかし、どっちが勝ちそうですか?』
マリエルが画面を見るかぎりは互角の戦闘に見える。強いて言うならば、手数の多くなる二挺持ちの『青い鳥』が有利に思える。
『近距離戦闘としてはバレルの短いハンドガンタイプが有利ですわね。セミオート式で扱いやすく、動きやすいはずですわ。対して、縁さんの使うライフルタイプは威力と精度が高い、正確に言うならばアサルトライフルタイプで、セミオート、フルオート、三点バースト切り替え可能ですわ』
レティーシアが貸し出されているエアーガンの詳しい説明をした。
補足としては、威力の高いライフルタイプのほうが、ハンドガンタイプよりフラッグ破壊には適している。玉の飛距離もあるが、狙撃をするには【エアーガン/パッフェルカスタム】に劣るといったところだ。
『しかし、クロスレンジでの戦闘はアサルトライフルにはやはり不利です。もし、この戦いで縁さんが有利となるとすれば……』
(ちさーのリロードタイム……)
シズルの考えと同じで縁もそれを淡々と狙っていた。ライフル型の最大の利点はその装弾数にある。ハンドガン型を二挺使おうとも、ライフルの装弾数には及ばない。フルオートでもしない限り、ハンドガンタイプのほうがはやく玉を消費する。玉を消費失くした瞬間、それが『青い鳥』の最大の隙となるはずだ。
(弾倉の装填数は睦月のから14発ってわかってる。ちさーは左右交互に撃っているから残り4発で弾切れ)
縁ののんびり口調からは想像もできない、高速思考で相手の隙となる瞬間を予測する。
そしてその瞬間が来る。両銃がホールドオープンし『青い鳥』の両手からマガジンが排出される。
「二丁拳銃にしたのが運のだねぇ、ちさー」
ここぞとばかりに縁が畳み掛ける。リロードタイムとなれば、二丁拳銃は圧倒的に不利だ。両手を塞いでいるため、弾倉の再装填に時間がかかってしまう。一挺で戦うよりもこの瞬間だけは大きな隙になってしまう。
「《氷術》《火術》!」
『青い鳥』は二つの魔法を続けて使い、廊下に霧を発生させた。目眩ましだ。自身の視界は《ダークビジョン》で確保する。
「そーはいかない!」
縁は《エイミング》にて霞む視界の中にいる標的をしっかりと狙う。『青い鳥』の行動予測もできる。
しかし――。
「残念だったわね」
霧の中から『青い鳥』が両二の腕でスライドを同時に引き、飛び出した。
まだ、リロードが終っていないはずの『青い鳥』が縁へと玉を撃ち返してくる。
「いつの間にリロードを!?」
睦月が驚き疑問を投げる。その答えは簡単だ。『青い鳥』は着物の袖にマガジンとマジックハンドを隠し、グリップの底を袖に向けるだけでリロードができるようにしていたのだ。
不意に飛んでくる弾に縁は回避することが出来ない。
が、彼女を襲う玉が彼女の目の前で止まる。《サイコキネシス》を使ったのだ。
『ねぇ、マリエルさん。《サイコキネシス》での防御はいいとしても、足払いでの攻撃って反則じゃないかしら?』
レティーシアが縁の行動の非を問う。
『どちらも別に問題ないですよぉ。ルールには武器、魔法での直接攻撃は禁止していますが、手足での攻撃は禁止してませんし』
もっと言うなら、組み手だろうと柔術だろうと使っても構わない。
『それならよろしいのですが、この分だと二人の決着を見るのは難しそうですね。霧でカメラが曇ってしまいましたわ』
観客も残念がったが他のカメラでの映像に切り替えることにした。
『でも、これだけ激しい戦闘してても、使っているのはタダの豆鉄砲なのよね』
マリエルが最後に二人の戦闘の緊迫感を台なしになる事実を言葉にした。
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