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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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「温泉気持ちいいですぅ〜」
「そうね〜気持ちいいわね〜」
 温泉に浸かり、その心地良さにフランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)高島 恵美(たかしま・えみ)が呟く。
「ぬぅ……」
 そんな二人とは対照的に、不機嫌そうな表情をしているのはミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)
「あらあら、ミーナちゃんそんな顔しないで笑顔笑顔」
 恵美が微笑みながら言うが、
「ぬぅ……納得いかない……」
やはりミーナは不機嫌そうに呟く。
 彼女が何故不機嫌なのか。少し話を遡る。

 なななの依頼を聞いた三人は、早速例のスパ施設へとやってきたのであった。改善案なども募集していた為、実際に施設を体験しレポートにする為である。
「あら、結構大きいのね〜」
「広いです〜」
「そうだね。可愛い娘とかいればいいなぁ」
「あらあら、ミーナちゃんだって可愛い女の子じゃない」
 そんな事を言いながら、更衣室へと入ろうとしたときであった。
「あ、ちょっとキミ」
「え? ミーナ?」
 一人の施設係員がミーナを止める。
「そうキミ。駄目じゃないか。キミはあっちだよ」
 そう言って係員が指差すのは、男子更衣室。
「……なんでミーナ、男子更衣室なの?」
「何でって、そりゃ男の子は男子更衣室に決まっているじゃないか」

「だぁれが男の子だぁあああああああああ!」
 思い出したミーナが叫んだ。腹の底から怒りを籠めて。
「あらあら、ミーナちゃんどうしたの?」
「おっきなこえです」
「うぅ納得いかない! 何でミーナが男の子扱いされなきゃいけないんだ!」
「そうよね〜、ミーナちゃんは可愛い女の子なのに〜」
「全くだよ……」
「わーい、おかーさーん」
 フランカが恵美に抱きついてきた。
「あらあら」
「おかーさんのお胸、ふかふかなのー」
 そう言ってフランカが、恵美の胸に顔を埋めた。
「…………」
 ミーナの視線は恵美の胸に行った。
 飾り気の無い水着と、その水着からこぼれんばかりの圧倒的なボリュームの豊満な胸がそこにはあった。
「…………」
 自然と、自分の胸元へと視線を落とす――死にたくなった。
「あらあら、ミーナちゃんどうしたの?」
「……この温泉、心の傷は癒してくれないんだね……」
 力なく温泉に浮かんだミーナが呟いた。

「ああ……いいですねぇ……これは効くわ……」
「ええ……本当、いい気持ち……」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が温泉に浸かりながら呟く。
 温泉の湯が身体の疲れをほぐしていく。その心地良さから思わず声が漏れる。
「ありがとね、こうでもないと温泉なんて行く機会がないのよね」
「ううん、楽しんでくれればなによりだよ」
 マリエッタが言うと、なななが笑って返す。
「けど二人とも、随分温泉に入っていたみたいだね」
 ななながゆかりの前にあるお盆を見て言う。上には徳利と温泉玉子……の殻が幾つもある。
「ええ、美味しい玉子でした」
 ゆかりが笑顔で答える。
「これでお酒があればいいんだけどね……あ、飲む? お茶だけど」
 マリエッタに勧められななながお猪口でお茶を貰う。冷たいお茶が喉を潤す。
「さて、カーリーそろそろ上がる?」
「そうですね。長湯しすぎてもいけませんし。それでは失礼しますね」
 そう言って二人が湯から上がる。
「二人ともこれからどうするの?」
「そうねぇ……ラウンジで少し休もうかしら」
「けど気持ちよかったですね。このまま休んで寝ちゃいそうですよ」
「そうね……ああ、久々にゆっくりできたぁ……」
 二人はそのまま、温泉から出て行った。
「あら、隣いいかしら」
 二人を見送るなななに、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が話しかける。
「え? うん、いいよ」
「それじゃ、失礼するわね」
 なななが頷くとリカインが湯船に浸かる。
「失礼するッス」
「どもー」
「ちょいと失礼しやすねぇ」
 それに続いて、アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)サンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)またたび 明日風(またたび・あすか)も続々と入ってくる。
「今回の依頼聞いたわよ、宇宙刑事も大変ねぇ」
「まあ大変だけど、これも使命だから」
「お陰で温泉に入る機会ができたからありがたいけどね。こうでもないと行かれないし。それに水着も着れたし」
「お仕事大変だもんねー」
 リカインとサンドラが苦笑しつつ言う。
「けど、教導団の水着が変に露出が無くてよかったわ……」
「そうだね……最近の水着って一部の人に優しくないよね……」
 そして、二人が真顔で呟いた。
「? 何の話?」
「ああ気にしないでこっちの事……けど……確かにこれは考えものね」
 リカインが辺りを見て言う。ちらほらと客はいるものの、シーズン中とは思えないくらい閑散としている。
「さっきボニーに会ったら『こんなにお客様来るなんて何時ぶりか』って泣いてたよ」
「……本格的にどうにかした方がいいね、それは」
 サンドラが言うと、明日風が唸る。
「うぅむ……しかしアイディアなんてありませんよ? 常連にでもなれればいいんですがねぇ」
「あら、何か策になると思って連れて来たのよ?」
「え? それはどういう……」
「いいのいいの。温泉に入っているだけで」
 リカインの言葉に明日風は首を傾げたが、やがてはっと何かに気づいた。
「あ、あっしには薬用効果などありゃしませんよぉ!」
「いや、花妖精だし」
「そんな都合いい話ありゃしませんよぉ」
「そうかー……いいアイディアかと思ったんだけどね」
 残念そうにリカインが呟く。 
「所で、さっきからずっと黙ってるけどどうしたのかな?」
 先ほどから黙ったままのアレックスに気づき、なななが尋ねる。
「ああいえ……温泉もいいけど、オレは外の方が気になるッス」
「外? ああ、ウォータースライダーね……好きよね、兄貴は」
 サンドラが困ったように言った。
「まぁ、別に行って来てもいいわよ」
「本当ッスか!? ありがとうございます師匠!」
「誰かに声かけられてもついていかないのよ」
 からかうように言うサンドラに、アレックスが振り返りながら言う。
「それはこっちのセリフ。姉貴もついて行かない方が身のためだよ?」
「私に声かける人なんていませんよーだ」
「いや、最近は特殊な趣味の人もいるから。ほら、『男の娘』好きとか」
 アレックスが言った瞬間、空間が凍りつくような音がした。
「……あーあ、やらかした」
 リカインが呆れたように呟き、手を額に当てる。
「……兄貴、ちょーっとこっちきて」
「え、何? オレこれからスライダーに」
「いいから。すぐすむから」
 そう言って半ば無理矢理、サンドラがアレックスをズルズルと引きずっていく。
 そして、
「ちょ! 待って待って! そんな無理矢あああああああ!」
アレックスの悲鳴が聞こえてきた。
「……どうしたの?」
「サンドラの禁句を言ったのよ……止めてくるわね。評判悪くしたらいけないし」
「そうですねぇ。スイマセンねぇ力になれず」
「う、ううん、その、お大事に……」
 なななが苦笑しつつ言った。
 悲鳴は、二人が止めに入るまで暫く続いた。この悲鳴を聞いた者があまり居なかったのは幸運だったと言える。

「んぐ……んぐ……ぷはーっ! やっぱ温泉の後はこれだね」
 ラウンジにて、皆川 陽(みなかわ・よう)が満足げに言う。彼の手にはフルーツ牛乳が握られており、これを腰に手をあて、一気に飲み干す。
「はぁ……そうなのですか?」
 テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)が尋ねる。
「そうだよ。テディも飲んでみて」
「はぁ……」
 そう言って陽からフルーツ牛乳を渡され、テディは口をつける。
「ちっがぁぁぁぁぁう!」
「うわっ!? な、何ですかいきなり!?」
「違う違う! そうじゃなくてこう腰に手を当てて豪快に!」
「ご、豪快に?」
「それが日本式なのじゃよ!」
(日本式と言われても……)
 陽の言葉に、テディが心の中で抗議する。
「ほら、もっとこうやって腰に手を」
 そうしていると、陽が強引にテディの身体を形作らせる。
「ちょ、ちょっといきなり何する!?」
「え? 正しい飲み方レクチャー。そこまで慌てなくてもいいじゃない」
 そう陽は言うが、テディは内心落ち着いてなど居られなかった。
(この人本当にわかってるのかな……いくら水着着ているからって目の毒だよ……)
「じ、自分でできますから……こ、こうですか?」
「そうそう」
 言われた通りに飲むテディの姿に、満足そうに陽が頷く。
「さて、飲み終わったことだしもう一回入ってこよー!」
「ま、まだ入るのですか!?」
「当たり前だよ。湯治っていうのは何度も入って身体を癒すものだからね。あ、テディも一緒に来るんだよ。これ、命令ね」
「……了解」
(のぼせそうだけど、大丈夫かな僕……)
 浮かれながら温泉に向かう陽の後を、テディは溜息を吐きつつ追った。

「ふぅ……いい湯でしたね。やはりここの湯は湯治に適しているみたいですね」
 湯上り、ラウンジで休みながら非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)が言った。
「けどやはり距離が問題ですわ」
「そうだな、この距離だと通うのが問題だな」
 ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が涼みながら言う。
「宿泊施設でもあればいいんですがね……ラウンジで宿泊とかできませんかね?」
「恐らく無理だと思いますわ。先程営業時間を見ましたが、どうやら深夜の営業は行なっていないみたいです」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が言うと、近遠が残念そうに溜息を吐く。
「そうですか……一週間位は滞在したいんですがね」
 今回、かなり効果のある温泉と聞いた近遠は湯治目的でスパを訪れていた。可能であれば長期宿泊も、と思っていたのだが、残念ながらスパ施設には宿泊施設が無かったのだ。
「ならば後で意見してみればいいのではないか? 改善案を募っているのだろう」
「そうですね……本格的に施設があれば一ヶ月位滞在できると思いますしね。いい湯なのだから、湯治にももってこいだと思いますよ」
「では、後でその様に意見してみましょうか」
「そうしましょうか」
 ユーリカの言葉に近遠が頷く。
「ところで近遠さん、そろそろ食事になさいませんか?」
「そうですね。一旦食事にしましょうか」
 そう言って、近遠達はレストランへと向かった。
「……だって」
 その近くにいたななながボニーに問いかける。
 温泉から上がり、涼んでいた所でなななはボニーに会い、話している所で近遠達の会話が聞こえてきたのであった。
 ボニーは少し考える仕草を店、難しい表情で口を開く。
「宿泊施設ですか……ラウンジとレストランを使えば可能ですが問題が」
「何?」
「人件費が」
「……ああ、そうだね」
 なななが溜息を吐いた。
 宿泊施設を伴うとなると、どうしても深夜にも人手が必要となる。夜間の賃金は昼間より高額だ。一人二人ならば兎も角、数人雇うとなると現状では難しい。
「お金があれば実現できるのですがね……」
 ボニーが溜息を吐いた。
「ね、そこのお二人さん。ちょっといいかな?」
「ん? 何かな?」
 声をかけられ、振り返るとそこには世 羅儀(せい・らぎ)がいた。
「あ、なんだなななちゃんか。ごめんごめん」
「あれ? なななに用事があったんじゃないの?」
「違う違う。今お客さんに施設のアンケートをとっているんだ。ごめんね邪魔して」
「アンケートですか?」
 ボニーの言葉に、羅儀が頷く。
「白竜に言われたんだよ」
「その格好で?」
 なななが羅儀の姿を見て言う。アロハシャツにトランクス型パンツ、とどう見てもナンパ目的の人物にしか見えなかった。
「まあ『やりやすいようにやってくれ』って言ってたからな。あれでもオレに気を使ってるのかもしれないな……おっと、長々と話ちまったな。じゃ、ちょっとお仕事してくる」
 そう言って、羅儀はななな達から離れ、
「おっ、ねえちょっといいかな。今リサーチしてるんだけど……」
と見かけた女性に声をかけていた。
「やっているみたいですね」
 いつの間にかななな達の近くに居た叶 白竜(よう・ぱいろん)が呟く。
「きゃっ!? い、何時の間に……」
 ボニーが驚き、小さく悲鳴を上げた。
「おっと失礼。驚かせてしまったようですね」
 白竜が苦笑しつつ頭を下げる。
「所で、あんな感じだけどいいの?」
 なななが羅儀を指差すと、
「まあ、たまにはいいでしょう」
白竜は朗らかな表情で言った。
「所で、ボニー君」
 ずい、とボニーに顔を寄せ白竜が言う。水着着用が原則のこの場で国軍制服を身に纏っている事も合わさり、ボニーが緊張で身体を固くする。
「営業終了後にお時間を頂けますか? 経営など見てみたいという方々がいるので」
 そういわれ、ボニーは小さく「はい……」と頷いた。