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魔法使いの遺跡

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魔法使いの遺跡
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終章 終わりへの調べ

 お師匠様の家。
 窓から眺められる庭にはモーラと契約者たちの姿。彼女たちは遺跡から持ち帰ってきた楽譜の音楽を奏でながら、ひと時の音楽会を楽しんでいた。
 そして、そんな彼女たちを見守るお師匠様の前には、緋雨とランツェレットの姿。彼女たちは、今回のモーラの冒険についてあることをお師匠様と話していた。
「本当に……ありがとうございました」
「い、いえ、そんなお礼を言われるような大したことはなにも……」
 恐縮して手をパタパタと振る緋雨に、落ち着いた様子でお茶を飲むランツェレット。同じくお茶を美味しそうに飲みながら、麻羅が言った。
「それにしても……なかなか面白い依頼じゃったのぉ」
 実は彼女たちは、遺跡の秘宝が最奥にある楽譜だということを知っていたのである。もちろんランツェレットとしてはそれを公にしたうえでモーラの手伝いをしていたのであるが、緋雨はあくまでも契約者としてモーラに接していた。
 お互いに役割を変えた上でのモーラのサポート――と言っても、緋雨が迷子になったのは事実であるようだが――は、最奥にある楽譜を持って帰ることで終わりを告げる予定だった。
 しかし、結果的には楽譜なんかよりもすごいものを発見したわけで。
「お師匠様は……地底湖のことを知っていたんですか?」
 緋雨がごくごく当然な疑問を聞いてみる。ランツェレットも口には出さないものの、気になっていたことだ。
 お師匠様は柔和に笑った。
「さぁ? どうでしょう? ただ……あの子のことですから、もしかしたら何か別のものでも発見してくれるかも、とは思ってましたけどね。皆さんのおかげで、勇気もいただいたようですし…………きっと、少しは自信がついたのではないでしょうか」
 半ばお茶を濁した返答だが、それ以上のことを緋雨が聞くことはなかった。
 サイコメトラーHISAMEには、きっと全てがちゃーんと分かっているのだろう。そう。そうに違いないのである。
「良い音色ですね」
 ランツェレットが庭から聞こえる音色に耳を傾けて、そんなことを呟いていた。



 庭では、音楽を奏でるモーラたちがいた。
 ヴァイオリンにリュート、フルート、クラリネット、トランペット……。様々な楽器を手にして、契約者たちが遺跡から持ち帰ってきた楽譜をもとに音楽を奏でる。
 音楽が苦手なモーラは、慣れない楽器に四苦八苦だ。
 やがて諦めて椅子に座り込んだモーラは、他の演奏のうまい契約者たちの曲に耳を傾けた。曲を聴いていると、魔法使いウォーエンバウロンに思いが馳せられる。
 少しでもあの人に近付けたかな……?
 そんなことを思って、彼女は美しい音色に笑みをこぼしていた。
 そして、そんな彼女の隣に座ったルカが、彼女に声をかける。
「モーラっ。どうだった? 今回の冒険は」
 実のところ、それはルカがずっとモーラに聞いてみたかった質問だった。今回の旅の目的は『調べてこい』ということ。つまりそれはきっと、最初の一歩で使命は果たされているということなのだ。
 本当の目的は、友達を作ること。
 ルカはそう思っていた。と、いうよりは……ルカは彼女と友達になりたいと、思っていたわけなのだが。
 ルカの質問に少しだけ考える仕草をして、モーラは答えた。
「はい、楽しかったです!」
「ほんと!? よかったー! やっぱり冒険は楽しまないと損よね、うんうん」
 まるでアトラクションの案内人のように、客の感想を聞いてはしゃぐルカ。
 彼女はそのままの勢いで言った。
「じゃあ、ルカたちは友達だね!」
「友達……? え、え……ほ、ほんとですかっ!?」
 慣れていない言葉だったのか、初めは意味をとらえきれていなかったモーラだったが、理解するとともに彼女はとび跳ねた。
「ほんとほんと! 友達友達!」
「と、友達……」
 ルカと握手を交わして、少し照れくさそうに笑うモーラ。顔が真っ赤になっているところを見ると相当嬉しかったのか。恥ずかしそうに顔を伏せていた。
 が――
「なにぃ、ルカとモーラが友達だとっ! なら、俺とももちろん友達だな!」
「ひっ……!」
 突然現れたカルキノスの獰猛な姿に、悲鳴のようなものを漏らすモーラ。なにせ長い長い尾の先にはギョロっとした大帝の目がついているのだ。なまじ魔物より魔物らしいカルキノスにモーラが怯えるのもまあ……無理はないかもしれない。
 友達を泣かせた! といったようにギロリと睨んでくるルカ。
「え、え……? お、俺が悪いのか?」
「ほらほら、怖い怖いドラゴニュートはちょっと下がってて! モーラ、俺となら友達になれるよなー」
 戸惑ってたじろぐカルキノスを押しのけて、夏侯淵がモーラと握手した。
 こく……と頷くモーラをカルキノスに見せびらかして、ニヤニヤと笑う夏侯淵。なぜか、カルキノスはひどく悔しくなった。
「森の外には他にもいろんな種族が大勢いてだな、魔法が使える奴も苦手な奴もいて、切磋琢磨しつつ暮らしてるんだ。モーラも、機会があったら、町に出るのも良いかもしれないぞ」
 夏侯淵がそう言って、モーラに外の世界を教えてくれる。
「あ、そのときはぜひルカを呼んでね! 光の速さであなたのもとへ! ……って感じでやってくるから」
「は、はい」
「おいおい、俺は……」
「ひっ……」
「…………」
 やっぱりカルキノスは怖いようで、モーラと彼がうち解けるまではまだまだ時間がかかりそうだった。
 それに対して、もふもふプリチーな白熊ゆる族は慣れているようで、カルキノスから逃げる彼女はソアと一緒にそんな雪国ベアと遊ぶ。
 ――涙目のカルキノス。
 演奏のもとに歌を歌うリカインやノーンたちは、そんな彼女たちを見ながらくすくすと笑っていた。
 やがてモーラは、涼介やエリシアたち。誉れ高き魔法使いと魔女のもとにやってくる。
 魔女はいつだってきまぐれなもの。エリシアは庭の隅っこのほうであくびをかみしめ、お昼ねに乗じようとしていたところだった。
「今日は……ほんとうにありがとうございました。皆さんのおかげで、頑張れました」
「そんなことはないって。あなたの力の賜物だよ。なあ、エリシアさん?」
「そうですわね。少し……一皮むけたような気がしますわ」
「えへへ……」
 モーラは照れくさそうに笑った。クスッと、エリシアは笑みを返す。
「そのうち、いつか化けるときがあるかもしれませんわね。精進すると良いですわ。……もちろん魔女らしく気ままに、ですけれど」
「……はい!」
 赤毛の魔女に近づくために。そう心に秘めて、モーラは元気に返事をした。
 さて、演奏はまだまだ続けられるが、モーラのビビリ体質はどうなったか……というと。
「いやああああぁぁぁ!」
「ははははは! お化けだぞー!」
 アキラにアルメリアやシオンと――お茶目な契約者たちに追いかけられて、やっぱり彼女は悲鳴をあげていた。まあよくよく考えれば、彼女でなくともあんなお化けのお面集団がせまってくれば逃げ出したくもなるが。
「やれやれ、だな……」
 木にもたれかかって演奏を楽しむダリルの声は、澄み切った空にかすんで消えていった。

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
「魔法使いの遺跡」いかがだったでしょうか?
今回も様々なアクションをいただきました。
ウォーエンバウロンの遺跡の様々な出会いや物語は、皆さんのアクションによって生まれたものです。
ある意味ではそれが『蒼空のフロンティア』の良さであり、私自身も楽しませていただきました。

見習い魔女の赤毛の娘は、これで少しでも成長出来たでしょうか?
もし皆さんが「うん!」と頷いていただけるとなら、それに勝る幸せはありません。
この冒険を糧にして、今後も彼女には修行を頑張ってもらいたいところですね。

それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加本当にありがとうございました。