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大廃都に残りし遺跡~魂の終始章~

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大廃都に残りし遺跡~魂の終始章~
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 Episode3‐2 〜Epilogue‐Arkadia Side〜
 
 
「ここがアルカディアですか……って、何も起きませんよ?」
「……どうやら、全ての機能が停止しているようだな」
 ファーシーがツァンダに戻った日、モーナ・グラフトンライナス、そしてアクアはアルカディアを訪れていた。だが、入口に立った彼女達を神殿が迎え入れる事は無い。
 遺跡は遺跡。
 只の、古い建物ですよ。外からゆっくり見物していってください。
 神殿はそう言うかのように沈黙していた。
 神殿といっても――もう、そこには神も、智恵の実も、数々の守護者も居ないのだ。
 魔物さえも、きっと。

 否――

「裏口から入ってみましょう。こちらから入れる筈です」
 アクアはプリントアウトした地図を見ながら脇にまわる。一見何の変哲も無い壁をスライドさせると、その先には在庫置き場のような通路があって。
 中に入り、アクアはライナス達を案内する。ともすれば無関心とすら感じそうなその歩みに迷いは無く、やがてある場所で足を止めた。
 それは、残骸、と呼べる機械が在る場所。かつて、人形と呼ばれた機械が在る場所。
 そして、その『人形』はまだ人型を保っていた。少し手を加えれば、動かせそうなほどに。
 ――機械の傍には、壊された武器。
「……此処が、彼女が初めてマークした場所です。ですが、歩いていれば分かりますが……この遺跡にはまだ、沢山の人形達が残っています。中には、こうして私達に破壊されずにただ力を失ったモノもいるでしょう。そう、この遺跡のように……」
 アクアは『人形』を見下ろし、淡々と語る。
「生み出せばいい、と言われました。私の気持ちを形にしろ、と。だから、私は形にします。この人形達は……」

「機晶石を、求めていました」

“彼女”達は機晶姫に成りたかったのだろう。機晶石を持っている機晶姫達が、羨ましくて仕方がなかったのだろう。
 ――少しばかり、智恵を得てしまったから。
 ――だから、他の機械達とは違った。
 ――だから、機晶姫を優先的に狙った。
「彼女達の“欲”が、私には解る気がするのです。それはきっと、あの頃に私が抱いていたものと似ていたのでしょう」
「とりあえず、トルネの家に残ってる機晶石だけでも全部買い上げる? それで、何体が動かせるか分からないけど……」
 独白を続ける彼女に、モーナは背後から声を掛けた。
 機晶石は高価で、数も限られている。恐らく、動かせる人形は、極僅か。
 全てを動かすことは出来ない。損傷の激しい人形は分解してパーツとして使用する必要もある。ライナスも、そしてモーナも、そう彼女に言った。そうしなければ、この世界は動かないから。
「動かした人形は私の研究所で助手として使おう。人手はいくらあっても足りないものだ」

 全てを助ける事は出来ない。それでも、アクアは――

「ありがとうございます」

 ――そう、言った。
 それが今の、彼女の意思。
 彼女の、答え。