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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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第3章 可愛い生き物でも食べられるなら食料としか見ない乙女たちpart2

「んもぅっ、まいちゃんったら何してるの」
 早く魔列車が走る姿を見たい綾乃は、むぅっと頬を膨らませる。
「あ・・・やっぱり怒ってるわ」
 綾乃に発掘作業員用のつるはしを渡され、これ以上ヘソを曲げられる前に作業にとりかかろうと、車輪の回りをガッガリッと掘る。
「車輪の隙間はピックで削るのね」
「ちゃんと丁寧に掘ってね♪―・・・あれ?まだ昼間なのに、急に暗くなってきたわ・・・」
 ほのぼのと作業をしている彼女に海のギャングが迫る。
 ニャ〜ンズのボディーが影を作り手元が暗くなったのだ。
 
 にゃーらん・・・。

 ―・・・にゃ〜らん・・・にゃらららら・・・・・・。

 みゃぁああぁ〜♪

「現れたわね」
 女王の加護でじゃれつかれそうな気配を感じたセレアナは、ディフェンスシフトで綾乃の前にさっと立ち、ランスでプニプニの肉球から少女を守る。
「サメってかまぼこ以外に、フライにしたり煮つけにしたりするんだっけ?」
 セレンフィリティの方は夕食用にならないかと考えながら水中銃のトリガーを引き、シャープシューターで大きな目玉へ狙いを定める。
「無駄口叩いてないで次に備えて。でないとサメ料理どころか、サメがセレンの踊り食いしちゃうわよ」
 小ぶりだからいいものを、仕損じれば尾ビレで列車を叩かれてしまうわ、と彼女を軽く睨む。
「そうなる前に倒しちゃえば無問題よ。それくらいあたしと付き合い長いんだからわかるでしょ?」
「倒せれば・・・の話よ」
 チェインスマイトで2匹目の左ヒレを落とし、滑り込むように腹の下を通り抜け右側のヒレまで殺ぐ。
「どんなに可愛くっても、食べ物として見れば話は別よ?2匹分でどんな料理が出来るのかしらね?」
 窘められも軽口を止めず、とどめの一撃で顔面を撃ち抜く。
「油断しなければいいってことだし?」
「はぁ〜・・・まったく。ポジティブにいえば、何でも食べるサバイバル向きね」
「え〜?あまり奇妙なのは口にしないと思うけど」
「―・・・透乃ちゃんが2人いるような気がしますね」
「私は1人しかいないよ?」
 ぽつりと呟く陽子の言葉に、透乃が不思議そうに首を傾げる。
「たくさん食べることが大好きな人が、もう1人いますねってことですよ」
「ちっちっち♪甘いよ、陽子ちゃん。私は食べられそうなものなら、何でも食べる派だからね!」
 目の前にご馳走らしきものが現れたら、ゲテ系でも真っ先にかぶりついちゃうよ、とにんまりと笑う。
「確かに・・・透乃ちゃんはそうですよね」
 Gに似た生物を食用としか見ていなかった透乃なら、本当に何でも食べてしまいそうだ。
「適当な大きさ斬っておいたから、浮かせて回収してもらうよ」
「えぇ、そうですね」
 ブリザードで冷凍保存した陽子は切り身を洞窟の外へ運び、ぷかんと浮かせる。
「クマ、切り身が浮かんできましたわよ!」
 海面に浮かぶ切り身を発見したミカエラは、テノーリオに回収するように言う。
「発掘現場にいるヤツがやったのか?」
 ばさっと漁師網を投げ、ニャ〜ンズの切り身を寄せてバケツに放り込む。
「それだけあれば、かまぼこが作れそうだな」
 集めてもらったそれをトマスが子敬専用の厨房へ運ぶ。
「おお〜!60人分は作れそうですね。では、さっそく調理しましょう!」
 鱗をキレイに取り除くと骨から身を削ぎ落とし、スプーンで掻き出した内臓と血合いは別のボールへ移す。
「へぇ〜、かまぼこってそうやって作るのか?」
「はい、本来は白身の魚を使うのですが。ネコ鮫ならお肉よりの身でも出来そうですよ」
 斧で大まかに切り目を入れた後、氷水にさらして手早くかき混ぜる。
「この量なのでいっきに量れませんね・・・。でも、大雑把な料理は味にも影響しますから、妥協なんてしませんよ!」
 湿らせたさらしに包むとギューッと絞り、すり身の重さを量り水や塩、小麦粉の分量を決める。
「10分程度ですし。これくらいでマンシーンなんかに頼ってやるわけにはいきませんね」
 機械は使わずに2本の包丁で身をトトトトンッと細かく刻む。
 身をすり鉢に移すと氷水を入れたボウルの上で、冷やしながらごりごりとすり身にする。
「まだすらなきゃいけないのか?」
「小麦粉と水に溶かした塩を加えましたら、さらに10分くらいするんですよ」
「うわ〜・・・かまぼこ作りって大変なんだな」
「1から作るんで、仕方ないですよ。でも、手間を惜しんだら、美味しくなりませんからね」
 傍らでじっと観察しているトマスに子敬は、料理というものは焦らずじっくり作るものだと教える。
「ふぅ・・・しばし待ってから、蒸し器に入れましょう」
 クッキングペーパーを大皿の上に敷き、かまぼこの形に整えて1時間ほど休ませる。
「発掘現場はどうなったんでしょうね?」
「かなりの力仕事のはずだけど、根性ありそうな生徒ばかりだから平気だろ」
「まぁ、私に出来ることといえば、皆さんに手料理を振舞うことだけですけど」
「それで十分だと思うよ。疲れを癒す食べ物がなきゃ、モチベーションも下がるだろうし」
「まだ作業も続きそうですし。日々の活力の元にしていただければ、よいのですけどね。―・・・ややっ、カメラを持った者たちがまた海の中へ行くようですよ」
 テーブルの上を片付けていると、海の中へダイブする樹月 刀真(きづき・とうま)たちを目撃する。
「発掘現場を撮影してるんだろうな。それにしても、撮るのも結構大変そうだ」
 ずいぶんとこんがり小麦色に焼けてるな・・・と思いつつ、早く休ませ終わらないかな・・・と、かまぼこの方に視線を戻す。



「月夜、ちゃんとリングをつけてきましたか?」
「えぇ。大丈夫よ」
 ウォータブリージングリングを刀真に見せると、デジタルビデオカメラを片手に漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はパラミタ内海へ潜る。
「このほうが時間の節約にもなりますし。軽くなる分バッテリーを交換する前に、電源が切れてしまったりしますからね」
「ボードもちゃんと持ったから準備okよ」
「今は・・・だいたい13時頃ですね」
 きゅっきゅと油性ペンで撮影の開始時間をボードに書く。
「では撮影を再開しますよ」

 3・・・2・・・1・・・。

 スタート!

「再び発掘現場にやってきました!さて今回、魔列車を運び出せるのでしょうか!?」
 カメラ目線にナレーションを始めた刀真は、さっそく発掘現場の洞窟へ入っていくと・・・。
「おっと、いきなり岩が飛んできましたよ!かなり豪快に作業を行っているようです」
 突然、顔面スレスレを岩がビュゥウンッと通過する。
「ごめーん、ぶつからなかった?」
「えぇ、大丈夫ですよ。こんにちは、透乃。御神楽環菜鉄道記の撮影をしているんですけど、よろしいでしょうか?」
「面白そうだね、いいよー!」
「それって後で皆さんも見るんですか!?」
「おそらくそうなりますね」
「えっ・・・そそそんな。私・・・こんな格好なのにっ」
 陽子は撮影と聞いてさらに恥ずかしくなったのか、両手で顔を覆い隠す。
「いいじゃない、減るもんじゃないし。あーっ、やっちゃんたちが来た!おーい、こっちで撮影してるみたいだよ」
「なっ!?」
 鎧貝一つでギリギリ隠している泰宏は、さっと岩陰に隠れる。
「そんなところにいたら発掘出来ないわよ、来なさい」
「うわぁあ、やめてくれぇえ芽美さん〜っ」
「嫌なら編集でカットしておきますよ?」
「編集の力を借りなくても、そのまま放送しちゃっても平気だと思うわ」
「いえ、無理やり流すわけにも・・・」
「せっかく撮ってくれるわけだし、遠くからならいいんじゃないの?」
 私は別に恥ずかしくもないし、皆と映るのも悪くないかも、みたいな態度で言う。
「うーん・・・なるほどですね。なるべく目立たなくしておきますよ」
「私のこの姿を見て誰が喜ぶんだ・・・」
「やっちゃん、私だって恥ずかしいんですから・・・。1人だけ編集してもらうなんて許しませんよ」
「―・・・ひっ、陽子ちゃん!?」
 ぼぅっと周りに人魂が飛んでいそうな、どんよりとした陽子の容貌に、泰宏はびくっと身を震わせる。
「まぁ・・・2人はあまり目立たないように撮影しておきますね」
「えぇ〜、私のマル秘・陽子ちゃん特集の映像がー・・・」
「と、透乃ちゃん。いつの間にそんなものを!?」
「うーん・・・今思いついたんだよ。保管してこっそり見ようかなーとね」
「さすが透乃ちゃん。夜中にこっそり見るわけだな・・・」
 もうすでにそんなものが存在していても不思議じゃないが、彼女ならやりかねないと泰宏が呟いた。
「―・・・あの、この発掘に対しての、意気込みなどを聞かせて欲しいんですが。よろしいですか?」
 話が落ち着いた頃合を見計らい、刀真は遠慮がちに口を開く。
「あぁ、それくらいなら。うーん・・・3人に付き合って来てるから、今はこれといって思い浮かばないな」
「私もやっちゃんと同じく、それらしい言葉は思いつかないわね」
「えっと、私は・・・各地のおいしー食べ物が食べられたらいいなーってね。あれ?意気込みとはちょっと違うかも」
「列車に乗っていろんな風景を見るのも楽しそうですけど。透乃ちゃんたちとグルメ旅行もいいなって思います」
「この間列車が完成したらという、要望でしょうか?」
「まぁ、私と陽子ちゃんはそんなところかな」
「貴重なご意見ありがとうございます!他の方々の言葉も聞いてみましょう」
 カメラマンの月夜、こっちへ寄ってくださいと手をヒラヒラさせて指示し、他の発掘担当者の話も聞こうと運転車両へ移動する。