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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編
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「じゃあ、次ぎは俺かな」
 駅のイメージをスクリーンの画面に映すとエースは、資料を配りコンペのプレゼンを始める。
「日本の東京駅のテイストも合いそうだけど、大きな時計塔があるフランスのリヨン駅外観とかさ」
 淡い水色の屋根もイメージにピッタリだぜ?と、その画像をスクリーンに映した。
「パリの北駅や東駅、サンラザール駅もいいな」
 アイボリーとベージュの中間のような色合いの大きな建物も似合いそうだし、黒に近い灰色が混じった年代を感じさせる屋根の駅も落ち着いてる感じもよさそうだ。
 北側駅は貴族がパーティーでも開きそうな雰囲気で、東駅にはガラスと鉄で造られた大きなアーチがある。
 鮮やかなカラーもいいが、サンラザール駅のようなモノトーンもアリか?と考える。
「まぁ、後は駅舎に店を造ろうかと考えているんだ。希望としては、ヴァイシャリーの老舗店などが入ってほしいな」
「お店を開いてくれる人がいなかった時はどうします?」
「んー…その時は、誰かお店をやってみたい人がいないか探すしかないな。とにかく、皆に楽しんでもらうことはもちろん、鉄道を運営するためにはお金が必要だからさ。いつまでも出資者ばかりに頼るんじゃなく、ちゃんと利益を得て運営しなきゃいけないんだ」
 造るだけじゃなく、その先のことも考えた彼は、利益を得る提案をする。
 列車が走るためにはお金が必要だし、停車駅やレールの整備代を貯めておく必要があるからだ。
「でも、売上げがたくさんあればいいってわけじゃない。売上げが全て利益になるわけじゃなく、駅などの維持費に使うからな」
「たくさん稼ぎたいということですか?」
「稼ぐっていうよりも、いざという時の費用がないと困るだろ?これはそのためでもあるんだ。荒利が残らないと、他の駅を建設する費用にも回せないからさ」
 鋭利目的なんですか?と首を傾げる詩穂に、他の建設費用などのために貯蓄しなきゃいないんだ、と説明する。
「荒利とは売上げから引いた利益のことで、これから必要になる経費を貯めておいたほうがいいんじゃないか?」
「確かに…店にしても、1万やそこらかじゃ済まない額だしな」
 客に来てもらうだけじゃなく、この先のことも考えなきゃな、と光が言う。
「それともしも…。ピラニプラの途中の駅を造る機会があったら、ゆくゆくは温泉施設もあるといいんじゃないか?魔列車のコンセプトは、ゆっくり旅をする感じみたいだし」
「足湯とかでもあれば、列車の出発前までには戻れそうか?」
「うん、それだと停車時間を少し長くするといいかもな。俺からの提案はこれくらいだ」
 エースはプランを提案し終わると、光がすぐ話始められるように、プレゼン資料の画面を切り替えた。






「えーっと…俺的には遠方の客だけじゃなく、地元の人も観光に来たくなる瀟洒なヴァイシャリー風味にしたいと考えている。」
「ヴァイシャリー風?それならレンガをこう組んで。そこにアーチを作ればらしくなるんじゃないか」
 ラデル・アルタヴィスタ(らでる・あるたう゛ぃすた)はPCのペイントソフトを起動させ、その雰囲気をマウスで描きスクリーンに映した。
「へぇー…じゃあ、もし作業するとしたらやってくれるのか?」
「何言ってるんだ、そういうのは光がやるんだろ」
 彼がやるのが当然のように言い放ち、駅の改札の予想図を描く。
「駅にするんだろ?なら、外観を良くするだけじゃなくて、人の流れを意識しないと駄目だ。こっちで切符を買って、こっちで切符を確認して、こっちから乗るように……とか。」
「改札に入る人と、そこから出る人が使う箇所を分けた方がいいのか」
「それとは別に、貨物輸送を担わせるんなら、荷の取り扱い場所を作らないと。これは、旅客の動線とはぶつからないような場所に作るんだよ」
「うーん…輸送するかは車両数にもよるな。静麻、車両数はいくつだ?」
「運転車両はまぁ1両なんだけど、客車として使われていたのが6両あるな。車内をどうしたいか要望もあるだろうから、貨物分までは厳しいかもな」
 パラミタ内海で発掘担当をしていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)が、光に車両数を教える。
「すでに出ているのか?静香にでも聞いてみるか」
 会議室代わりに使っている部屋の傍を桜井静香が通りがかり、車両について要望が出ているのか聞いてみる。
「今、皆と駅の建築について相談しているんだが。車両をどう扱うのか決まっているか?」
「いくつかアイデアはもらっているけど、まだ検討中だよ。決めたのは食堂車だけかな。検討中なのは寝台車かな。僕は客席として使う場所も欲しいね」
「貨物運搬の方はどうするんだ?」
「食堂車用の食べ者とかは停車駅で補充しような、って考えてるよ。冷蔵庫も何台か用意するみたいだし。寝台車があれば荷物を置く場所にも困らないから、その辺りの心配はいらないかな」
「まぁ、それ以外の用途として必要じゃないかと思ってな」
「うーん…そういうのは考えてないかな。せっかく考えてくれたのに、ごめんね」
「いや、念のため聞けてよかった。プランを説明している途中だから戻るな」
 桜井静香との会話を終えた光は部屋へ戻った。
「静香と話してきたが、貨物輸送のことは考えていないらしい。俺からの提案としては、改札の利便性と…。ヴァイシャリー風にしたい、ということだ」
「レンガ造りの感じはなんとなく分かるけけど。アーチってやっぱり花とか…そういう植物系か?」
「魔列車が再び地上を走るわけだし、造花はちょっとナイな」
 話の内容をまとめている静麻に聞かれ、開通式も兼ねるわけだし、本物の植物を使いたいと言う。
「手入れの手間などを考えると、どんな植物にしたいかとか。それかまったく違う感じにするか、後々相談し合えばいいか」
「俺の話は以上だが、まだ提案する人はいるか?」
「私からも少し話しがあります。いざという時のために、物資などを蓄えておく必要があると思います」
 環菜との話の内容を一部伏せて、地下室の貯蔵庫の話をする。
「そしてこれはパートナーからの提案ですが、彼の意見と合わせますと…。駅弁に必要な材料なども、保存しておくスペースが欲しいですね」
「へぇ〜、地下室か!いいなっ」
「はいはーい!オレの意見がまだだよっ」
 ビシーーッと片手を挙げた羅儀が、例の提案をする。
「案内のコンパニオンは女性で揃えて欲しいね。美人女性車掌は絶対必要!」
 白竜が言ってくれたことは賛同者が多そうだが、羅儀のアイデアは煩悩特急に乗車して出発したような感じだ。
 あっさりと無視されてしまったため、自分で発言することにしたようだ。
「美女は美女でも、いざという時のために。戦闘に備えた鍛錬をおこなっている者がいいですね」
「えぇえー!!そこを気にするってどんだけだよ!?鍛錬っていうか…適度に痩せてて、スタイルがイイ人を希望したいよ」
 真顔で言う白竜に羅儀はイメージを訂正しようと、声のボリュームを上げる。
「多少のダメージを受けても、傷つかない感じの人でしょうか?」
「なんか白竜が言うと、腹筋とかめちゃくちゃ割れてそうでイヤだね」
「あー…それでいいんじゃないですか?よからぬことを考える人が、その彼女を見れば諦めるかもしれませんし」
「ありえなぁあああい!!オレの美人コンパニオンと車掌に、筋肉属性はいらないからっ」
「ま、まぁ…美人さんとかは、志願者の人を待つしかないな。お弁当のアイデアは凄くいいと思うから、後々皆で考えようか」
 このままじゃ収拾がつかなくなりそうだと思ったエースが、横から口を挟む。
「私も1つ思いついたことがあるから聞いてくれる?改札の話はさっき出たから、誰でも駅前ライブが出来ちゃうステージの設置を提案するわ」
 いつの間にやらポスターまで作ったラブ・リトル(らぶ・りとる)は、完成予想図を皆に見せる。
「後、キレイとか美しいイメージもいいんだけど。そこに可愛らしさがあってもいいじゃないかしら」
「それも悪くないけどな。まずは皆のプランを合わせないといけないからさ」
 乙女パワー全快の様子にエースが検討するよ、と言う。
「構内にもライブ会場が欲しいの!終電が終わって帰れなくなった人も朝までここで楽しくいられるわよ♪」
「―……構内ライブ会場?そんなに必要なのだろうか。ラブ…さすがにこれは趣味に走りすぎているのでは…」
 駅の面積をほとんど利用しているじゃないか、とコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)がラブに注意する。
「ぼーっと待ってるよりも、そこに集まって夜明かしした方が時間が経つのも早く感じるはずよ!」
 中には必要ないと言われたように聞こえた彼女は眉を吊り上げ、怒り顔をして大きな声を上げる。
「いや、悪いアイデアかどうかは私には判断がつきかねるが、とりあえず駅の三分の一のサイズは必要ないと思うのだが…」
「えー…皆はどう思う?」
 賛同者を集めて意見を通そうと、黙ってしまった皆をじっと見る。
「そこまで造るのは人数もそれなりに必要だから、残念だけど今は無理かな。他の場所が造る時間がなくなっちゃうからね。それと、そのサイズはちょっと無理だけど、駅舎の外なら若干スペースがあるからそこに設置してくれるとありがたいかもな」
「他の作業が滞るのも困るし…。かといってライブも諦めたくないわっ。仕方ないわね…とりあえずそこにするわ」
「(さすがエース、大人の対応でラブを頷かせるとは!)」
 やんわりとした口調でラブの暴走を止めた彼の言葉に、コアは感嘆の息をつく。
「すでに駅の位置は決まっているのだね」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は停車場所はヴァイシャリー南湖なのか…と呟いた。