蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

パンツ四天王は誰だ?

リアクション公開中!

パンツ四天王は誰だ?

リアクション

 
「まったく、どさくさに紛れて何をするんですか。いいですか、いいかげんその癖を直さないと、今に大変なことになりますよ」
 ちょうどいいとばかりに、突っ伏した樹月刀真に、封印の巫女白花がお説教を始めます。
「だいたい、こういう公衆の面前でなく、もっと人目のない所でしたら私だって怒ったりしませ……えっと、あれっ、あれっ!?」
 言ってしまってから、周囲の驚いた視線が一斉に注がれたのに気づいて、封印の巫女白花が顔を真っ赤にしてうつむきました。
「ほほう、そうであれば、封印の巫女も……」
 気絶している樹月刀真を蹴飛ばして上をむかせると、玉藻前が封印の巫女白花のスカートをめくりました。
 おおおーっと、先ほどよりちょっぴり大きなどよめきが起きます。すかさず、漆髪月夜がきっと睨んでそれを黙らせました。
「うむ、月夜とお揃いだな。やはり、先日、月夜が刀真の財布を持ち出して買ってきた物であるな。ちゃんと着ているとは、律儀であるのう」
 うんうんと、満足したように玉藻前がうなずきます。
「何をするんですか。もう、玉藻さんも、そこに座ってください。ええと、月夜さんも月夜さんです。ホントに、勝手にお財布使ったんですか?」
「刀真の財布は私の物」
 しれっと漆髪月夜が答えました。
「それでいいわけないでしょう。みなさん、そこに正座してください」
 怒った封印の巫女白花が、三人をならべて説教を始めました。とはいえ、樹月刀真はあおむけで倒れたまま白目をむいています。本来なら、封印の巫女白花のスカートの斜め前というベストな位置なのですが、いかんせん気絶したままです。
「これでは、刀真も浮かばれまい。どれどれ、我の胸で頬を叩けば気がつくかな?」
 玉藻前が、これ見よがしにたっゆんな胸を樹月刀真の顔に近づけました。
「玉ちゃん、そういうことしないの!」
 怒った漆髪月夜が、かがんだ玉藻前にジャンピングエルボーをかましました。
「きゃん!」
 不意をつかれた玉藻前が、樹月刀真に頭突きをしてひっくり返りました。
「ああっ、刀真さん、玉藻さんに、き、き、き、キスを……」
 誤解した封印の巫女白花が悲鳴をあげます。でも、樹月刀真と玉藻前のおでこにできたでっかいコブは、如実に狙いが逸れていることを物語っているのですが、誰もそのことに気づきません。
「刀真! 許さない!」
 漆髪月夜が、封印の巫女白花とともに、ゲシゲシと樹月刀真を踏みつけました。
「さすがだ。わざわざ踏みつけられて、下からパンツをのぞくなど。みなさん、彼を見習おうではありませんか。いかなる犠牲を払ってでも、パンツは見る価値のある物なのです」
 それまで呆気にとらわれて見守っていた武神牙竜が、一気に気をとりなおして語り始めました。
「いいえ、あれこそが、哀れなパンツ信奉者の最期なのです。みなさん、下をむいてはいけません、上を、おっぱいを見あげようではありませんか」
 負けじと、葛葉明が言い返しました。
「おう、その通りだぜ。パンツ四天王がなんぼのもんだ。時代は、おっぱい四天王の時代だぜ!」
 観衆から飛び出したゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が、樹月刀真を踏みつけて葛葉明に賛同しました。
「ああっ、刀真に何をする!」
 自分たちのしていたことを棚に上げて、漆髪月夜とゲブー・オブインたちが樹月刀真をふみふみしながら戦い始めました。
「さあ、大変なことになってしまいました。単なる演説から始まったはずなのですが、現在、パンツ番長派、おっぱい番長派、両方ほしい派での乱闘に発展しています」
 マイク片手に、風森望が叫びます。盛りあがって参りました。
「まさに、これが現在の空京の縮図だよ。ここから、どの派閥が生き残るかが見物だね」
「はあ、そういうことなんですか? 解説のブルタさん」
 もう仕方ないので、解説だと認めたブルタ・バルチャに、風森望が訊ねました。
「でも、ルールのない戦いでは決着はつかないんだよ。ここは、四天王会による公式ルールが必要だね。とりあえず、パンツ四天王、すなわちP級四天王を名乗るのであれば、手に入れたパンツの数、そしてその質を点数化して、一定の点数を取った者だけが名乗れるとしてはどうかな」
「はあ、では、これから点数化していきましょう。おせんちゃん、データ表示大丈夫?」
「ばっちり」
 伯益著『山海経』が答えました。
「まったく、ついていけないぜ」
 だんだんと何が起こっているのか分からなくなって、無限 大吾(むげん・だいご)が頭をかかえました。
「まったく、どいつもこいつも、考えが、あめーぜ、あめーぜ、あめーぜ!」
「確かに、甘いですね。愛は、全ての下着に同等に与えられるべきなのです。汝、パンツを愛せよ。さればブラも与えられん」
 すでにパンツ四天王である南 鮪(みなみ・まぐろ)の横で、ジーザス・クライスト(じーざす・くらいすと)が大きく両手を広げて言いました。
「だいたい、昨日今日で四天王になれるわけねえだろうが。こういうことは、下積みがでいじなんだよ、下積みがよお」
 余裕綽々で言う南鮪のそばを背中にPアームを背負ったPモヒカンたちが通りすぎて行きました。
「おおう、俺たちもパンツ争奪戦に参加するぜえい」
 すでにこの場で起きていることを勘違いしていますが、案外外れてもいないようなので、なし崩しにパンツ争奪戦が始まってしまいました。
「きえええーい!」
 いきなりテーブルの下から上をのぞこうとしたPモヒカンを、葛葉明が野球のバットで殴り倒しました。
「さあ、パンツをよこしやがれ」
 倒しても倒しても、モヒカンにパンツを被ったPモヒカン族がやってきます。
「ええい、お前たちはパンツを欲しがってはいるが、それだけだ」
「なんだと!?」
 突然問われて、Pモヒカンたちが怯みます。
「お前たちに絶対的にかけている物がある。それは、パンツに対する感謝の気持ちだ。お前たちは、心に感謝というパンツを穿いているのか?」
「パンツは、穿くもんじゃねえ。被るもんだ!」
「待て!」
 そこへ、クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)がパンツ一丁の姿で現れました。
「確かに、この人の言う通りだねぇ。お前たちに愛はあるのかぁ。パンツに捧げる、最高の愛がぁ。俺にはある。だから、俺は、このパンツしか愛さない。他の布きれなど必要ではないのだぁ。お前たちぃ、もう一度心のパンツを穿きなおせぇ」
 パンチ一丁の姿で、ちょっと腰をくねくねさせながらクド・ストレイフが熱弁しました。
「助けてくれたのかしら?」
 たとえ露出狂でも、助けてくれたのならばお礼をと葛葉明がちょっと思います。
「大丈夫かぁい、お嬢さん。さあ、俺のパンツを見てくれぇ」
 くねくねしながら、クド・ストレイフが言いました。
「えっ、えっ……」
 さすがに、目を逸らしきれずにクド・ストレイフのパンツを見つめてしまい、葛葉明がちょっと顔を赤らめました。
「ふっ、堪能したかあぃ。なら、ギブアンドテイクだ。そっちのパンツも見せてもらおう」
「ええっ!? いやあ!」
 言うなり、クド・ストレイフが葛葉明のワンピースをまくり上げました。パンツが丸見えになります。
「おおっと、葛葉明選手逃げだしました。しかし、パンツ男のクド・ストレイフ選手、それを追いません」
 伯益著『山海経』の検索した学生のプロフィールを確認しながら、風森望がマイクにむかって言いました。なんだか、彼女の中では戦っている人間全てが、パンツ四天王戦参加の選手ということになっているようです。
「紳士だな。目的を果たした以上、それ以上のことはしない。余裕がうかがえるんだな」
 中継する風森望に、ブルタ・バルチャが答えました。
「おおっと、クド・ストレイフ候補に100点が加算されました。ほかのPモヒカンたちも、パンツを気にせず戦う漆髪月夜選手をバッチリと拝んでポイントを加算しているようです。おおっと、こちらは極力隠しながら戦う封印の巫女白花選手、こちらをのぞいたPモヒカンは高得点をゲットしているようです。一方、気絶している玉藻前選手は見放題なので、大したポイントがもらえていません」
「努力なくして、この果てしないパンツ坂は登れないんだよ」
 うんうんとブルタ・バルチャが風森望にうなずきます。
「一方の武神雅選手、武神牙竜選手を人間の盾として使い、全てのPモヒカンたちを撃退しています。すでに、武神牙竜選手ボロボロですが、いっこうに構っていません」