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ブラッドレイ海賊団2~その男、ワイバーンを駆る者なり~

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ブラッドレイ海賊団2~その男、ワイバーンを駆る者なり~

リアクション

「雅羅ちゃん、無事だといいんですけどぉ……」
 冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)とパートナーの冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)は雅羅を救うため相手の船へと乗り込むつもりであったが、空からも襲い掛かってくる敵に対し、空で戦うことを決めた。
 日奈々は箒のような形状をした乗り物――エターナルコメットに乗り、千百合は光を放射、収束固定することで鋭角な光翼を作り出す光翼型可翔機・飛式で飛ぶ。
 更に日奈々は、全身が火に包まれた鳥――フェニックスと、電気を帯びた巨大な鳥――サンダーバードを召喚して、戦いに備えた。
 千百合も物理的、魔法的両方の防御力や属性に対する耐性などを己だけでなく、日奈々の分まで上昇させると、向かってくるレッサーワイバーン乗りに、背中に展開する光の翼から、刃を放った。
 咄嗟のことで乗り手が避け損ねた刃は、レッサーワイバーンの身体に突き刺さり、更に冷気を見舞う。
 悲鳴のように啼くレッサーワイバーンを宥めた乗り手は、手にしたランスを日奈々に向けて、振るってきた。
 彼女を庇うように千百合が間に割って入る。痛みを受けはするものの、出来うる限りの手段で防御力を上げている彼女には、微々たるもののようであった。
「千百合ちゃん、避けてくださいですぅ!」
「分かったわ」
 日奈々が、炎術と氷術を同時に操り、炎熱と氷結の魔法を放つ。
 それを千百合がギリギリのところで交わすと、彼女の後ろから突然現れた魔法に乗り手は即座に反応することが出来ず、炎と氷に包まれた。
「熱ぃっ! がっ! 冷てぇっ!」
 どっちだと訊ねたくなるような声を上げる乗り手に、追い討ちを掛けるように、フェニックスが炎熱の魔法を、サンダーバードが光輝と雷電の魔法を放つ。
「ぐあぁっ!」
 更なる痛みをレッサーワイバーンごと受けた乗り手は、共に海へと落ちていった。



 レッサーワイバーンを駆る亜璃珠の後を、パートナーのマリカが小型飛空艇に乗って追う。
 向かい来るブラッドレイ海賊団のレッサーワイバーンの乗り手に向かって、亜璃珠は、自分のほうが食物連鎖における上位存在であると悟らせるような空気を放つ。
 その空気に怯んだ乗り手に向かって、マリカが同時に2つのエネルギー弾を放った。
 エネルギー弾は、左右に分かれて乗り手の両サイドから襲い掛かる。
 その隙に、亜璃珠は相手の上空、太陽を背にする形で飛翔した。
「上にっ!?」
 驚き、思わず顔を上げた乗り手は、太陽のことを忘れていた。
 眩しさに目を細めた相手に対し、亜璃珠はレッサーワイバーンの背から跳躍し、強力な突きをお見舞いする。
「ぐはっ!」
 痛みに揺らいだ相手のレッサーワイバーンから、自分の仔に飛び移ると同時。
 相手は意識を失ったようで、手綱から自然と手が離れ、落ちていく。相手のレッサーワイバーンはそれを追い、降下していった。



「雅羅さんを助けに行くよ!」
「分かったわ、ユッチー!」
 瑠兎子の運転する小型飛空艇に車のボディを架装したエアカーに、夢悠と2人で乗り、ブラッドレイ海賊団の船へと向かう。
 彼らが向かうは、ランスロットの傍に居るという雅羅のところだ。



 人の少なくなった船内で、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)はパートナーのシメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)と共に、アーダルベルト・グアハルドを探して歩き回っていた。
 前回、アーダルベルトと交渉し、ブラッドレイ海賊団に協力することになったゲドーではあるが、そのとき、表立って行動することのなかったため、今のところバレた様子はなく、ラズィーヤからの依頼を受け、“黒髭”の海賊船に乗ることが出来た。
 このチャンスを利用して、アーダルベルトを救出しようと考えたのだ。
 捕まっていた間、もしかしたら彼が自分のことを話しているかもしれない。連れ出す途中で話すかもしれない。
 そう考えて、破壊工作の技術で以って、爆薬を仕掛けたりしながら、船内を歩き回る。
「アーダルベルトちゃん、元気してる〜?」
 船の奥の方の一室で、彼を見かけたゲドーは声を掛けた。
「ん? ああ、お前さんか。こんなところに閉じ込められて元気しているわけがなかろう?」
 気付いて顔を上げたアーダルベルトはからりと笑いながら応える。
「んで? 迎えにでも来てくれたってのか?」
「その通り。まずは外へ向かおうか」
 誰かとすれ違ったとき、誤魔化すことが出来るように、アーダルベルトの身を縛る縄はそのままに、ゲドーとシメオンは、彼を連れて、部屋を出た。

 誰ともすれ違うことなく外までは出てこれた。
 けれどもそこからも難なく逃げ出せるワケではない。
「何をしているの!?」
 仲間たちの後方でフォローに回っていた明子が、ゲドーたちに気付く。
「いや、あっちが人質使うなら、こっちもアーダルベルトちゃんを利用しようってね?」
 ゲドーは誤魔化すために用意していた言葉を並べるけれど、明子がそれだけでそうですかと通しはしなかった。
 彼女は、梟雄剣ヴァルザドーンを構える。
「ゲドー、逃げるのだよ!」
 そう告げて、彼らの前にシメオンが立つ。
「逃がしはしないわ!」
 構えられた梟雄剣ヴァルザドーンから、レーザーが放たれる。
 それが襲い掛かるよりも先にゲドーが呼んでいた機械でできたドラゴン――ジェットドラゴンがやって来て、彼とアーダルベルトを乗せた。
 放たれたレーザーは空を貫き、海中へと消えていく。
「それでは〜」
 避けたゲドーは、ジェットドラゴンを駆り、飛び立った。
「待ちなさいよ!」
「あなたの相手は私であろう? 余所見をするのではないのだよ」
 意思を持った動く石像――ガーゴイルに乗り、立ち塞がるシメオンに邪魔をされ、明子は彼らを追うことが出来ない。
「邪魔しないで!」
 サイドワインダーの要領で、明子はレーザーを二連撃ちし、シメオンへと詰め寄る。
 シメオンは火炎を操り、彼女が攻め寄るのを防ごうとするけれど、1歩遅かった。
 彼女の振るう梟雄剣ヴァルザドーンが見事にシメオンの身体を斬り、極めて大きな一撃を与える。
「っぐ」
 その一撃を耐え切ることが出来ず、シメオンはガーゴイルごと落下していく。
 立ちはだかっていた彼が落ちることで道が――空ではあるが――開かれるけれど、追おうと辺りを見回しても、既にゲドーたちの姿は見えなかった。
 明子は、それを伝えるべく、船へと戻る。



「雅羅ちゃん、どこにいるのかな? どこかの船にいるんだろうけど……」
 虹色の尾を引きながら空を飛ぶ箒に跨り、海上の高いところを飛ぶのは七瀬 歩(ななせ・あゆむ)だ。
 集まっているブラッドレイ海賊団の船を見回して、一番大きく立派な船を捜す。
 中央にある船が一番大きな船だと確認した歩は、少し高度を落としつつ、近付いた。
 歩が近付いて来たことに気付いた海賊団員たちが、砲台の先を向ける。
「撃てーーーー!!!」
 そして、間髪いれずに、砲弾を放ってきた。
「きゃああっ!」
 放たれた砲弾は放物線を描きつつ、歩に向かう。
 その砲弾をギリギリまで避けることなく、そして、避けるのも砲弾に撃ち落されたように見えるように工夫しながら、歩はそれを避けると、箒ごと海へと落ちていった。



 墜落したと見せかけた歩は、空飛ぶ魔法↑↑で飛行し、更に特殊なフィルターを貼った布を纏って自身の姿を視覚的に感知できなくする、光学迷彩の力で姿を隠すと、あたりをつけていた船へと忍び込んでいた。
(雅羅ちゃんのこと話してる人がいるかも。雅羅ちゃん美人だし、興味ある人多いんじゃないかなぁ?)
 そう思いながら、歩は海賊団員たちが集まっていそうな場所を目指す。
 黒髭海賊団の船からブラッドレイ海賊団の船へと学生たちが渡っている今、団員たちは甲板へと出ていく者が多く、すれ違うこともあるけれど、光学迷彩の力もあり、音を立てないよう、通路の端に避けてやり過ごすことで、気付かれずに居た。
 そういったことから、船内に残っている団員たちも少ないようだが、それでも集まるところには集まる、話が聞けるかもしれない、と歩は船内を歩いて回った。