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続々・悪意の仮面

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続々・悪意の仮面
続々・悪意の仮面 続々・悪意の仮面

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第五幕 ストリートファイター!〜男の娘の戦い〜


一方、その頃のヴァイシャリーの街中
泉 美緒(いずみ・みお)を追っていた蔵部 食人(くらべ・はみと)は別のパーティーに遭遇し、足を止めていた。
追跡より、足止めを選んでしまった理由は、そのうちの二人の様相である。

 「男の……ネコ耳メイド……だと?」
 『好きでやってるんじゃないっ!』

食人の言葉に二人が声を揃えて抗議する。

 「あらあら、あさにゃんが男だってわかる人がいるなんて、こんなにかわいいのに〜♪」
 「抱きつくなよ!もうこの姿は未だに慣れないんだ…もう何回目だっけ?」

男メイドの一人榊 朝斗(さかき・あさと)の憮然とした顔に、パートナーのルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)が朝斗に抱きつく。
猛然と抗議しつつ、これまでの自分のメイド歴を思い出し悲嘆にくれる朝斗にアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)がフォローを入れた。

 「13回です。今回は百合園女学院に潜入の可能性もありましたので、止むを得ない選択かと」
 「そこ真面目に突っ込まない!ネコもメイドも女装には関係な……だからはなれろってルシェン!」
 「きゃ〜怒った姿もか〜わ〜い〜い☆」

突然始まっている朝斗達の騒ぎに言葉も出ず呆然としている食人に、もう一人の男メイド高峰 雫澄(たかみね・なすみ)が声をかけた。

 「お騒がせしてゴメンねぇ〜。
  ちょっとある騒ぎに知り合いが巻き込まれている可能性があって、街を見回っていたんだよ」
 「……それは悪意の仮面の通り魔の事か?」
 「アタリ!ひょっとして君も?」

雫澄の問いに食人が頷く。

 「そうかぁ、思った以上に今回の仮面の騒ぎも大きくなっているみたいだねぇ。
  偶然この街に来て仮面の事を聞いたんだけど。どうやら知人が通り魔になってるっぽくて。
  ホントは普通に探したいんだけど、みんな強い人でね〜。
  うちのパートナーも手合わせできるってテンションが変にあがっちゃって。なんか囮操作をする事になったんだよ」
 「なんとなくわかった。あの仮面ビキニ……メイドまで襲う趣味があったのか」
 
食人の問いに雫澄が首を傾げる。

 「仮面ビキニ?何のこと?それに知り合いは一人じゃないんだけど……」
 「……何だって?」

雫澄の言葉に食人が驚いた刹那、傍らにいた雫澄のパートナー、シェスティン・ベルン(しぇすてぃん・べるん)が鋭く空を見上げ口を開いた。

 「話は終わりだ!みんな……来るぞ!!」


言葉が言い終わるや否や、彼らの目の前に派手な衝撃と共に土煙があがった。
朝斗達も揉め事をやめ、煙の奥を見据える。

そんな中、土煙の中から複数の声が聞こはじめた。

 「あらあら?可愛らしい猫耳メイドさんが二人も……そんなに愛に従順でいたいのでしょうかね?
  可愛がりがいがありそうですわ。そうは思いません?ミルディア様」
 「うん、命令に従うのはいい事だよ。真奈…いえごじゅじんさま★」

鞭の風切りと共に現れたのは和泉 真奈(いずみ・まな)ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)
実は主従の関係は逆でミルディアがマスターなのだが、つけた仮面によって顕現した欲望のせいで今の様になってるらしい。

 「あら?そこにいるのは雫澄さん、それにシェスティンじゃないですか?
  私に見合った方が現れるなんて…真奈さん、彼等は私の獲物です……渡しませんよ♪」
 「やっぱり貴様か、セシル・フォークナー。やる気に満ち溢れていて結構な事だ」

続けて指をボキボキ言わせながら現れたのはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)
その様子にシェスティンがネクタイを緩めながら対応。見ていた雫澄がため息をつく。

 「うああ〜早速やる気、全開だよぅ、うちのパートナー…。
  一緒にいるんだろ禁書君。何とかならないのかい?これ……」

雫澄の問いかけに、彼の傍にセシルのパートナーが降り立った。名を禁書 『フォークナー文書』(きんしょ・ふぉーくなーぶんしょ)という

 「良くわかったわね雫澄。私が仮面の影響を受けてないって」
 「仮面を見つけたって被るような君じゃないだろう〜?絶対観察する方に全力を尽くすって」
 「止める理由は無いわね。私が興味があるのは知識のみ。折角だからせいぜい観察させて貰うわ」
 「その方がいい。どうせ相手もその気になっておるのだ。ここは我が相手になろうではないか!」

人型のフォークナー文書の言葉を受けて、シェスティンが仮面の群れに踊りかかる!

 「ちょ、シェスティン!無茶は・・・・あー・・・もう!
  ここは僕達が何とかするよ!食人君だっけ?君も追っているんだろう?別の人を」
 『なにしてるのさ食人君!目標は西前方500メートル!早くしないと捕まえられない!』
 「……わかった、すぐ後を追う!あんた達も頑張れよ!」

雫澄の言葉に本来のミッションを思い出す食人。
丁度そのタイミングで入ったシェルドリルド・シザーズ(しぇるどりるど・しざーず)の通信を受け、食人は戦場を後にした。
移動しながら一つ彼等に聞けなかった突っ込みを胸にしまう事にする。

  メイドはともかく猫耳をつける事が囮に必要なのか…と



 「わたくしの獲物は誰一人とて逃しません!ミルディ、捕らえなさい!」
 「かしこまりました〜♪全速全開!」

真奈の命令に恍惚としながらミルディアが【深緑の槍】を振り上げ、立ち去る食人に襲い掛かる。
守るようにその槍を、朝斗の双拳が弾きあげ、ミルディアの前に立ち塞がった。
そんな朝斗の両脇に、ルシェンとアイビスが続けて並び立つ。

 「貴女達の相手は僕達です!ルシェン!アイビス!」
 「了解です」
 「あさにゃ〜〜ん♪勇ましい姿もかわいい〜!」
 「ああもう!さっさと終わらせてさっさと帰るよ!」

3人のやり取りに動じることなく、対する真奈&ミルディアの二人。
鞭をビュンビュン唸らせながら真奈が言葉を投げかける。

 「ふふふ、愛が溢れていい事だわ……。
  でもわたくしにとって愛とはこの鞭。この味と、熱くなる感覚だけを味わって下されば十分!」

真奈の鞭が3人めがけて唸るのをそれぞれが回避する。
続けざま朝斗に一撃!朝斗がかわした鞭をアイビスが掴み取った刹那
付与されたライトニングウェポンの効果でアイビスの体に僅かにスパークが走る。
だが彼女の顔に動揺の色は無い。

 「この衝撃に顔色を変えないなんて、そのお顔が変わるのを見てみたくなりましたわ!」
 「その要求は戦闘に必要ないので却下です」

真奈の言葉に答えるアイビスの背後からミルディアの槍が襲う、そちらはルシェンの棒が迎撃!
続けて朝斗の双拳が炸裂し、二人に押されたミルディアが余波を受けて転倒する。
苦し紛れに突いた槍撃を【風術】で体ごと吹き飛ばし朝斗が叫ぶ!

 「ルシェン!」
 「はいはい!もらいましたぁ〜!!」

如意棒を頭上で振りかざし【則天去私】の体勢に入るルシェン……だが直前で彼女の動きが止まった。
被弾覚悟で身を縮めていたミルディアが涙目で不思議そうに見上げる。

 「あうううう?」

その姿に物凄く真剣、かつ恍惚とした顔でルシェンが呟いた

 「…………か、かわいい。ぎにゃああああああああああ!?」

……つまり自他共に認める可愛い物好きの血が騒ぎ
怯えるドレス姿の女の子の姿に思わず攻撃が止まったわけで…。

そんな彼女に容赦なく真奈の電撃の鞭が襲い掛かった。
悶絶するルシェンの傍にアイビスが距離をとって寄ってくる。

 「大丈夫ですか?ルシェン」
 「ああああいびすぅ〜もうちょっとちゃんとふぉろ〜ををををを」
 「貴女が不用意に止まるからです。ちゃんと仕事をしてください」

鞭に付与された痺れと熱の効果で、うようよと舌が回らないルシェンの抗議をバッサリと両断し
アイビスは、朝斗に襲い掛かる真奈の鞭を迎撃する為に、その身を跳躍させる。

 「時間が長引けば止めるのは困難になります。一気に攻めます!朝斗、目を!」

朝斗に襲い掛かる真奈とミルディアの前でアイビスの【光術】の光が輝き
続けざまの【煙幕ファンデーション】が炸裂する。

 「く……こんな目晦ましでっ!」

奪われた視界に苦しみながら、真奈達は必死にアイビス達のいる方向に鞭と槍を放つ。
途端に重力の攻撃が二人を襲い、放った攻撃を戻す事ができず二人は膝を突く。
そこに背後からアイビスのワイヤークローが伸び、その体を絡めとった。

 「このわたくしが縛られるなんて…っ」
 「く……くるしいけど、真奈、これ…なんかいいかも?」

 「今です、朝斗」
 「ありがとう!もらったあ!」

クローのワイヤーをコントロールしながらアイビスが朝斗に止めを促し。
高らかに跳躍した朝斗から【真空波】が放たれる!
最小限にコントロールされたそれが、真奈達の仮面に炸裂し音と共に仮面が砕け散った。

 「ふぅ……どうにか終わった……かな?アイビス」
 「お疲れ様です朝斗。まだ騒動は治まっていないようですが、とりあえずの役割は終了かと」
 「そうだね。とりあえず彼女達のケアをした後。次の行動でも考えようか……でもその前に」

そう言ってアイビスと会話をしていた朝斗は
もう一人の残念なパートナーの暴走を止めるため、真奈達の方へ足を向ける事にする。
そこには仮面の呪縛から解かれつつ、まだワイヤーに縛られたまま涙目で震えている真奈達に
ほの暗い笑みを浮かべてカメラを翳すルシェンの姿があった。

 「うふふふふ……さっきは可愛い物を愛でる私の愛を良くも汚してくれましたわね。
  お返しに貴女達の姿、しっかり写真に撮らせて頂きますわ。
  そしてそのお二人の服、次のあさにゃんの衣装の参考に…ふふふ…うふふふふふふ」