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再建、デスティニーランド!

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第四章

「遊園地なんて久しぶりだなー」
 樹月 刀真(きづき・とうま)は興味深そうに周囲を見渡す。
「まあ実地調査と言っても気軽に遊んで感想を纏めれば良いよな」
「その前に《ティータイム》で用意したお茶とお菓子でおやつにしようよ! 今日は私がケーキを作ってきたんだ!」
 そそくさとお茶の用意を始める漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)に、刀真の顔が若干引きつる。
「……えっ、そのケーキ月夜が作ったの? 大丈夫か?」
「わーい! ボク! ケーキ大好きー!」
 だが、一緒に実地調査に来ていた桐生 円(きりゅう・まどか)の言葉に月夜は嬉しそうだ。
「大丈夫。今回はとっておきの小麦粉が手に入ったから料理下手の私でも美味しくできてるよ!」
「とっておきの小麦粉ね〜。まあ試しに食べてみてヤバそうなら止めれば良いか、いただきまーす。あれ? 美味い!」
「美味しいよ。ボクこのケーキ大好き!」
「良かった! 自称薄力粉と自称小麦粉を混ぜて作ったんだ。味見してないけど、レシピ通り作ったから!」
 円と刀真に褒められ、月夜はほっとする。
「うん、美味いうまいウマイ…ツクヨ、トッテモオイシイヨ! さて、早速調査だ!」
「ボクこんなに沢山の友達と一緒に遊園地来るのって初めて!」
「あ、あれ? ふたりとも何も無い所へ向かって話しかけている!? なんだか目つきもおかしいし、どっどうしよう……」
 慌ててふたりを揺すったりつねったりしてみるが、思うような反応が返ってこない。仕方なくそのまま一緒にランド内を回り、戻らなそうであれば助けを呼ぼうと決めた。
「まずは何から行こうか……ん? 海賊船? 円ちゃん、トシとシキが海賊船に乗りたいって」
「じゃあまず海賊船に行こうよ。友達の意見は大事にしないと!」
 がたっと立ち上がった二人に月夜は驚いた。
「え、えええ、だ、誰、トシとシキって……」
「ほら月夜、行くよ」
「う、うん」
 3人で海賊船に並んでいると、後ろにカップルが並んできた。
「ちょっと! ここ並んでるんだから横から入らないでよ! 知美ちゃんとかちょっと自己主張が出来ないから
文句言えないけど! 今でも泣きだしそうじゃないか! 酷いよ……」
 そう言って泣き出してしまう円。誰もいないほうに向かって何度か頷くと、泣きながら続けた。
「えっ、知美ちゃん? 私が我慢すればいいんだからいいって? 駄目だよ! 友達なんだから!」
「そうだよ!」
「えええ、やっぱり刀真まで……」
 首をかしげながらカップルが去ってしまい、月夜がおろおろとしていると、後ろから声が響いた。
「あー、いたいたー。まどかちゃんにとーまおぢさん……お友達おいてったらダメでしょー? 人数多いほうが楽しいと思って、私8人、ナコちゃん7人、ラズンちゃん5人連れてきたよ」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)の言葉に円が顔を上げる。
「み、みんな! ボクのために来てくれるなんて嬉しい!」
「これだけ集まるとクラス会みたいだね」
 飛び上がらんばかりの勢いで喜ぶ円と刀真に、アルコリアは満足げに微笑むと、ふとシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)のほうを見て目を細めた。
「シーマちゃん? 一人も連れてこないってどういうこと……?」
「誰も連れてこないなどと、信じられませんわね」
 ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)も冷たく言い放った。
「お前ら何を言ってるんだ……? 円も刀真も、そこには誰も居ないぞ? アルも、ナコトもラズンも……何も連れてないだろう」
 シーマの言葉に一瞬場が静まり返った。月夜だけが顔を上げたが、何も言わずに場を見守ることにする。
「シーマ? 見えませんの……? 呆れたポンコツですこと」
「確信は見える見えないじゃないよ。オマエが、オマエ達がそう思うなら、そうなんだ。きゃはは」
 ナコトとラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)の言葉にシーマはますます首を傾げる。
 光化学迷彩というなら、殺気看破なりで見破ることができるだろうと考えるも、苦手科目の勉強の最中連れてこられたため、殺気看破含め何もセットできていなかった。
「まぁ……まどかの友人らしいのはいるよな、ナコトが連れてきた……お前らの言う友人はそのフライングヒューマノイドの事でいいのか?」
 シーマがそう呟いた途端、ナコトはフライングヒューマノイドを【非物質化】で消した。
「……何を? そのような人物は何処にも居ませんわよ?」
「……消え……た? いや、待ておかしいだろう。確かに居た……居ないってそれはお前らの言う、友人だろうが!」
「シーマは残念な頭の回路をしてるんだね。それでよくラズン達に『人としてどうだ』とか説教できるね。ロクデモナイ人間の模範みたいで良くできてるね、きゃはは」
「なんだと!?」
「きゃはは、トモダチ? 友達? 見える、見えない、大事なこと? 赤い石ころを100人に見せて100人全員がこれは青だと言ったらもう、それは赤い石ではないんだ。真実の脆弱性、ただそれだけの話じゃぁないか」
 歌うように真理を告げるラズンの言葉に、シーマはますます混乱する。
 その隣では円と刀真がたくさんの友人たちと盛り上がっており、アルコリアも楽しげにそれを見守っていた。
「さ、いきましょ」
 順番が回ってくると、アルコリアが一同を促して海賊船へと乗り込む。その瞬間に軽くキャストに目配せをした。これまでのやりとりで状況を把握していたキャストは軽く頷くと、円、刀真、月夜、アルコリア、ナコト、シーマ、ラズンが乗り込んだタイミングでチェーンをかけた。
「みなさん人数多いので貸し切り状態ですね。それでは、良い旅を」
 そう言って手を振りながら送りだす。
「何を言っているんだ? まだ全然空き席あるじゃないか」
「シーマちゃん、かわいそうに……」
 アルコリアの哀れみの目に晒されながら、混乱したままのシーマたちを乗せ海賊船は出航するのだった。
「どうしてこうなった……」
 呟くシーマを見て、正直月夜も同じことを思っていた。

「次は、暗闇のナカを走るコースターに乗りたいの!」
 リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の手を引き、コースターを求めてランド内を駆け回っていた。
 数日前。たまたま見かけたチラシでデスティニーランドのことを知ったリリアは、初めて聞く「遊園地」という言葉の意味をエースに聞いた。
 実際に体験したほうが早いと考えたエースは、こうしてリリアと共にデスティニーランドを訪れたのだ。大人しいアトラクションが好きかと思っていたが、当のリリアはパンフレットを見るなりコースター系に食いついた。
「きゃーーーーーーっ!!」
 乗ってみて怖がるようならきちんと守らねばと思いつつ隣で見守るエースだったが、リリアは驚くほどコースターを楽しんでいた。
「面白ーい! 楽しい! 他のも乗りたい!!」
 目をきらきらさせながらそう言うリリアを見てエースも嬉しくなる。
「それじゃ、カラミティコースターに行こうか」
「楽しみー!」
 興奮するリリアを優しく見つめながら、エースは、リリアや他の女性に怪我がないようしっかり気をつけておこうと気を引き締めるのだった。

「わははははー! 遊園地とか久しぶりよのー! ナカノさん、おもっきし遊ぼらー! まずはスピード系にしよらー!」
 エースたちが去った直後、さらにテンション高くスピード系を求める由乃 カノコ(ゆの・かのこ)ナカノ ヒト(なかの・ひと)とともにコースターに乗り込む。
 座席に座ると、ナカノは着ぐるみ腹部の綿を上に寄せて上げた。
 コースターがスタートし、速度が上がるごとにカノコのテンションもさらに上がっていく。
「ヒャッハー!!」
 コースターが一気に下りに入った瞬間、ナカノの腹部の綿でスッカスカになっていたセーフティーバーから、二人の身体がぽーんと浮き上がった。
「ヒャッハーーーーーーーーーーーー!!」
 そのまま地面に落下し動かなくなった二人に、慌ててランド内のキャストたちが集まってくる。
 が、声をかけられる前にカノコがむくりと起き上がった。
「……さて、次は落ち系や! ナカノさん、ウォーターフラッシュ行こらー!」
「今充分落ちたアル」
「ナカノさん、おもろいこと言うやん!!」
 そのまま凄まじい勢いでウォーターフラッシュに向かっていった二人に、集まっていたキャストは顔を見合わせ、そのまま持ち場に戻っていった。