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アラン少年の千夜一夜物語

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アラン少年の千夜一夜物語

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「まだ寝てない悪い子はどこかなぁ〜?」
 次の夜、やってきたのは背中に自作の白い羽をつけた朝野 未沙(あさの・みさ)だ。
「おお! そなたは守護天使なのか?」
「ううん、残念ながら違うよ。普通の人間」
「では、その背中の羽は? ああ、これ?」
 未沙が背中を向けると、背中の羽がちょっと大きくなった。
「可愛いでしょ?」
「うむ! どうなっているのか非常に興味がある!!」
 アランは未沙の羽が気に入った様子。
 目一杯瞳を輝かせて食い入るように見ている。
「ふふ、あたしお手製なんだから♪」
「なんと!! そちは器用なのだなぁ」
「機晶姫の修理屋もやってるからね」
「ほほう!!」
 アランはもう22時すぎだというのに、どんどん目がさえてきてしまっているようだ。
「っと、この話はここまでにして、本題に――」
「もっとそなたの話を聞きたかったのに……残念だ」
「まあ、まあ、そしたら今度お店に遊びにくればいいじゃない」
 しょんぼりしていたアランだったが、未沙の言葉に顔を上げる。
「良いのか!? 本当に遊びに行ってしまうぞ?」
「別に構わないわよ」
 未沙が軽くそう答えると、アランはベッドの上を飛び跳ねながら喜んだ。
「アラン様、お行儀が悪いですよ」
「む、すまん」
 アランが大人しくベッドに座ると、セバスチャンは温めたミルクを差し出した。
「あなたもいかがですか?」
 未沙はセバスチャンが勧めた椅子に座り、カモミールティーを受け取る。
 それを飲み終わると、未沙は立ち上がり少しだけベッドから離れた。
「物語を聞かせてくれるのではないのか?」
「うん、そうなんだけど、あたしは歌劇を披露しようかなと思って」
「ほほう、過激とは!」
「それ、漢字が違うわよ。歌の劇で『歌劇』」
「う……それくらい知っておる! バカにするでない!!」
「ああ、ごめんね。そうよね。さって、それじゃ始めるわよ」
「うむ!!」


『カルメン』



♪前奏曲


 ……。

 …………。

 ………………。

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 たったワンフレーズを歌っただけだったのだが、アランはぐっすり夢の中へと落ちてしまった。
「うん、ばっちり♪」
 『子守唄』のスキルを発動させていたのだ。
「慣れていらっしゃるのですね」
「そう? 普通じゃない?」
 セバスチャンの言葉にあっさり答える未沙。
「まあ、起きたら怒り出しそうだけどね。そしたら、お店に遊びにくればいいよ」
「わかりました。本日はどうもありがとうございました」
「ううん。じゃあ、執事さんもお仕事頑張ってね」
 未沙はそれだけ言うと帰路に着いたのだった。