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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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「電話? ……クリスタリアさんからか」

 安宿前に立つ陽一の携帯電話が突然鳴り始め、相手を確認すると同じように聞き込みをしているノーンだった。

「そんなことが分かってるのか。こちらは……」
「今ちょうど、犯人がいると思われる場所にいる」
「……分かった」

 陽一はノーンと落ち合うことにしてから電話を切った。

 しばらくして、お菓子を片手に持ったノーンが現れた。
「酒杜先生!!」
「行こう。……って」
 再び携帯電話が鳴り始め、慌てて陽一は電話に出た。

 今度の相手は
「相沢さんか。うん、そこに絵音ちゃんがいるんだな。ナコ先生の番号か」
 捜索を頼んだ洋からの電話だった。絵音の居場所を告げ、ナコ先生に電話をするから番号を教えてくれというものだったので陽一は速やかに知らせてから携帯電話を切った。

「やっぱり、この宿で間違いないんだね。急ごう、酒杜先生」
「あぁ」
 二人は洋に教えて貰った部屋に急いだ。
 セレンフィリティと絵音が買い出しに行く少し前の出来事だった。

 宿に入り、廊下を歩いていた時、向かいから絵音を連れたセレンフィリティが現れたのだ。

「あれって絵音ちゃん」
「元気そうだ」

 どこをどう見ても絵音に間違いはなく、元気そのものに不審を持たずにはいられない。

「今、お買い物に行くんだよ」

 陽一とノーンを見つけた絵音は元気に声をかけた。

「絵音ちゃん、お友達がみんなスゴク心配してるよ。このまま一緒に帰ろ?」
 元気な絵音に対してノーンは真っ先に帰ることを口にした。ちょうど、部屋から出ているので。しかし、絵音の表情は冴えない。

「まだ、ここにいたい」
「そっかぁ。じゃ、帰って来たらこのお菓子、一緒に食べよう」
 返って来た返事は、残念なものだが時間はまだある。
 とりあえず、大好きなお菓子を一緒に食べる約束をした。
「うん」
 絵音はしっかりと約束を胸に刻んだ。

「相沢さんから部屋にいると聞いたんだけど」
「買い出しよ。絵音ちゃん、お腹空いたみたいだから」
 陽一は聞いた話と違う状況に事情を聞いた。セレンフィリティはあっさりと答え、楽しそうに買い物に行ってしまった。

「……買い出しって」
 出掛ける二人の後ろ姿を陽一はセレアナと同じ心配を抱いていた。尾行されてばれるのではと。
「とりあえず、部屋の方に行ってみようよ」
 ここで突っ立っていても仕方が無いのでとりあえず目的の部屋に乗り込むことにした。

 目的地に何とか到着し、陽一は自分の名前を名乗りながらノックした。

「酒杜陽一だ。開けてくれないか」
「ようやく、来ましたか」

 ドアが開き、洋が現れ、招いてくれた。

「今、外で絵音ちゃんに会ったけど大丈夫なのか」
「……だといいんだけどね」
 室内の賑やかさに現実的な陽一は不安を隠せない様子で絵音を見かけたことを口にした。セレアナは疲れたようにそれに答えた。

「さぁ、事情を簡単に教えてよ」
 ノーンのこの言葉で事情の確認が始まった。
手に持っているお菓子のことも忘れて。

 何をするにも絵音が帰って来なければ出来ないので新たに加わった二人はここに待機することにした。