イルミンスール魔法学校

リアクション

■何でもありスキージャンプ、開幕
　――晴れ渡る空から覗く太陽が、会場の雪を輝かせています。まるで今日の競技開催を祝っているかのように見えなくもありません。
　……本日はここ、冬季ろくりんピックのために用意されたスキージャンプ競技用特設会場より、総合実況のわたくし、カタリがお送りいたします。
　また、今回は総合解説として、茅ヶ崎　清音（ちがさき・きよね）さんのパートナーで、ろくりんピックの公式マスコットでもあるろくりんくんのゆる族・キャンディス・ブルーバーグ（きゃんでぃす・ぶるーばーぐ）さんに来ていただきました。キャンディスさん、本日はよろしくお願いします。
「ハァイ、こちらこそよろしくネ〜」
　えー、今回ここで行われる競技は『スキージャンプ』。ただしイコンも参加可能であり、怪我さえなければ非常識も許される何でもありの無差別競技となっています。
「ルールはとても簡単で、ジャンプ台と呼ばれる急斜面から滑走して助走をツケ、踏切台からジャンプ。空中で技を決めてもらって、綺麗に着地するダケ！　ネ、簡単デショ？」
　ルール説明、ありがとうございます。キャンディスさんの言うとおり、根本的なルールは一般的なスキージャンプと何ら変わりありません。より高く飛び、より華麗で複雑な技を披露し、より綺麗な着地を決める。これが点数基準となっています。また、コスチュームも審査対象となります。
　さて、今回の競技は『イコン部門』と『生身部門』に分かれており、そこからさらに『個人戦』と『団体戦』に分かれて競うことになります。各部門に参加したそれぞれの陣営で得点を競い、総合得点が高いほうの勝利となります。
「どんな技が空中で繰り広げられるノカ、本当に楽しみネ」
　はい、楽しみです。さて、今回の競技の模様はテレビ局の全面協力のもと、パラミタのテレビが映る場所全土にて完全生中継。たとえ最高高度以上を飛んだとしても会場に設置された巨大メインスクリーンでばっちり捉え、どんな異常事態にも即座に対応してくれるスタッフの皆様を完備しております。
　そして、中には有志にて参加してくれたスタッフの方々もいますので、その方々の紹介をしたいと思います。

　まず、怪我はご法度の競技ではありますが、万が一にも怪我をした場合の救護スタッフとして酒杜　陽一（さかもり・よういち）さんとフリーレ・ヴァイスリート（ふりーれ・ばいすりーと）さんのお二人が救護テントにて常駐しております。
　――っと、ちょっとお待ちください。今、場内連絡が入りました。……えー、非常に申し訳ありません。西シャンバラの代王である高根沢　理子（たかねざわ・りこ）様は重要な会議の予定が入られた、とのことで会場には来られないようです。観客の中には理子様のお姿を生で見たいと思ってこられた方もいますでしょうが、本当に申し訳ありません。その分、選手の皆さんの熱い演技にご期待いただけますよう、お願いいたします。
　……それでは気を取り直しまして。もしイコンが壊れてしまったとしても、メカニックスタッフが救護テントで待機しております。運搬は最近、陽一さんと仲良くなったというレモンちゃんや、ハンニバルの戦象が担当いたします。
「彼、別の競技の時にブーイング受けちゃったノヨ。それを挽回できる働きを見せれるといいんダケド……」
　そうですね……怪我が起きないのが一番ではありますが、怪我がないとも限りません。備えあれば憂いなし、待機も立派な仕事です。
　さて、先ほどイコンの運搬について話しましたが、あちらが壊れたイコンなどの運搬する救急車だとすれば、こちらは競技への見送り人、といったところでしょうか。イコン部門のスタッフとしてアキラ・セイルーン（あきら・せいるーん）さんが待機してくれています。アキラさんはジャイアントピヨ、通称ピヨと一緒に――あっと、失礼しました。よく見たらアキラさんの懐にアリス・ドロワーズ（ありす・どろわーず）さんがぬくぬくと待機していましたね、申し訳ありません。
　……ともかく、アキラさんたちは飛べないイコンを競技開始地点まで運んだり、雪にはまって動けなくなったイコンの救助をしたり、着地地点の整地をしたりと大忙しになると思われます。ほどほどに休憩を入れたりして、頑張っていただきたいと思います。
「失礼します。寒くなってくる、とのことなのでこれを飲んで頑張ってください」
　――あ、これはありがとうございます。今こちらにてわたくしたちにコーヒーを淹れてくれたのはアキラさんのパートナーの一人であるセレスティア・レイン（せれすてぃあ・れいん）さんですね。彼女はアキラさんたちや選手の方々のお世話係や救護係を担当してくれます。では、失礼してコーヒーを一口……。――うん、美味い！
　また、上空ではルシェイメア・フローズン（るしぇいめあ・ふろーずん）さんが上空や会場周辺で異常がないかどうかのチェックをおこなってくれています。もし雪崩が起きそうなど、会場に危険が迫っている時はルシェイメアさん経由で場内連絡が入ってきますので、その時はスタッフの指示に従って避難をお願いします。

「――カタリ、そろそろこっちにも一度カメラを向けさせてくれ。こっちのボンバーな熱気を観客たちに伝えたいんでね」
　……おっとそうでした。今回、こちらの実況席とは別に選手の競技直前の様子を伝えてくれる心強い有志スタッフがいました。それでは呼んでみましょう、ヴィゼント・ショートホーン（びぜんと・しょーとほーん）さーん！
「こちら、選手インタビュー実況担当のヴィゼントだ。今回、自分は競技開始地点で演技に挑む選手たちの直前インタビューをして、観客のみんなを盛り上げていくぜ。さすがに演技のネタばらしは難しいが、ヒントや選手たちの気合の入れようを伝えることはできるはずだ。さぁ、もうすぐ競技が始まる。寒さで縮こまってる暇なんかないぜ！　とっととてめぇらの心の導火線に火をつけて盛り上がっていこうぜ、ボンバー！！」
　ヴィゼントさん、よろしくお願いします。気合の入った言葉で、会場も一層盛り上がってきているようです。
「普段のヴィゼントは寡黙な感じなんダケド、今回は最初から地を見せてるワネ。それだけ気合が入ってる証拠、ミーたちも負けないようにシマショ！」
　ええ、そうですね。わたくしたちも負けてはられません。さて、ヴィゼントさんの契約者であるリカイン・フェルマータ（りかいん・ふぇるまーた）さんは実況で目の届かない範囲の迷子や落し物連絡などを担当してくれています。会場内の本部テントにて常駐しておりますので、落し物などを拾った方はそちらのほうへお願いします。
　また、着地地点付近で全裸待機している腕がやたら太いティラノサウルスですが、これもスタッフです。禁書写本　河馬吸虎（きんしょしゃほん・かうますうとら）さんの弟子……なんでしょうか？　そういった類らしいキャロリーヌですが、着地に失敗した選手のイコンや、着地したあと勢いがつきすぎてフェンスにぶつかりそうな選手のイコンをがっちりと優しく受け止める役目を持っていますので、変に雪玉を投げたりしないでください。あと、キャロリーヌの近くにある本が河馬吸虎さんですので、そちらにも雪玉を投げないようお願いします。

　――さぁ、そろそろ競技開始の時間となりました。これからのお時間、空中で繰り広げられる華麗なる美の饗宴をお楽しみいただけると幸いです。それでは、ＣＭのあとは『イコン部門・個人戦』をお送りします。